第12話 A級冒険者の3人組
ガサガサと木々が揺れ、ドタドタと聞こえて来る複数人の大きな足音は、ギルマスと見かけたことない知らない3人組の冒険者さんたちだった。
「こいつはサラマンダーじゃねぇか!」
ギルマスの後ろにいる人達は誰?
パチッとギルマスと視線が合い、こちら目掛けて走り寄り、ガシッと両手で私の両肩を掴まれ、安否確認をされているが、ギルマスが満足するまで徹底的に調べられた。
「レイン! 大丈夫か?
怪我はっ!」
ギルマスは私の小さな身体を上から下まで見回し、ギュッと抱きしめてくれた。
「ぎ、ギルマス。私は大丈夫だよ」
「いや、どこか怪我してるかもしれないだろ?」
(フルフル)と、顔を横に振り、怪我は無いアピールをしたあと、後ろにいる人達のことを見て、誰なのかを聞いた。
「後ろの人達は誰?」
後ろを見たギルマスは、私を片手で抱き上げ、教えてくれた。
「こいつらは【ブラックシャーク】という名のA級冒険者たちだ」
「わあぁ、強い冒険者さんなんだね。
冒険者のレンより強いの?」
3人の冒険者たちの目がピクっと動き、何故か物凄い怖い顔をして睨まれてしまった。
(怖ぇぇぇ!)
ギルマスは、考える間も無く即答した。
「いいや、コイツら3人でレンに戦いを挑んだとしても一瞬でレンにやられるだろうな」
驚きと共に口が空いてしまい、それを急いで両手で塞いだ。だって、また3人に睨まれるのは嫌だし。
「えぇっ!! レンってもの凄く強い冒険者だったんだ!」
「まぁ、今回はレン達がいなかったから、急遽こいつらに来てもらったって訳だ」
そうだったんだ。と、チラッと3人の顔を伺うと大柄で熊のように毛深い男性と視線がぶつかった。
そして、大柄で熊のように毛深い体に重そうな鉄の胸当ての防具を装備し、槍に斧がくっ付いてる武器が目立つ怖そうな男性が、私の方にやって来た。
ギルマスの方が身長が高いが、それでも毛むくじゃら男性が、こちらに声もかけず近寄ろうとするから、小さな体が強ばるのは普通の反応だ。私はギュッとギルマスの服を握り、男性をこわごわと見た。
その毛むくじゃら男性は何を思ったのか、意外な質問をされ。その質問に対して私は、どもりながらになってしまったけど、なんとか話すことが出来た。
「オマエがサラマンダーを倒したのか?」
「え? あ、あの、わ、私も、い、い、今、と、通りかかった、ば、ばかり……でしゅ(言葉はどもるし、最後噛んじゃったよぉ)」
なんて答えれば良いのか分からないのもあるが、最後に言葉を噛んでしまったことが恥ずかしくて、アタフタした後ギルマスの首にギュッと抱きつき、その場をしのいだ。
この行動で私が怖がっていると勘違いをしたギルマスは、背中を撫でながら怒鳴った。
「オマエとか言うんじゃねぇ!
小さなレインがあんな化け物級のサラマンダーを倒せると本気で思っているのか!
こんなに怯えさせやがって……ヨシヨシ、怖かったよな。もう大丈夫だからな」
と言いながら信じてくれたけど、ブラックシャークの人達のあの目、完全に疑っていますって顔だ。
でもまあ、実際に倒したのは私なんだけど、面倒なことに巻き込まれるのはゴメンだ。
だから、私が倒したことは秘密にしておくことにした。
三人の疑いの顔に黙っていられなかったギルマスは口を開いた。
「だがよぉ、俺らが来た時にはコイツしかいなかったじゃねぇか!
なあ、どうやって倒したんだ?」
まだ言うか、この槍斧毛むくじゃら男!
その言葉にギルマスが真っ先に反論した。
「バカなこと言うんじゃねぇ!
小さくてか弱いレインが倒せるわけがねぇだろうが!!
