第4話 妹ナナミ
ナナミの部屋の場所を聞いたら俺の元いた部屋の隣らしい。
質問したときは怪訝な目で見られたけど……セーフだった。
「ナナミーご飯だよー」
壁をノックして声を掛ける。
何か物音がした後、こちらへ向かってドタドタと大きな足音で一人の少女が近づいてきた。
彼女がナナミらしい。黒髪のショートカットで目がぱっちりとした可愛い子だった。服は俺と同じように藁か何かで出来た素朴なものなのにそれがよく似合っている。
年齢的に多分俺より小さいので妹かな。見た目は小学校高学年くらいだし良い子だといいんだけど……。
「――タイチのくせにナナを名前で呼ぶなっ!」
……メスガキだった。
ナナミは俺の目の前まで来ると、ギッとこちらを睨み付けていた。
どうやら兄として説教する必要がありそうだ。よくあの母さんからこんなメスガキが産まれたもんだな。
「何言ってんだ、俺はお前のお兄ちゃんなんだから当たり前だろ。というかなんだよその態度。反抗期か?」
ナナミに説教をしているはずなんだけど、自分の声が思ったよりも幼いせいで威厳が全くない。これじゃあ
「タイチこそ何言ってんの?!昨日まではビクビクしてたくせに!生意気!」
え、元の俺、妹相手にビクビクしてたのかよ。
気が弱い子だったのかな……安心しろ。俺がお前の分まで何とかしてやるから。
「そんなのはどうでもいい! いくら兄弟でも名前くらいは呼んでもいいだろ!生意気なのはお前の方だろ!」
「っ!タイチのくせに! 男のくせに!このっ! 」
ナナミは俺に向かって突進してきた。
「お?やるか? 負けて泣いても知らないぞ?」
「男のくせに!雑魚のくせに!ナナの前で偉そうにするな!」
相手は興奮状態で注意力散漫。
俺は煽りすぎたかと反省しながらも冷静に構えた。
そしてお互いの手を握り力勝負に持ち込む。
――これが俺の狙いだ。
女なんて男よりも身体能力が低いし頭も悪い。
なら武器を使わない素手の勝負に持ち込めば万に一つ負けは無い。
後はそのままナナミを床に倒して体重で押さえ込めば俺の勝ちだ。
今だ!横に力を加えてバランスを崩す!
「――え?」
崩す!崩す!崩す!
――あれ?!ピクリともしないんだけど?!おかしいな?!
「――タイチ、あんたが男のくせに偉そうにするのが悪いんだから!男は大人しくナナ達の前で這いつくばってペコペコしてればいいの!」
悪役令嬢なら処刑ルート間違いなしの傲慢な言葉を並べたナナミが、力を込めて俺を倒そうとしてくる。
――嘘だろ、ナナミの腕力強すぎる。
本気を出して抵抗を試みるも、出力が違いすぎた。
結局俺は一度の抵抗も出来ずに床に倒された。
「くっ……!!」
「ふんっ! 刃向かってくるから少しだけ警戒したけど相変わらずの雑魚じゃない!」
俺はナナミによってうつ伏せの状態に倒された。
ナナミはそんな俺を背中に乗って、俺をあざ笑っていた。
「そうよ、男は女には勝てない! 出来るのは今みたいに女の馬になるだけなんだから!」
年下の女に力負けするのは俺の人生至上最高の屈辱だった。
――何時か絶対復讐してやる!女ごときに俺は屈しない!
結局、母さんが助けに来るまで俺はナナミの拘束から抜け出すことは出来なかった。
◆◆◆後書き◆◆◆
この回が書きたくてこの小説を書き始めたと言っても過言では無い。
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