第176話 勝利

 アキラと神の戦いは最終局面を迎える。


 竜人化したアキラは、神の放つ魔法を剣で斬り裂き、拳で叩き落とす。

 全身が凶器となったアキラは神に反撃する。

 竜神化したアキラの身体能力は神をも圧倒した。

『くそ……!』


 ボロボロの神は両手に魔力を貯める。

 空間が歪むほどの魔力が神の手のひらに集まった。


『はぁはぁ……ここまで追い詰められたのは初めてじゃ……素晴らしい力だったぞ。お前の生まれ育った人間界を……滅ぼすのが楽しみになったわいッ!』


 神は魔法を放つ。最大の攻撃だ。

 ドス黒い炎の渦がアキラを襲う。

『死ねぇえ! アキラ!』


「はぁはぁ……これで終わりだ……!」

 アキラは両手で剣を強く握りしめる。

『竜神の剣 レア度★★★★★』


 ど素人のサラリーマンだったアキラがここまで来た。

 部屋に突然できたダンジョン。

 花子やまどかと出会い、今では異世界の神を圧倒する世界最強の冒険者になった。

 神を倒せばダンジョンアイテムは消滅し、アキラはただの無職になる。


『もったいないけど仕方ないか』

 アキラはそんな事を思いながら、黒い炎の渦に向かって走り出す。


「うおおおお!」

 襲いかかる炎に剣を突き刺す。

 分厚い炎の渦が2つに裂ける。

『なにぃぃ!?』


 アキラそのまま一直線に神を目がけ飛びかかる。


「終わりだぁぁあッ!」

『ザッ!』


 アキラは剣を振り下ろす。

 剣は神の胸に深く突き刺さる。


「はぁはぁ……勝った……!」

 アキラの竜人化がとける。


『……ぐ。無念だ……』

 神の体が砂に変わり始める。


『ふ……ワシが死ねば……この世界はすぐに崩壊する……扉を壊されたお前らは……逃げることはでき……ん……』


 神は消滅した。


 ◇


 神を倒しボロボロのアキラはその場に倒れ込む。


「アキラさーーん!」

「……ん?」

 遠くから自分を呼ぶ声。アキラは空を見上げると城から落ちてくる花子とまどかの姿。


「は、花子さんとまどかちゃん!?」

「あれ? 風魔法が上手く使えない……!?」

「ちょ、ちょっと花子姉さん!?」

「「キャー!」」


 地面が近づいてもスピードが緩まない2人。

 神が消滅しダンジョンアイテムの力が安定しないのだ。


「あ、あぶな――ぐぇっ!」

 2人はアキラの上に落ちてきた。


「うぅ……ごめんなさい。魔法がうまくコントロールできなくて。なんででしょう?」

「アキラちゃんねるさん! 神を倒したんですわね! 無事でよかった……」

「……た、たった今、死にかけたよ……」


 2人の下敷きになるアキラだった。

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