アンチフェミニストが行く女尊男卑の貞操逆転世界

やまいし

第1話 アンチフェミニスト


俺、山崎太一は自分でも生粋のアンチフェミニストだという自覚がある。

これは強固に作られた揺るがない思想であり、他人にとやかく言われたところで表面上は取り繕っても根本的には変わることは無いだろう。


もちろんいくら反フェミの俺でも、女の存在価値全てを否定するわけじゃない。当たり前だけど、女がいなければ子供だって作れないし、男には決して再現できない女としての可憐さや美しさがある。更に、男は本能的に女を求めるので女がいなければ想像もつかない事態が起こるかもしれない。


俺だって恋愛対象は女で人間としては女が好きだ。

これまで彼女がいたこともあったし、デートをしたことも、ホテルで一夜を過ごしたこともある。

女友達がいたこともあったし、家族にだって母親に妹もいた。

客観的にも主観的にも、良好な関係を築けていたと思う。


……だけど、それを加味しても。

俺は女は男よりもあらゆる点で劣っていると思っているし男の方が上位的な存在であると思っている。

それは頭脳だったり、身体能力だったりという人間としての根幹的な部分やその他諸々に対して言える。



俺がこの真実に気付いたのは高校2度目の夏。

当時付き合っていた同い年の彼女の勉強を見ようと彼女の家を訪ねたときに、丁度そこから出て行くイケメン風の男を見たのがきっかけだった。

その日は素知らぬ顔で普段通りに勉強を教えたが、ふと我に返り彼女を観察すると、勉強すら自分で出来ないし飲み込みも悪い事に気付いた。


解散してから家に帰ると妹が頭悪そうにダンスを踊って動画サイトに上げていた。顔をモザイクもかけずに晒し、その上当然のように制服を着ていた。

女はプライバシー保護も出来ない存在として俺の脳内に記録された。


翌日学校に行っても女に対する違和感は続いた。

ある女は廊下で下品に笑い声を上げていたり、ある女は丁度家で見たようなダンスを数人で踊っていたり、ある女は足癖悪く椅子に足を乗せたり、ある女は下ネタを言って笑い合ったり。



とにかく上げればキリが無かった。




だとその日俺は確信してしまった。




◇◇◇



そこからの俺の生活は一変した。

まず、女と必要以上に関わるのを止めた。これは単純に一緒にいると内に秘めたる嫌悪感が溢れ出ちゃうし、馬鹿が移ると思ったから。彼女とはもちろん即刻別れた。あれでも学年でもモテる女だったから問題ないだろう。

何か言い訳のようなことをくっちゃべっていたがそのせいで唯でさえ低かった女に対する好感度が下振れしてしまった。

今のところ一番尊敬できる女はダントツで母だろう。妹は…………え、家は両親と俺の三人家族のはずだけど?? どうしたんだ俺。


男の事情で必要なに関しては、ネットで検索し『顔だけはいい女』で済ませる。どうせ中身はあれなので絶対に静止画。むしろ最近は更生の余地の無いJKなんかよりも、無知であるが性格には殆ど問題の無い小学生とかの方が女としてマシだと思ってる。それか年上の社会で真面目に働くOL。


一応元彼女、いやあの女が極端にダメだっただけで他の女は問題ない可能性もあると思ったから、別の女と付き合ってみたけど………言わなくても分かるだろう。お察しの通りだった。


最近の趣味は、女に関する根も葉もない噂を流して女同士の浅ましさを遠目に見ることだ。多分反フェミの人にとっては一番のご馳走だと思う。ソースは俺。

あれって見る度に自分の考えは間違っていなかったと再認識できるんだよ。もちろん今後も、いじめにならないように時折軌道修正しながら楽しんでいこうと思っている。



次はどんなことをしようかな。


次の電車を待ちながら俺がそう心を躍らせていたとき、後方から騒がしい女たちがやって来るのがわかった。


――公共の場で騒ぐとか常識すら守れないのかよ。


ほら、俺の後ろにいたサラリーマンだって離れるように列から抜けていった。きっとあの人も俺の同志なんだろう。わかってるじゃ無いか。是非お友達になりたいものだ。


サラリーマンを横目に、俺は頭悪そうな女達だなーと耳に侵入してくる雑音からそう判断していた。制服的に他校みたいだけど、どこもこんなもんか。


JKの頭事情に呆れつつ、電車の到着が近いため黄色い線の前方に進む。

その時、騒がしい声と共に突然後ろの女たちがぶつかってきた。



――え、、、?



線路の上へと飛ばされる俺の身体。

横からブレーキ音を響かせて迫ってくる電車。



やっぱり女はカs……





グチャ




スローモーションの世界で最後に見たのは、男達によって床に押さえつけられた同志の姿だった。




――ホームにが響き渡った。




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