第18話 これは……触手っ!!(ニチャァ)

「見なければ、風ちゃんの触手陵辱りょうじょくシーンを……これは神より言い渡された使命……宣託せんたくである」


 するとタイミング良く、風香ちゃんがそこらの触手を切り払いながら私に駆け寄ってきた。


「どうした白狼、そんな迫真の表情をして!」

「え……あ、いやぁ」

「罪人の手を借りるなど聖魔教会として言語道断だが、このままでは町が壊滅する。お前なら何とか出来るのか!」

「は……?」


 だいぶ熱い眼差しで風香ちゃんを凝視している事がバレた。

 ていうかどうにかするって? 私が? いやこんな巨大生物どうしろっていうの!

 それに私は今、この触手の猛攻を待っている所なんだ。ほらほら早く、風香ちゃんに絡みついてネチョネチョになってグチュグチュに……くふふふ。こんなサービスシーンを見ずにいられようか!


「おい、どうなんだ白狼! 一時的にその手枷を外してやってもいい、お前なら出来るんだろう! 町を救ってくれ!」


 風香ちゃんの必死の訴えは、信徒や町人にまで聞こえていたらしく。やがて伝言ゲームのように根も歯もない解釈が彼等に伝播でんぱしていく――


「おい、白狼ならこの『町喰い』も一撃でぶっ飛ばせるらしいぞ!」

「赤子の手をひねる位のもんらしい。マジかよ魔王四天王だぞヤベェな! 早く助けてくれ!」

「聖魔教会本部を破壊した罪への粛清しゅくせいは後にしておいてやる、だからこいつを早くぶっ殺せ!」

「いやいや、私出来るなんて言ってないよ〜」


 あぁもう、なんか期待の眼差しが痛いよ。さっきみんな、よってたかって私の事引っ捕らえようとしてたじゃない、虫がいいよ! ていうか出来っこないし、こんなデカブツどうすればいいかわかんないもん!

 風香ちゃんが私の手を取って手枷をいじり始める。なんか勝手に私に戦わせようとしてない、ねぇ?


「おい白狼、頼むからなんとかしてくれないか。今手枷を外すから……」

「ふーんだ! いくら風ちゃんの頼みでも私知らないもん!」

「なんだよ白狼、ヘソ曲げるな」

「だってさっき、私に意地悪言ったじゃない。風ちゃんなんてもう知らない、私悲しかったんだからね!」


 そうこう言ってる間に、私の前に座り込んだ風香ちゃんの背後に、無数の触手が近寄って来ていた。


「なぁ頼むから白狼。聖魔教会も町も潰れちゃったら、私もう無職なんだ。ただでさえ借金まみれなのに無職になるんだぞ? 行くあてもないし、そんな事になったらもう、野垂れ死ぬしかないんだよ」

「……ふふ…………クックック」


 数十本もの触手が差し迫っている事を黙し、今か今かとその時を待っていた私の願いが、遂に成就を間近にした。

 すると私は絶好のタイミングで、極悪ヅラで舌舐めずりをしながら、風花ちゃんに言い放ってやった――


「さぁ、やってくださいまし触手様!」

「な――白狼、私を裏切ったのか!?」


 ――次の瞬間だった。

 うねりながら迫る数十本の触手様が――


「ウビィイイイイイッッ!!!? なんでぇエエエ!!!」


 ――全て私に絡み付いて、手枷がついたまま空へと吊り上げられていった……(誰得……?)

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