第24話 必ず全部取り返すからなあああ!!
*
「ううっ、ううううぅう〜にゃんでぇえええ……にゃんでこんなことにぃぃい」
「うんうん、よしよし
泣き崩れた風香ちゃん(無職。借金5000万)を介抱しながら、私は夕暮れの町の帰路についていた。クルミは先に、肩で風をきってガニ股で帰っていった。(いやお前パンツ一丁なんだって言ってるだろう、堂々とするんじゃねぇよ)
「よう白狼、聞いたぜこの野郎! まぁとりあえずよろしくなー!」
「あぁ、はぁ……どうも」
「白狼! テメェにぶっ壊された俺んちはどうしてくれんだい!」
「あはぁ……すいません」
実に様々な反応があるけど、まぁとりあえずここで生存する事は容認されたらしい。(ガバガバ危機感)
「ううぁあああ〜仕事がないよう。給料がないよう。失業保険じゃ借金の利子にもならないよぉ〜」
「無職って点では、私も同じだけどね」
「じゃああんたはどうやって生きて来たのよぉお!」
「海外出張に行ってる両親がそれなりに稼いでるから、私はそれで……」
「カァああ!! 白狼って何、そんな感じなの? ボンボンは良いよなぁ親の
風香ちゃん……また目が死んだ魚みたいになってる。あっそれより、寄り掛かったおっぱいが腕にあたってる、嬉しい。
「じゃ、じゃあ風ちゃん。私ここだから」
「……」
灯った部屋の明かりから、自分の家のように当たり前に部屋に帰っているらしいクルミを確認すると、私は風香ちゃんにお別れを言って玄関の扉を開けた。
「ああ、
――バタン。
「あ……あれ?」
「うわぁああああ!! 行く宛がないんだよぉ、失業したとわかったら、家も家具も全部借金取りに差し押さえられる事になってるんだよぉおお」
「……」
「お前のせいなんだから責任を取れぇええ、私を養え白狼ぅううう」
私んちの玄関でモジモジしている風香ちゃん。
――マジかよ。この子私の家に寄生するつもりらしいぞ。
「なぁ良いだろう白狼〜! ダメって言ってもここに居るからな。お前の側に居れば、隙を見せたときに首を刈り取って懸賞金で人生に復帰できるし」
「それ本人を前にして言う事じゃなくない……?」
……とはいえ少し考えてみる。
舐め回すように、胸の所が破れてチラチラ見えるおっぱいを眺める。
――ツーと垂れてきた鼻血と同時に、私の親指は無意識にグッドポーズを作っていた。
「ほんとうかー!! やったー!!」
飛び跳ねて喜ぶ風香ちゃん。(おっぱいバインバイン)ああこうして笑っていると、本当に推しの
……最高じゃん。迷う事ないじゃん。
毎日お風呂覗こう。
「恩に着るぞ白狼!」
「うん、こちらこそ(ジュルリ)」
「……というか、ここはお前の家なのか? ずっと身を潜めて、各地を転々として来たんだろう? こんな生活感のある一軒家なんておかしいじゃないか」
「うん、それも含めてとりあえず、二階の私の部屋に行こう。私のこの体の事についても、話さなきゃいけない事があるし」
「体……?」
階段を上がり、我がオタクルームのゲートを押し開く。するとそこには、コントローラーを握ってTV画面にかじり付いたクルミが座っていた。
「私のゲーム勝手にやってんじゃ……じゃなくてッ!?」
「おう、人の家に押しかけて何の用だよ」
「ままま、待てッ!! なんだその破壊されたハードの山は! お前もしや、起動方法がわからねぇで無茶苦茶やって……キサマ、キサマァア!!」
私がクルミに襲い掛かろうとすると、風香ちゃんが手に持っていた剣を落として絶句していた。
「あ、あわ……わ、白狼、お前まさか……」
「……ん!? おいモヤシ女、何だこの……俺のマリルちゃんそっくりな女は!! 激マブイじゃねぇか!! そうか、あの偶像は実在する人物を映し出していたのか!」
「はくろ……おま、おまえ――」
凍り付いた顔でジリジリと私に振り返った風香ちゃんは、これ以上の無い
「少女誘拐――ッッ!!!」
「え……」
「少女趣味!!!」
「え、ちが――」
「小児愛者ッッ!!!!」
「小児では無い!! 私は16歳だ!」
「ド級の変態ッッ!!」
反論を受け付けそうもない様子で私を押し退け、クルミを抱き締めた風香ちゃん。
「――フゥオっ!!? こ、これはぁ……!!」
「怖かったねお嬢ちゃん、こんな変態に軟禁されていたなんて!」
「フ――っフゥオオオオオオオオオオッッ!!!!」
「あれ……アナタよく見たらさっきの?」
風香ちゃんの生乳に顔を埋め、一心不乱に奇声を上げながら、ブルンブルンと乳を両の頬ではたきまくるクルミ――もとい白狼!
(くぅうおアアア羨ましい!!! 私のおっぱいから離れろオッサン!!!)
「どういう事なんだ白狼? この子は知り合いなのか?」
「パァアオオオオッッ!!!! パァアアアアオッッパアアアアア――!!!!」
「風ちゃん聞いて!! 飛び上がるかも知れないけど、私と白狼は入れ替わ――」
――真実を打ち明けようとする私に、クルミが振り返って凄まじい殺気を放った事に気付く。
「は……ぁ…………」
「…………!!!」
――
冷酷極まる無言の圧に、私は黙らされるしか無かった。
「……他の奴らにもだ……」
だってこれ多分ガチの奴だもん……
「ウェヘッ……うぇっへへへへ、えけ!! エケケケケ!!!」
「ちょっと白狼、聞いているのか!?」
涎を垂らして乳に溺れるオッサン少女に……私は白目を剥いて卒倒するしか無かった。
――ああ、ちくしょう、ちくしょうちくしょうちくしょう!
私のオタクライフ!
引きこもりインキャ生活!
私のおっぱい!!
全部全部ゼンブ――――!!
「絶対に取り返してやるからなァア!!! “白狼”オオオォオオオ――!!!!!」
私の絶叫で、また町中の窓ガラスが全部割れた……
第1章 ――完
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