第39話 エンディング

 ジーツーの背中に乗った直後に友くんからの怒濤の質問攻めにあい、全て正直に答えた。

 外交は友くんの領分なのだから今後のことは任せましょう。

 それに声を荒げたデルティを責めるつもりも、責めさせるつもりもない。


「あなたは良い行いをした。気に病む必要はないし、きっと色よい返事がくるでしょう。そうなったら退位しようね、友くん」


 友くんとデルティのため息を背後で聞きながら、みんなの待つ王国へと戻った。


 数日後、予想通りの返事をもらい、晴れて三男坊の嫁探しも終わった。

 これからは今まで以上に夫婦の時間を大切にできるというものだ。


「デルティ、自信を持ちなさい。あなたならあの子を幸せにできるわ」


「でも、俺は闇魔法しか使えないんだぞ。暗黒魔術師バエルバットゥーザと同じだ」


「同じなものですか。バエルバットゥーザはただのザコだったわ。英雄であるお父様の方がよっぽど強いんだから。そんな父を持つあなたの闇魔法は超一流よ。魔力コントロールは私以上で、すぴろんも認めているでしょ」


 デルティが魔物の管理をするようになった理由はマギアインディゴを継承したからだけではない。

 この子は自身の力を恐れている。

 万が一、魔力が暴走したときに被害を最小限に抑えられるようにと、意図的に人里から離れているのだ。


 この子をお腹に宿したときから残ったマギアインディゴだけを継承することは分かっていた。

 だから、物心をつく前から徹底的に魔力コントロールの練習をさせたし、その後も磨き上げるように命令した。

 マオさんもすぴろんも手伝ってくれたおかげで、魔力コントロール選手権があればダントツで優勝だ。


「婚約破棄されたからといって不幸になるわけじゃない。それは私が証明してみせた。そうでしょ?」


「それは父上が婚約破棄して、婚約し直したんだろ。一人相撲だ」


 やめて! 

 これ以上、友くんの傷口を抉るようなことは言わないで!


「とにかく、今日の婚約式はしっかりやりなさい。母はいつだって、あなたを応援しています」


 デルティも父親に似て、決めるときは決める男だ。

 式の途中で固まったときは焦ったけれど、見事に式を終えられてよかった。


 いやー、私も親バカになったものだな。


 数ヶ月後。

 友くんと私は退位して、長男であるファイとその妻に位を譲った。


「んじゃ、あとはお願いね」


「これからスローライフってやつに出発ですよね?」


 さすが長男ちゃん。私たちとの付き合いが一番長いだけあってよく分かっている。


「あまり危ないことはオススメしません。ムギ姉様と相談して、かなり安全な国や町や村をピックアップしておきました。ここのリスト以外には行かないでください」


 さすが次男ちゃん。誰かさんとそっくりで心配性だ。


「俺の結婚式はどうすんだよ。……両親不在は寂しいぞ」


 さすが末っ子ちゃん。甘え上手。

 可愛い息子の晴れ舞台を見逃すような親なわけないじゃん。


 何はともあれ引き継ぎは全部終わった。

 自国のまつりごとは長男のファイ、交易関連は次男のカイ、魔物関連は三男のデルティと、我ながら上手く役割分担できたものである。

 これでグッドナイト王国は安泰だ。


 お互いに破滅の運命から逃れたい一心で始めた共同生活。

 しかし、色々なものから逃げ切れず、遂に未発売であるゲームのストーリーまでクリアした。

 それでも悪くない数十年だったと思えることは、隣に彼がいてくれたからだと胸を張って言える。

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