第2話 スキル検証
ギルドはダンジョン攻略をよりスムーズにする為、冒険者を補助する様々な物品を提供している。
その一つが仮想空間だ。
仮想空間は冒険者のステータスを自動で読み込み、それを参考としたアバターを作成し自分はそれを操作することができる、言わば訓練場である。
ギルドの訓練室に設置されたカプセル状の装置に入ることで開始できる。
VRゲームでも活用できそうな技術だが、この技術は何故かギルドが独占している為開発の目処は立っていない。
ちなみにゲームではないので掛け声で起動みたいな演出は無い。しばらく目を閉じてれば勝手に始まる。
そう、なんの滞りもなく……
『想定外のエラーが発生しました。申し訳ありませんが[ダメージ吸収]は使用できません』
一瞬顔が引き攣ったがよく考えれば検証の必要がないスキルだ、なんの問題もない。
こんな事でクレームを言ってる暇があれば訓練した方が良い。等と考えていると視界が開けてくる。
仮想空間に入れた証拠だ。
「初めて入ったけど随分と感覚がリアルなんだな……よし、早速使ってみるか。[転換〈蒼〉]」
すると、自身の力が何倍にも跳ね上がる様な感覚がする。
これはステータスを吸収した時と同じ……、効果は本当らしい。
「[鑑定]」
試しに自分を鑑定してみると、本当にステータスが100倍になっており、さらにはスキルとして[中止][削除][天撃]が追加されていた。
「天撃はいいとして……、中止と削除はどうやって試せばいいんだ? ……自分に打って見るとか?」
なんとも言えないもやもやを抱えながら、実験に対する緊張感からか少し姿勢がしっかりとした感じになる。
「よし……[毒霧][中止]」
すると自身の周りを囲っていた紫色の霧は一瞬で消える。
それと同時に1秒程金縛りにあったような感覚に襲われた。
「[毒霧][思考加速][削除]」
今回もスキルの効果が消えるのは一緒だが、金縛りの時間が体感で1秒程増えた気がする。
単純計算一つのスキルにつき1秒掛かる事になる。
「破格の性能でもあるが、接戦時の1秒は洒落にならないな……、いや[ダメージ吸収]を前提とした使い方なら良いのかもしれない。例えば洗脳やら精神的なダメージを与えてくるスキルのみを消したりとか……、だとしたらとんでもないぶっ壊れスキルだな」
次に削除を試して見る。
「[削除]」
瞬間、何かが切れるような感覚がして目覚める。
「!! 今、意識を失ってたのか? ……もう一回[削除]」
…………やはり実感が湧かない。
10秒も溜まってるようには思えないのだ、1秒すら立っていない、瞬間的なものの様な……。
今度はタイマーをつけて使用する。
「[削除]」
目覚めると同時にタイマーを止める。
タイマーは11秒を指しており、開始を押して意識を失うまでの2秒を引き9秒意識を失っていたことがわかった。
「俺の今の精神力は[転換〈蒼〉]の効果で100、10レベル毎に1秒間短くなってくとしたら100レベルの相手にはほぼ効かないってことか……」
その後[天撃]を使って見るが予想通りでしかない結果だった。
「[中止]と[削除]、かなり強いな、この[転換〈蒼〉]も今の所はステータスダウンだけ……」
次の瞬間、[転換〈蒼〉]の効果が切れ抵抗不能の疲れ、だるさに膝をつく。
「おい嘘だろ、ステータス消費は目を瞑るとして……使用後に動けなくなるなんて致命的すぎるだろ!?」
発動してから体感5分程しか経っていない事実にもう一度驚愕しながら、言うことを聞かない体に落胆する。
「肉体がなくなっても死なないと言ってもボスの前で寝そべるなんて自殺行為だよな……いや死なないんけどさ」
リスクはあるようで無いものだがやはり迷う。
そう悩む原因はあの天使だ。
あの天使は、ダメージ吸収を[中止]で一瞬だが止めて見せた。
妨害すらも吸収すると言う破格の性能であるダメージ吸収を止めたのだ。
あの天使みたいな輩3人集めて反動を気にせず[中止]を絶え間なく撃ち攻撃を仕掛けてくるみたいな状況があれば流石に死んでしまうかもしれない。
「……あんまり記憶無いけどなんとなく圧倒してた気がするし[転換〈蒼〉]を使えば勝てるんじゃ……いや、あの時は堕龍のステータスありきだったし……」
悩みに悩んだ末、俺の結論はこうなった。
現在天使に対抗できる唯一の手段である[転換〈蒼〉]をどうにか強化できる手段を探す。
『???』ランクに指定された最強のスキルを突破してくる化け物に対しての対策は同じく化け物の様なスキル、その為には現在のステータスがまだ高い状態でなければいけない、欠点の多い〈蒼〉ではダメだ。
色が変わるのかスキル名が変わるのか分からないが、とにかく強化する事に決めた。
そうして試すべき事が終わった亮はログアウトすべく『ログアウト』と唱える。
入る時と違って声を出さないと行けないのは、入る時のように目を閉じてと言う条件だと[削除]で意識が落ちた時に戻ってきてしまう等の意図しないログアウトが発生してしまう為、明確な意思表示を必要としているからだ。
暗い空間が続き、しばらくすると光が差し込んでくる。仮想空間を出たようだ。
「準備運動は終わったか! そしたら早速任務に行くぞ!」
カプセルから出ると、このカプセルの予約をとってくれた隊長が立っていた。
「はい、行きましょう」
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