第5話 2ー1
朝日が差し込む校門前。
「はぁはぁはぁ……」
「凄いよクロエ!僕がはじめて40kmを完走するのに10日はかかったのに1週間で走り切れるようになるなんて!」
「ははは、ま、負けないわよ」
クロエとの決闘から1週間、あの日決闘後のランニングからお互いに張り合うようになり今では当たり前のように一緒にトレーニングを行なっている。
そしてこの1週間で分かったことは彼女はとてつもなく負けず嫌いでとんでもなく素直なこと。
「はい、水とタオル」
「あ、用意するの忘れてた。ありがとう」
クロエは肩で息をしながらコップを受け取り喉を潤す。
「はぁぁ美味しい」
笑顔を浮かべほっと息を吐く。
「あ、今日は休憩時間3分ね。この後食堂の手伝いがあるからいつもより早く素振り終わらせるよ」
僕は持ってきた木刀二本のうち一本をクロエに差し出す。
「え……」
いつも休憩時間は10分。
それが突然短縮された事に固まるクロエ。
その顔は掃除中に衣装タンスに足の小指をぶつけた瞬間、「この後激痛が来るのか。やだなぁ」と憂鬱な時の感じ。
「冗談だよ。いつものように10分休んで良いから」
「はぁ……良かった」
表情が晴れるクロエ。
ね?すごく素直でしょ?
「あ、でも今日は3000回から5000回に素振りの量を増やすよ」
「え……」
安心顔から一転。
再び絶望した顔になるクロエ。
ね?ものすごく素直でしょ?
◇◇◇◇◇
「あぐ!あぐ!あぐ!」
私の名前はクロエ。
ただいま食堂にて……
「スーパーデラックスハイパー超絶技巧食パン!略して超大盛りパン!総重量は5kg!今日こそはこれで満足してくれ!爆食王女様!」
コックのおばさまが出してくれる大盛り料理を食しています。
起床後ランニング40km、素振り5000回をこなしとんでもなくお腹が空いています。
「おかわり!」
小さな丸テーブルくらいはありそうなお皿をおばさまに渡す。
「は、ははは、はぁ……日に日に食べる量が増えていくよ。一体あの細い体のどこに栄養が……
胸か」
厨房に入っていくおばさま
「次の料理は何が出てくるかな」
◇◇◇◇◇
E組は基本的に自習なのでホームルーム後はお昼までひたすら素振りを二万回とランニング40kmを行います。
その後なぜかげっそり顔のおばさまの料理を食して、お昼寝。
午後からは校舎裏で模擬戦闘。
神器は剣帝大会や魔物などが進行してきた緊急時、先生方からの許可がないと使用できない為、木刀で。
「いいよ!体幹がぶれなくなってきて太刀筋が鋭くなってきた!」
「って言ってくれるけど、簡単に受け流されるから実感湧かない」
「いや嘘じゃないよ。簡単に受け流しているように見えて結構本気だからね」
白い歯を輝かせるライリー。
その足元は大量の汗で水溜りができている。
模擬戦闘を一回行うごとに滝のように流れて水溜りを作る汗の量……何かの病気じゃないのか?
心配なので水の入ったコップを渡す。
「あ、ごめん。ありがとう」
コップを受け取り、「ゴク!プハァ!」と明らかにおかしい速度で飲み干すライリー。
私が飲むのに10口は要する量の水を一口……そして飲んだ瞬間から流れ出る汗。本当にどうなっているの?その体は。
「はぁ、涼しい」
私は木陰に移動し水を飲む。
4月中旬とは思えない日差しと模擬戦闘によって火照った体に水が染み渡る。
「生き返る」
そのまま木に体を預けて地面に腰掛ける。
視界には夕日へ変わりゆく太陽に紅く染まった大空と雲が広がる。
そして春の午後特有の気を抜くと眠くなってしまうゆったりした時の流れ
「あ、休憩は10分だよ。トイレに行くなら今のうちに。大きい方なら時間がかかるから行くなら早めにね」
木陰の外で休憩だというのに素振りをする汗だくのライリーによってせっかく良い雰囲気に浸っていたのにすぐに現実へと引き戻された。
「……変態」
「1000!1001!1002!」
私は休みもせずトレーニングに励む体力おばけをにらむ。
「はぁ……よく寝た」
そんな時私が寄りかかる木が揺れ頭上から聞き覚えのある声がした。
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