第6話 朝



学校へ通い始める日がやって来た。

これまで俺を含めた子供達は家の手伝いなんかが主な仕事であり、男は家事の手伝いや編み物などの家内作業、女は畑作業や狩猟だったりと家外作業を行っていた。もちろんずっと手伝いな訳ではなく、午前は手伝いをして午後は近所の子達と遊ぶのが一般的だ(女の場合)。


俺の場合は身体を鍛えるために腕立て伏せやスクワット、腹筋などを行い、その後タンパク質を確保するべく近くの小川に行ってカラフルな魚を石で狙撃して収集したりしていた。


村では自然がいっぱいで漁業法などの概念は無いため、手頃な魚なら自分で取ることが出来る。


筋肉を作るのにはタンパク質が重要であることは、義務教育で学んだこと。

この世界の女達はそんなことを知っているわけが無いので、ここで差を付けるために頑張った。


お陰で今では細マッチョと言える程度には筋肉が付き、毎日自分の腹筋、胸筋、腕筋、腿筋を触って確かめるのが日課だったりする。


「母さんも行った方がいいかしら?」


朝食の時間になって、母さんがそう尋ねてきた。

初回だから保護者同伴で、という事だと思う。


「一人で行けるよ!」


だけどそれは無用。男はどうしても目立つので勝手に村中で認知されるんだ。母さんには仕事があるしね。


「そう?ナナミに頼んでもいいのよ?」


「――なんでナナがタイチなんかのために!ナナは行かないからね!!」


母さんの提案に、俺の斜め向かいに座っていたナナミが爆発した。

ちなみに席は俺が机の左側で母さんがその向かい、ナナミは母さんの隣だ。


一度、思春期が近づいてきたのか俺の身体に視線を送り気味になったナナミが俺の隣に座ろうとしてきた事があった。母さんはそれを見てニヤニヤしていたけど、俺は根に持つタイプなので煽った。

ナナミはキャンキャン鳴くと元の席に戻っていった。


――ふっ、所詮女なんて獣よ。……てか、ナナミは俺と兄弟だよな?え、実兄をそういう目で?


その後母さんから、実は俺達には父親がいなくて、ナナミは俺と異父兄弟になることを聞かされた。俺達は母さんがこの村から一番近くにある大きな街で働いていたときに身ごもった子らしい。どちらも男をナンパして関係を持ったとか。


母さん凄い。



「そろそろ行ってくるね!」


「気を付けて! 友達が出来るといいわね!なるべく男女仲良くね!」


「……さっさと行けば?」



二人の見送りを背に、俺は村の中央部に建てられた学び舎へと向かった。


俺の行動範囲は子供なので近場になる。村でも知り合いも百人いるかどうかだ。


だけどこの村は広く、学校には俺の住んでいる周辺から離れた場所からも人が来るため同じ村でも会ったことがない人が多く来るらしい。


同い年の子達の男女比を見れば、この世界の男女比をある程度推測できるかもな。


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