何回言わせるんだ!」
「「「…………」」」
指摘された3人は黙ったが、ヒソヒソしている姿がなんだか嫌な感じだ。
ん? 視線を感じた私は(ソッ)と横目で見ると、薄手の鉄の防具に鉄の鉤爪を両手に装備をしたイケメン部類に入る男性に「クソガキ」と小さな声で呟かれ、フワッとしたシルクの魔女様的な格好にロットを片手に持つ胸が……うん、私と一緒だから大丈夫! な女性には睨まれ「フンッ!」と威嚇するように鼻を鳴らされた私は、嫌な気持ちになった。
それにしても、何なのコイツら。初対面の子供に対して態度が悪い。
(この3人から禍々しいオーラが見えるようで、こっわ!!)
「レイン、ここは危険だから早く帰ろう。
それにしても……(まだ細すぎるし、ガリガリだな)レイン、ちゃんと飯は食っているのか?
軽すぎるぞ!」
ギルマスは私を片手でヒョイっと移動させたが、ガリガリに痩せすぎて、骨と皮しかない体や体重のことを言われたのが恥ずかしくて、少し焦ってしまった。
「た、食べてるよ。
それと、女の子に体重のことを言っちゃ駄目だからね。
禁止!」
頬をプクッと膨らませ、プイッと顔を横に向けると、ギルマスは私の頭をナデナデしながら笑っていた。
「ははは、悪い悪い。
レインが言った言葉と仕草を久しぶりに見たし聞いたなぁと思ってな。
俺の嫁さんが言っていたんだよ。
もう、アイツは……いないがな……」
寂しそうなギルマスの目を見た私は、小さな手を精一杯伸ばし、ギルマスの頭を優しく撫でた。
なでなで、なでなで。
「不躾なことを聞いてしまって、ごめんなさい」
ニカッと白い歯を見せて笑う優しいギルマス。
「レインは悪くないだろ?
それに不躾って……難しい言葉を知ってるのには驚きだぞ!
……あそこにある川は見えるか?」
指をさす方向に橋が見え、ギルマスに私は小さくうなずいた。
「嵐の日にな、街の中に逃げ遅れた子供達を助けたんだが、運悪く水嵩が橋の上まで迫り、アイツは流されたんだ。
俺は何度も川下まで行き捜索したんだが……見つからなかった。
暗い話をして悪いな。
おら、お前らも帰るぞ」
笑顔で話すギルマスの服をギュッと握り、3人組を覗き見た。
まだ疑わしい目で私を見ていたが、槍斧毛むくじゃら男に再度質問された。
「リインだったか。
何かスキルは持っているのか?」
「持っていますが……。
私の名前はレインです」
「レインだったな、悪いな。
スキルを教えてもらってもいいか?」
「それは……」
鉄の鉤爪をしている男性に心無い言葉を投げかけられ、ビクついてしまった。
「(おい、もったいぶってんじゃねぇぞ!
クソガキ)」
と、小さい声でギルマスに聞こえないように言われ。
私は少し俯き、ギルマスを見たあと、ぎこちなく答え。3人組の顔色を伺うと。
槍斧毛むくじゃら男はなぜかニヤニヤしながら喜んでるように見えた。
「私のスキルは、戦闘に役に立たないですよ?
【草集め】と【想像】なので……」
「スキルが2つもあるのかよ。
良いじゃねぇか!
そうだ、明日一緒にダンジョン行ってみねぇか?
レベルも上がるし。
なにより、Fランクのモンスターばかりしかいない場所があるんだ」
私をそっちのけで話す毛む槍斧毛むくじゃら男に少し恐怖を感じ、ギルマスの服を掴む手を強めた。
さっき言ったよね【戦闘に役に立たない】って、草集めと聞いたら普通は戦いに向かないスキルだと分かるのに、この人達大丈夫なのかな?
「えっ、で、でも……。
私のスキルは戦闘向きではないですし、一度もモンスターと戦ったことが無いので……正直言って怖いです(サラマンダーを倒したけど秘密よ!)」
チラッとギルマスを見る前に助け舟を出してくれた。
「ダンジョンにはFランクのモンスターしかいない場所があるのは本当だ。
だがな、レインはまだ5歳だ。
レベル上げは剣を持てるようになってからだ。
今は必要ないし、討伐には攻撃魔法か剣が扱える者と決まっている!」
ギルマスの言葉に諦めたのかと思いきや、今度は必死になって懇願して来た。
なんでこんなに必死なのかな?
まあでも、ダンジョンには一度行ってみたい気持ちはあるが、この3人とだけは一緒に行きたくない!
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