第10話 夜桜沙耶華の漫画
私は漫画を皆に披露した。
一コマ目にはイケメン教師と美少年男子生徒の絵を並んで描いた。と言っても後ろ姿であるので顔はわからない。二人はバス停で、バスを待っている。
2コマ目、桜が舞う夜の情景。と綺麗な月を描いた。
3コマ目、二人の足元に桜の花弁が落ちる。
4コマ目、上からのアングル、先生が言う。
「月が綺麗ですね」
男子生徒はそれに赤くなりながら同じ様に見上げた状態で
「死んでもいいです…」
と言って終わる。
ふふふ。
どうかしら?とりあえず絵も背景はともかくこっそりと描いてきたからね。それでも小波先輩には敵わないけど。
腐仲間の部員の皆さんはこの意味がわかり拍手された。
「おおお!凄い!!」
「な、なんて美しい4コマかしら!」
「この二人の幸せを願う!!」
「うん、綺麗なかんじ。絵も無駄がない」
と小波先輩からも一言もらい、ホッとする。
玲一郎と月城くんはポカンとした。
玲一郎は流石に意味を理解していたが
「んん?」
と不思議そうになっていた。
月城くんは意味が分からなさそうだ。
「えーと…綺麗な絵ですね!!」
と一応褒めてくれた。
玲一郎は
「おい、沙耶華。これは…先生が生徒に…その…愛の告白をしてそれに生徒がオッケーしたと言う事だよな?
いや、男同士だが??」
と言う。玲一郎…、流石に頭がいいから夏目漱石のことは知っていたみたいね。
因みにこのモデルは貴方と月城くんよ!!
「ええ、そうよ、題名は春の月とするわ。夏目漱石流の愛の告白ね。それに対してのYESの応えが死んでもいいよ」
「いや、それはわかるけど、相手男だが?」
「玲一郎。何を言っているのかしら?この子はもしかしたら男装した女生徒かもしれないし、男の子かもしれない。解釈をするのは読者次第となるわ!」
と自分で描いた美少年男子生徒を指差す。
まあ、一応こうでも言っておかないとね。
「…?あ、ああ…そうなのか。確かに女の子に見えるかも」
と玲一郎は折れた。
「誰かに似ている様な??」
と月城くんにバレそうになるから慌てる。
「とにかく、画力テストは終了。夜桜さんはとても良かったね。白藤くんは背景だけ良かったよ。月城くんは絵はともかく話は意表をついてきたね」
と部長が評価して、とりあえず私達は見事、漫画部に入部した。
「改めてよろしく、夜桜さん」
と小波先輩が手を出したので私はしっかり握手して微笑むと小波先輩は少し赤くなった。
「俺オススメの本あるから貸すが…」
と言ってくれたので嬉しい!!
「本当ですか?それは楽しみです!!先輩は同人活動をされてますか!?」
と聞くと
「え……っと」
とどもる。代わりにメガネの梶木さんが言った。
「同人活動というか、実は小波くんは一応K出版社で読切を載せてもらったわ!!
卒業したら大学行きながら連載するかもって話なの!」
と言うから驚いた。
「す、既にデビューなさっていると!?あ、あのし、失礼を!!さ、サイン色紙を今度持ってくるのでオススメのCPを是非投影して欲しいのですが!」
と図々しく言うとチラッと玲一郎達を見た小波先輩は
「オッケー。いいよー。任せて!」
とゆるく笑った。ああ!素晴らしい!まさかプロの方だったなんて!後でペンネームを聞いて作品を読もう!!
「先輩!私とライメして下さい!!」
と言うと
「「えっ!!?」」
と玲一郎と月城くんは声を揃えて言う。
「な、何で婚約者の俺とはライメしてくれないのにこんなのとするんだ!?沙耶華!!」
とまたうるさい玲一郎。
「玲一郎とライメしてもつまらないからよ!?というかするわけないでしょ?貴方は月城くんとするべきよ!」
と言うと、うんうんと部員の先輩方もうなづいた。
「いや、なんでだよ!!?」
と突っ込む玲一郎。
小波先輩は
「まあ、いいよ、しよしよー」
とライメを登録し合った!!
すると月城くんも
「夜桜さん!僕も登録して欲しいよ!と、友達だし!!」
と言うので
「ええ、そうね、いいわよ」
と快く承諾したらまた玲一郎が
「おいいいいい!!!俺は!?何でだよ!?」
「玲一郎とは絶対にライメしないし登録もしないわ!」
と小波先輩の後ろに隠れると玲一郎はギリギリ歯軋りしていた。それに小波先輩は吹き出して
「わっかりやす!」
と笑った。何がだろう?
ああ!玲一郎があまりにも子供だからかしら。精神年齢が低いからね?なるほど……だから小波先輩は玲一郎を受けに……。
そう考えると
「小波先輩!確かに…玲×月もイケる気がしました!!」
と言うと
「おっ!やっと気付いた!?そっちのが絶対いいよね!!」
と意気投合していると
ガラッと漫画部の扉をスライドして入ってくる背の低い男の先生。
【永町正紀】
新人教師で担当は美術で、美術部と顧問の掛け持ちをしているらしく、遅れて来たらしい。それにしても童顔で愛嬌のある顔立ちだ。
「おっそーい、永っちゃん」
と皆さんから愛称で呼ばれている!
「ご、ごめん!ごめん!遅れて、あ……し、新入部員!!?」
と何故か、私や玲一郎、月城くんを見て驚いた。
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