第20話 ルート 刃を探す
「
「そう? まあ、リョウさん退院してからジンくんに会ってないしね。ジンくんもリョウさんに会いたいと思うし。うん、わかった。捜してみよう」
「ありがとう」
やはり早めに
名前を入り口の兵に伝えると、端末にメモされる。
今更だが、本当にあの端末は便利そうだ。
「そういえば、あの端末って普通に買えるの?」
「ああ、コネクタ? うん。文字を覚えていない人でも、結構持ってる人多いよ。便利だからね。リョウさんもお金貯まったら買うといいんじゃない?」
「お、おいくらくらい……?」
ごくり。
怯えながら聞いてみると「ピンキリだよ〜」と言われる。
高いものだと十万ラームを超え、子ども用や文字が読めない人向けだと五千ラームあたりからが相場だという。
ノインが使っているのは頑丈さとセキュリティ重視の端末で、お値段約五万ラーム。
「ちなみに、リョウさん以外の召喚者の人たちは町から支給されたんだよね」
「えっ、そうなの?」
「うん。二属性の適性がある召喚魔法師を、他の町に取られたくなかったんだと思う。だから貴族街の寮に無料で入れるし、衣食住も保証してるんだろうね」
「そうなんだ」
つまり、
町長がケチらしく、一部は貸付という形になっているらしいが、
「今からでも抗議してみれば、リョウさんもジンくんたちみたいな安定した暮らしができるかもよ?」
「え? なんで? 私、今普通に安定した暮らしをできてるよ?」
本当に不思議でそう聞き返すと、びっくりした顔をされる。
なぜ?
「……リョウさんって面白いね」
「え?」
「いや、ううん。それより、ジンくんを捜すんだよね。どうしよう。ジンくんの取り巻きの女の子も一人森にいるみたいだし、闇雲に捜すとそっちと遭遇しちゃうかも。ジンくんの実力なら三層あたりまでなら余裕だろうし、地下に行ってみる?」
「地下があるの?」
「うん。『甘露の森』は大きく四つのエリアに分かれているんだけど、そのうちの一つが地下。地下は今のところ十二層まで確認されてる」
「そんなに!?」
地上エリアは三つあり、それぞれ“樹木エリア”と“草花エリア”と“地中エリア”。
それぞれに幾つかの洞窟もあり、
「洞窟の中は基本的に収穫できそうなものがないし、魔獣がいたとしても地下エリアの方が大きくて強いから旨みがまったくないんだよね。だから人が寄りつかないんだ」
「な、なるほど」
確かに稼ぎに来ているのに獲物もないところで探索などしないだろう。
それをするのは研究者ぐらいなもの。
「うーん、そう言われても私は
「地下かなぁ。ジンくん、ケンドーっていう剣術を長くやってたから、召喚魔法がまだ使えなくてもそれなりに戦えるんだよね。だから他の召喚者たちよりは深く潜れるんだ。地下三階以降に行けるのはジンくんだけだよ」
「じゃあ、地下……行ってもいいかな?」
「いいけど、地下だと果物は獲れないよ? それでもいい?」
「う、うん。
「わかった。それじゃあ行ってみよう。地下への入り口はこっちだよ」
時折果物狩りに来た新人冒険者とすれ違いながら、ダンジョン地下への入り口へ向かう。
甘い果実の匂いが漂う森の中を進むと、ぽっかり大きな穴が見えてきた。
穴の入り口には階段があり、数名の冒険者が下りていくところが見える。
「地下は本当に広いんだ。迷わないように気をつけてね」
「うん。よろしくお願いします」
いよいよ地下へと降りていく。
一階は空がまだ見えて、明るい草原のような場所になっていた。
冒険者が各々パーティを組んで、野ウサギのような魔獣を狩っている。
野ウサギのような、と言っても一メートル以上ありそうな大きなウサギ型の魔獣だ。
ノイン曰く、毛皮がいい値段で買い取ってもらえるだけでなく、肉が美味くてシチューにピッタリなんだとか。
「キシャァァアアァッ」
「ひっ!」
右側からすごい勢いで一メートルほどのウサギが襲ってくる。
おあげが飛び出そうとした、瞬間――。
「!」
ノインが前方から消えて真横に現れる。
次の瞬間ウサギの首は胴から切り落とされて左右に飛ぶ。
なにが起こったのか、さっぱりわからない。
「よいしょ。うーん、一階にはいないみたいだね。二階に下りようか」
「え? あ、う、うん?」
ノインがウサギを斬ったらしい。
しかし、いつ斬ったのかは見えなかった。
ノインの収納宝具にウサギをしまい、二階に下りる。
その後、五階まで降りたが
「……果物取ってきてって頼んだつもりだったんだけど……なんで魔物肉なんだい? いや、まあ、魔物肉も助かるけど」
「すみません……」
収穫物はお肉オンリーになりました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます