主人公視点

「おはようりんさん。体調はどう?」

「✕✕✕✕✕✕」【体調は良好。大砲は双方。来訪瓦解がかい砲】


 なに言ってんだこの人。来訪瓦解法?


「来訪瓦解砲ってなに……?」


 必殺技か? エンドオブダークネス……えーっと……名前忘れたけど、新たな必殺技を身に着けたのか……? 軽井沢で修行したのか?


「ひ、必殺技?」

「✕✕✕✕✕✕」【立証の不能。殺傷の可能? 抜刀の対象】


 ……


 ……ラップにハマっているのだろうか……なかなか、パワー系ラップだな。韻とかどうでもいいんだろうな……


「ラップ……好きなの?」

「✕✕✕✕✕✕」【刻むラップ、騎士タラップ、モロモロップ】


 パワー系過ぎない? 強引すぎない? そもそも、これラップ? 騎士タラップ?


「……ただのダジャレでは……?」

「✕✕✕✕✕✕」【それは適切、取るは角質、走る姿は回覧板】


 もはやダジャレでもない。


 ……


 走る姿は回覧板? どんな状況?


 ……迷った末に、


「打順は四番、すべての基盤、結果は散々、走る姿は回覧板……」


 恥ずかしくなってきた。なんだ走る姿は回覧板って……何言ってんだ……別にラップにもダジャレにもなってないし……ただただ意味不明なことを言ってしまった……

 

「✕✕✕✕✕✕」【負けました】

「勝負してないって……」


 勝敗つけるなら、どっちも負けだよ。この低レベルな勝負に勝敗なんて存在しないよ。


「ら、ラップにハマってるの……?」

「✕✕✕✕✕✕」【そう見せかけるためのフェイクです。私は電子レンジです】


 わっかんねぇ……会話が成り立たない……いつも通りだ。


「電子レンジって便利だよね……」

「✕✕✕✕✕✕」【それはラップを使うことができます】

「そっちのラップ?」


 余ったおかずとかにかけるほうのラップ? 韻を踏むほうじゃなくて?


「家電が好きなの?」


 家電が好きな人はいるらしい。こないだテレビでも特集されているのを見た。


「✕✕✕✕✕✕」【それは沼です】


 沼……そんなにハマるのか。たしかに、なにかにハマることを沼と表現するけれど……


「……オススメの電子レンジとかある?」最近、うちの電子レンジの調子が悪い。「買い換えようと思ってるんだけど……」


 ……


 一緒に買いに行きたいけど……それはまだ提案できないな。もうちょっと、仲良くなってから……


「✕✕✕✕✕✕」【重要なのはラップになります】


 ラップが重要なの? 電子レンジよりもラップ……?


 考えたことがなかった……ラップなんて適当にかけていた。


 ……


 奥が深い……

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