第169話 最強冒険者

『ぐっ! なんだキサマ! 砂だと?

こんな雑魚アイテムを使うとは…… 本当に貴様は最強剣士とはほど遠いようだな!』


光で魔族の視界を一瞬奪う。

光る砂はどのダンジョンで手に入れられる、ありふれたダンジョンアイテムだ。


虎石は光に怯む魔族の背後に回り込み、剣を突き立てる。


『ぐわ、貴様……』

剣を振り回し反撃する魔族、虎石は冷静に避ける。

続けざまにダンジョンアイテムの火薬を投げつける。

虎石は煙に包まれた魔族をジワジワと攻撃する。

そして、敵の足元に『アイテムポケット』から取り出したビンに入った液体を撒いた。


『うう……クソ、こんなザコアイテムごときに……』

魔族は濡れた地面に足が沈みこみ、身動きが取れない。


一つ一つは大した威力のないアイテムだが、巧みに使いこなし魔族の動きを完全に封じた。

ダンジョンアイテムを使い、ダンジョンをクリアする冒険者そのものだった。

虎石は剣を振り上げる。


「俺は最強剣士じゃないが……最強冒険者だ!」

虎石は魔族の首をはねた。



「虎石さん! 大丈夫ですか?」

アキラたちが虎石に合流する。勝ったとはいえ魔族最強の剣士と戦ったのだ。全身から血が滴る。

花子のすぐに回復魔法の傷を治す。


「おい! 虎石、大丈夫か!?」

そこに虎石と救出されたナオコが現れた。


「ナ、ナオコ……?」

呆然とする虎石。

1度は死んだと思っていたパーティーの仲間が20年ぶりに現れたのだ。


「虎石くん……久しぶり。助けに来てくれてありがとう……」

「無事でよかった……遅くなってすまない」

涙を流す虎石。


「あなたたちが私の作ったダンジョンを使ってくれた子たちね?」

ナオコはアキラたちを見る。


「は、はい。はじめまして……」

「あなたたちのおかげで、私はまた彼らに会えたわ。なんてお礼を言えばいいか」

「い、いえ! 店長には……金剛寺さんにはいつもお世話になってまして……」

虎石と金剛寺の仲間、そして金剛寺の婚約者のナオコに初めて会ったアキラたち。

写真の通り綺麗で優しそうな人だ。


それからナオコはこの異世界の今の状況について話を始めた。

魔族たちはこの世界を捨てて、トンネルから人間界に進出しようとしている。

異世界の神がここを離れるか、倒せばダンジョンもトンネルも消える。

異世界の神は魔族の長老で、四天王と呼ばれる魔族がついており、虎石と金剛寺が1人づつ倒した。


「す、すごい! 店長、四天王を倒したんですね!」

花子が金剛寺に言う。


「ガッハッハ、まあな。楽勝だったぜ!」

「ふふ、金剛寺くん。久しぶりに会ったと思ったら、こんな若い綺麗お嬢さんたちを連れてるのね?」

「こ、金剛寺……くん!? ププッ」

アキラたちは笑い出す。


「うるせェ! 違う! こいつらはただの客だったんだ!!」

ナオコの前ではタジタジな金剛寺だった。





★★★★★★★★★

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