第27話
「はーい! 今日から一緒に暮らす。 こちらヘカテーちゃんでーす」
次の日私たちはヘカテーをむかえに行き、店につれてきてペイスに紹介した。
「ヘカテーさん、よろしくお願いしますね」
ペイスがヘカテーにあわせてしゃがみ、目線を合わせ笑顔でそういう。
「よ、よろしく......」
ヘカテーは私の後ろに隠れながら小さな声でいうと、ペイスが微笑んでうなづいた。
「ああ、そうだ! ヒカリ受付募集で三人ほどきてくれましたよ」
「本当!」
「ええ、アンケクスの女性たちで明日きてくれます」
「アルケクス...... ああスラムの名前か」
「ヒカリ......」
ヘカテーが私の服をひく。
「ん? 何? ヘカテー」
「ポーション...... つくってみた」
そう言うと動物を模した小さな可愛らしいカバンから、緑の液体のはいった瓶をひとつだした。
「作れたの!? ポーション!!」
「うまくできてるかわからない......」
「取りあえず鑑定を......」
ムーサが目をつぶり机の上のポーションを鑑定する、
「こ、これはハイポーションです!」
「ハイポーション?」
「ええ、ポーションの上位アイテムです! 王族や貴族以外使用しない、ほとんど流通しないものですよ!」
早口でムーサは興奮気味に話した。
「すごいじゃない! ヘカテー!」
「......そうなの......」
そう顔を赤くして私の後ろに隠れた。
「ふむ、これならポーションの販売も行えるね」
「ですが、工房がなければ作れないでしょう。 ここのお店だと狭すぎます」
「......だね。 お金もたまってることだし、ここは一発、デカイ建物を建てるとしますか!」
「そうですね。 先行投資としては必要かもしれませんね」
ペイスがうなづく。
「失礼します」
その時、扉があいてヘスティアがはいってきた。
「えっ? その可愛らしいお嬢さんは......」
そういわれてヘカテーが私の後ろに隠れた。
「ああヘスティアこの子がヘカテーよ」
「ヘカテー...... そうかあの錬金術師の......」
「それでなにか用?」
「ああ、実はあなたたち、ヒカリ、ペイスどの、ムーサどのそしてシアリーズどの率いる鈍色の女傑にアズワルド女王、グレイシアさまから招待がきているのです」
「ああ、あのちびっこ女王さま」
「不敬ですよ。 ......まあその女王がそなたたちに礼がしたいとおっしゃっていて、一月後の晩餐会に招かれています。 だからその日ここにむかえが来ますよ」
そういうと、ヘスティアはヘカテーに笑顔で手を振り帰っていった。
「ふむ、困ったね」
「何がでしょう?」
ペイスがキョトンとしている。
「服だよ、服!」
「あっ! 私たちドレスも何も持ってませんね」
「そうだよ! 普段着、寝巻き、鎧なんて、よく考えたら年頃にはあるまじき、ひどい服しか持ってないよ!」
ずっとモンスター討伐などにいそしんでいたから、ファッションに気を遣う余裕もなかったのだ。
「た、確かに、ど、どうしましょうか」
「これはドレスアップするしかないでしょ!」
「ド、ドレスアップ」
ペイスたちは驚いている。
私たちは王都に買い物に出掛けることにした。
「ほう、この子が噂のヘカテーか、こんな小さいのに錬金術師なんてすごいじゃないか」
そうカンヴァルが感心したようにいうと、ヘカテーはペイスの後ろに隠れた。
「ふふ、でなんであたしまで王都に呼んだんだよ」
カンヴァルは不思議そうにそういった。
「招待は誰を呼んでもいいらしいから、ヘカテーとカンヴァルを呼んだの。 ほらカンヴァルはほとんどさらしじゃない。 たまにはおしゃれでもと思っただけ」
「まあ、あたしだって興味がないわけじゃないから、いいけどさ」
「それにうちのギルドでモンスター素材の武具を販売したいの。 カンヴァルも所属してよ」
「ん? ああ現金がはいるなら構わないけど、作ったらおろせばいいのか」
「うん、ポーションもヘカテーにつくってもらって販売しようと思って、フランさん、バーバラさんも所属してくれたよ」
