スキル【ダメージ吸収】が思ったより吸収出来た件〜ハズレかと思ったドMスキルは神をも喰らう最強スキルでした〜
キムチ鍋太郎
プロローグ
第1話 ドMスキル
——世界一の冒険者になろうと、本気で目指していた。
だが、八年前。あの日その夢は途切れた。
俺は多賀谷亮、二十八歳のコンビニ店員だ。
髪はボサボサ。艶のあった黒髪も台無し。半開きの黒目は虚。
十年前ダンジョンの出現と共に、三つの物が現れた。
一つはモンスターと呼ばれる者達。
モンスターを倒すと稀に落ちる『エクリア』、新たなエネルギー源としてこの十年間需要が尽きずにいる。
需要が高ければ値段も高い。当然高値で売れる為、実質無限と言う理屈から冒険者達はモンスター達が出すエクリアを狙い日々ダンジョンに潜る。
二つ目はステータス。
ダンジョンに足を踏み入れる、もしくはエクリアに触れることで発現するステータス。
モンスターを倒したり、特殊な条件を満たしたりすると成長する。
学者達は、ステータスを永久的に付与されているバフと定義している。
モンスター達はステータスを介した攻撃以外は無効化してしまう為、冒険者達は日々ステータスアップに励む。
そして最後に、『スキル』
炎を出したり、自身のステータスを増長したり出来る魔法の様な物で、各個人に与えられる『固有スキル』と成長の過程で与えられる『冒険者スキル』が存在する。
そのスキルには等級が存在していて、下から挙げると、『ノーマル』『レア』『ユニーク』『国宝級』『神話級』『???』の六段階。
『???』は突如発現した一般人の少年により判明した、存在だけが分かっていて名称も強さも不明の謎の等級となっている。
さて、俺が何故この『???』について説明したのかと言うと、俺のスキルがこの『???』等級だからである。
神話級よりも上の『???』なのに、何故ダンジョンに潜らずコンビニ店員等しているのか?
それは、爪を隠した最強冒険者……なんて事はなく、俺のスキルがただのドMスキルだからだ。
[ダメージ吸収]
敵から攻撃を受けた時、ダメージの10%を吸収する。
ー任意発動(急襲時自動発動)
ー回数制限、クールタイムは存在しない。
ー
ー吸収はダメージを受けたその後に行われる。
ーこのスキルは妨害を受けない、受けた場合は吸収効果が発動される。
このスキルをとても簡単に言うならば、決して死なず、永遠に攻撃を受け続けられるスキルだ。
一見チートかのようにも思えるが、ダンジョン内では火力が全て。
トップ冒険者の炎帝も、防御なんてしてる暇があったら攻撃をすべきだと言っている。
しかしそれが分かっていなかったダンジョン発生の初期の初期、俺のスキルが判明した十八歳の頃には最強だと持て囃され、『???』とランク付けられてしまった。
二年程経って今の火力理論が形成され、最強が間違いである事が分かった俺を、両親は怒りと共に縁を切ってきた。
ギルドは、理由を明かさないまま俺にダンジョンの侵入禁止命令を下した。
俺と契約してた企業はその一連の騒動により企業イメージが大幅に下がり、俺はその慰謝料を払わされた。
その額はあまりにも大きく、余ったのはたったの千二百五十円。
俺は冒険者の間では皮肉にもペテン、詐欺師と呼ばれているそうだ。自らが持った能力に翻弄されただけで。
俺を商品としか見てない企業、勝手に持て囃し勝手に捨てるギルド、野次ばかり飛ばしこっちの事情もお構いなしの冒険者達……。
冒険者なんて、大嫌いだ。
それから間も無く自動ドアが開き、客が入ってくる。
黒いパーカーに白マスク、サングラスまで掛けて如何にも怪しい奴だが、コンビニ歴8年の俺は、蔓延の笑みで歓迎した。
「いらっしゃいませー」
不幸話をした後にも変わらぬこの接客、我ながら素晴らしい。
お客様は買いたい商品を瞬時に選んだようだ。
ほら、こんなにも急足でレジに近づいて、素早く銃を飛び出して……
「銃っ?!」
「金を出せ!!」
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