第3話 七代目剣神

 ほんのり薄い邪悪が支配する領域、冥界。

 その中心にある牢獄『カルト』には、現在革命によって追い出された神々が投獄されている。


 カルトの最深部、七代目剣神はそこに投獄されていた。


「おい、新聞はねーのか?」


 思わず跪いてしまう程の威圧感を持って、その言葉は牢獄に響き渡る。

 しかし、看守は怯まない。

 何故なら、剣神には頑丈な手錠と力を封じる首輪が付けられているから。


「持ってきてくれねぇのか?」

「……」

「そうか、なら

「ァ゛ッ!?」

 

 気づけば看守の胸には剣が刺さっていた。


「早えじゃねぇか、運命神ノルン

「信じられる? この剣、カルトと対極の位置にあるダンジョンのボスが持ってたんだよ?」

「その程度お前なら余裕で取ってこれるだろ。それより、なんでこんな早く来れた?」

「デア……いや、ルシファー君がライラックを殺してくれたお陰で、神側のが歪んだの! そのおかげ!」

「なるほどな」


 ノルンは剣神の首輪と手錠を手際良く外していく。


「私の事全く警戒せず普通に投獄したでしょ〜、ダメだよ?」


 そうして看守に刺さった剣を抜き、それを剣神に手渡す。


「私はある事象に対して、何かしらの条件を満たすと改変・支配することが出来るの。まあ、脱獄程度はそんなことしなくても余裕だったけど」


 看守は手に持つ緑色の宝石を砕く。

 粉々になった欠片が光り、看守の体を癒す……が、それは中断される。


「条件の中でもいくつか単純な物があってね、例えば生物の死、この運命を決めるのに必要な条件は。そして今、君の運命は私が定めた。どう足掻いても君は死ぬよ」

「貴様らの脱獄を報告した! 三秒後この場は虐殺場となる……ッ!!」

「……いやー、この運命を操作するのはめんどくさいなー! てことで、やっちゃえバーサーカー!」

「言われなくてもやる」


 剣神は、特別な技は一つも使わない。

 ただ、鞘から剣を抜くだけ。

 それだけで、カルトが崩壊する。


「これが怖くて最深部に閉じ込めたんだろ? いやまあ本当に、


 カルトから様々な光が散っていく。

 アレらは全て神、ゼウス政権に属していた第七世代の神。

 向かう先は革命を成功させた第八世代の神達の神殿。


「時間稼ぎ頑張ってね〜!」

「そうだな、またまたしてる暇はねぇ。行くぞ、を支配しに」

「条件は、後三つ」


 ノルンは、風で運ばれてきた手配書を人差し指と中指で挟んで寄せる。


「ルシファー君、君にはその内二つを任せる

よ」

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