「まあ、なら鍛冶屋連中にも声をかけとくか」
「お願い」
「でも、あの店じゃあ狭いだろ」
「だから、どこかに新しい店舗をたてようかと思って」
「なるほど、そのための視察でもあるのか」
カンヴァルはうなづいている。
「ああそうでした。 ヒカリ、シアリーズさんたちは晩餐会に行かないんですよね」
ヘカテーと話していたペイスがそういって聞いてきた。
「なんか、自分達の失敗を取り返しただけだからって辞退したみたいよ。 あっ、あれじゃないお店」
その店は王都でも有名な店だった。 たしかに見渡す限り、服が並べられているその店内は圧巻だった。
「ひ、ヒカリ、こんなに服がありますよ!」
ペイスはそれをみて興奮している。
「確かにお金持ち相手だから、かなりの品揃えだね」
(でも派手で趣味あんまりよくないけど...... 私の感性がおかしいのか、それともこんなものかな。 それにバカ高い。 正直こんなの場所代込みでしょ)
おしゃれに無縁だったからかそう思った。
「しかし、これだけあると、どれを買えばいいか困るな」
カンヴァルは圧倒されている。
「まあ、なんでも買ってよ。 お金は出すからさ」
「お客様、当店になにかお探しものですかしらね」
そうきらびやかな服というよりは衣装を着たケバいメイクの店員がやってきた。 その目と口調からは、こちらを蔑んでいるように感じる。
(服に決まってんじゃない...... まあ、客商売だから不快な接客のあとかもしれないし、私たちの身なりからそう判断されたのかも知れないけど......)
「いえ、ドレスを探しているんですけども」
できるだけ気をつかっていった。
「そうですわねぇ、うちのドレスは貴族御用達、どれも素晴らしい品ですわ。 正直、このドレスをきて田舎のどちらに着ていかれるおつもりなのかしら」
そう言って笑う。
「そうですわね。 ほほほ......」
「やめてください......」
軽く魔法をぶっぱなそうと思ったのをさっとペイスが止める。
「腹立つんですけど、こっはお客様なんですけど」
「ここにいる人たちはいつも貴族を相手にしているんです。 ですから自らも高い地位にあると錯覚しているだけ」
小声でそうペイスがいった。
(くぅ! 腹立つ!)
「お決まりでしょうかお客様」
そう店員は急かしてくる。 カンヴァルは選ぶきもなくなり、ヘカテーとムーサは萎縮しているようだ。
「じゃあ......」
「いえ、特にめぼしいものはないので、帰りますね」
にっこりとペイスがいう。
「めぼしいもの...... そうですか、まあそうでしょうね。 この店の品は高貴な人たちのもの。 残念ですが、お客様たちが好まれるようなものはありませんものね」
そう勝ち誇ったように店員はいった。
「はい、そうですね。 高貴をどういうことをさしているのかはわかりませんし、感性が異なっているのかもしれませんが......」
しかしと続ける。
「人を偏見でみるような人と同じ感性ではないことを誇らしく思います」
そういって笑顔で私たちをつれ店をでる。
外から見ると店員は腹立たしげにこちらをにらんでいる。
「いやー、やるねペイス!」
「ほんとほんと、やっぱあんたは
「ヒカリもカンヴァルもやめてください。 感情的になって失礼なことをいってしまっただけですから」
ペイスは困り顔でいう。
「でもかっこよかったです! 私なら黙っちゃいます」
「うん...... ペイスすごい」
ムーサとヘカテーも尊敬の眼差しをおくっている。
「もう二人まで、よくないことなんですよ。 あんなけんかごしなんて......」
そういって困っているようだ。
「とはいえ、どこかにいいお店ないかな......」
「ヘスティアさまなら知ってるのでは?」
ペイスが提案する。
「そうだね! いってみようか!」
ヘスティアのお屋敷へと向かった。
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