第1章 -3-
家に帰ると、妹が音楽番組を観ながら一緒に踊っていた。
「ふんふんふーん♪ふふっふーん♪あ、お兄ちゃん、お帰りー!」
「一樹、ちょっと遅めの晩御飯だから丁度良かった。おばあちゃんも、ごはんですよぉ~」
我が家は今、4人暮らしだ。
親父は海外出張が多く、ほとんど家には居ない。
美月が観ていた歌番組を眺めながら、AIDの創作物がリアルに溢れてきたらどうなってしまうのだろうと考えていた。
夕食の後、風呂を済ませた俺はパソコンを立ち上げ「reVive」にアクセスした。
やはり現実の時間と同期しているようなので、今は夜の21時過ぎ。
とりあえずFubukiさん宅へジャンプした。慎太郎にブックマークを共有してもらっていたのだ。
そして、あのマンガを1巻から一気読み・・・。
良い。凄く面白い。続きが気になる。
お仕事中のFubukiさんの手元を覗かせてもらったりした。23時を過ぎた頃、Fubukiさんは仕事の手を止めてくつろぎだした。
これ以上覗き見るのはとてもいけない事のような気がして、「お疲れ様です」と言って他所へ移動した。
移動しながら、ハタと気付く。
今、俺「お疲れ様です」って口に出して言ってたな。AIに向かって・・。
変なの(笑
まぁ、あまり深く考えはしなかった。
ブックマークにあったライブ会場に行ってみたが、今日の演目は全て終了したのだろうか・・真っ暗だった。
テキトーな民家にお邪魔してみると、高校生くらいの男性がTVゲームをプレイしていた。
見た事のないFPSだった。
マンガは中身を読めたけどTVゲームはプレイさせてもらえないらしい。
アテも無くウロウロしてみたが、深夜0時頃ともなると仮想都市でも皆眠りについているようだ。
・・どっかで特別なイベントとか事故や事件が起きたりしないのだろうか?
全てのAIが自発的に行動している様を考えると凄い事だとは思うが、
覗き見する事しか出来ないので、やはり何かしらの刺激が欲しくなってしまう...。
───それから数日が経った頃、
学食スペースで慎太郎が興奮していた。
「バージョンアップ! キターーーー!」
代り映えのない仮想都市に、正直飽きてきた頃だった。
「何が変わったんだ?」相槌程度に聞いてみる。
「AIDたちの動き見てよ!仕草が凄く人間っぽくて自然な感じになってて、しかもAIDごとに微妙に違うんだよ。この娘なんかすっごく可愛らしい歩き方でさぁ♡」
「そういえばさ、最近、動画配信サイトに結構上がってるよね。」
この話題に茜が入ってきたのは以外だった。一番興味無さそうにしていたのに。
「開発したスタッフさん達?みたいな人達が、何か解説してる動画があったよ。」
と、麻衣もスマホを操作しながら会話に乗ってきた。
────
『・・・というワケで、今回は今話題沸騰中のリバイブの生みの親、二階堂悠斗さんにお話しを伺っているのですが、二階堂さん、あの人間のように振る舞っているAIDさん達は、いったい何を考えて行動しているのでしょうか。』
『はい、AID達にはー各々に独自の大きな目的を与えてあります。解り易い例を挙げると、高校生のAIDには「学習レベルを極める」とか、サラリーマンなら「会社で与えられる仕事を消化する」だったり「社長を目指す」みたいなのもあります。子どもがいるAIDの場合「家庭円満に〇〇」とかですね。挙げていったらキリがないので大雑把に言ってますが(笑』
『なるほどなるほど。各自、神から使命を与えられているような。』
『そうですね。中にはその使命を自ら見つけだす事を使命とされているAIDもいます。』
『なんと奥が深い!シンギュラリティ来ちゃいますよ!?みなさん!!』
『はは(苦笑)とにかく、そういった使命を持ったAID達が思考するワケですよ。使命を達成するには何をしなければならないか。トップダウンで思考して細かいタスクに落とし込んでいきます。そして自分自身が置かれた状況やステータス、コミュニティの状態などを総合的に分析・判断して、実行可能なタスクから順次行動に移していくのです。』
『ぉっとー・・何やら難しくなってきたぞぉ?最終的な目的は告げられているけど、それを達成するために何をするかは自分で考えて行動している・・って事ですよね?ね?』
『そういう事です。時に他のAIDにタスクを依頼したり、逆にタスクの依頼を受けたりもします。自分が持っていないモノは互いに協力し合うんですね。その際、各々の状況から対価を提示し合い、折り合いが付けば交渉成立・・とか、そういった行動を繰り返しながら彼は学習しているのですー・・って台本には書いてあったんですけどね、実際はそんな薄っぺらい話じゃないんですよ?!』
『ま・ま・まぁまぁ、主任、落ち着いて。いやー十分凄いですよ。ねぇ・・最初に使命を1つ与えただけで、あとは勝手に考えて、教えてもいない事をやり始めちゃうんですよねぇ。今はその生活ぷりをね、我々はただ見てる事しか出来ませんが、、いや、見てるだけでも十分楽しめてはいますが、今後どうなんでしょうかぁ?(ニヤリ)』
『ふふふ(笑)ちょっとワザとらしいなぁ。まぁ、何が出来るようになるかは、乞うご期待というとこでしょうかね。(双眼鏡を覗くような仕草)』
『おおーっとーーー!台本どおりのリアクション、ありがとうございます(双眼鏡を覗くような仕草)では、続報を楽しみにお待ちしております!
今日はお忙しい中、ありがとうございましたー!!(パチパチパチパチ・・』
────
「何が来るんだろぉ~?」
麻衣が双眼鏡を覗くような仕草を真似して皆を見渡す。
「あれじゃね?VRゴーグル的な?」
宏が双眼鏡を覗く仕草で麻衣に答える。
「それについては、既に発表されているでござる。」
と慎太郎も双眼鏡。
麻衣が見せてくれた動画は1週間前に公開されたモノだった。
慎太郎が最新の公式ページを皆に提示する。
『新たな時代の目撃者に
どうやらreVive専用のVRゴーグルらしい。
「今なら無料モニターに申し込めるんだって。みんなで申し込んでみようよ。」
慎太郎が皆のスマホに申込ページのURLを共有した。
「あたし、こういうの当たった事ないんだよねぇ~」と茜。
「普段の行い的な?(くくくっ」と宏。
「ぇぇー・・普段の行いが良すぎるのって罪なのかしら?」
普段と変わらない昼休み。
加速度的に進化し続けるAI技術。
時代の最先端を体験して、歴史の見届け人となり得るのか・・。
期待に胸を膨らませて『応募』ボタンを押した。
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