手をつなぎ 君と二人で 帰る道


「待った?」

「いや、全然」

「ほんと?」

 君はいたずらに笑いながら僕に聞く。僕の心を見透かしているように。

 その優しい瞳は真っ直ぐに僕を見ていた。目を逸らすと君は僕の手を握り、駆け出した。


「ちょ、ちょっと!」

「男の子なんだから、しっかりついてきて」


 君はまた楽しそうに笑った。

 こんな僕のどこが良いのだろう。

 こんな僕のどこが好きなのだろう。


「アイスクリーム、おごってくれる約束でしょ」


 そういえば、昨日君と約束をしたんだった。しりとりゲームに負けて、その罰としてアイスクリームを奢る、と。国語の成績の良い君に勝てるはずはなかった。語彙力豊富な君に勝てるはずはなかった。


 でも

 なぜか僕は楽しかった。

 君が笑ってくれると僕も笑えた。

 不思議と心を許していた。


 友達はもう作らない。一生ひとりでいよう。そう、思っていたのに……。


「早く!」

「ま、待ってって!」


 考える時間を与えてくれない。

 君はいつも笑顔で僕をからかう。別に嫌ではないのだけれど。もう少し考え――




 僕は転んだ。


 膝を擦りむき、血がにじみ出る。運動神経は悪い方。駆け足は苦手。


「ごめん! 大丈夫!?」

「だ、大丈夫……」


 強がった。本当は痛いのに。

 君は僕の手を引っ張ると立ち上がらせてくれた。男と女の立場が逆転してるよなあ、と思いつつ


「ありがとう」


 と言った。


 君はちょっと残念そうに「アイスクリームは明日ね、今日は帰ろう」と言った。

「そうだね」

 僕は素直に返事をした。


 学校の帰りにアイスクリームを買って食べる。そんな企みにバチが当たったのだろうか。

 君は少し悲しげに笑う。


「変わったね」

「?」

「昔と変わっちゃったよ、ひろ君」

「まりちゃんは変わってないね」

「……」


 悲しげに笑うものだから、僕はまりちゃんの手を握った。


「昔とは違うんだ。もう、いろいろ、変わったんだよ。失った物が多すぎる。だから、信じることを諦めた」


 ちょっとだけ心の闇を話すと、手を強く握り返された。


「みんな変わっちゃったよ。友達も、みんな……」


 二人で俯いた。沈黙が流れる。


 日は沈みかけている。

 僕は一歩歩み出した。その後をまりちゃんが続く。そして、二人並んで歩く。


「手、離さないでよ。ひろ君」

「も、もちろん」


 手を離すつもりはなかった。まりちゃんなら、もう一度信じることができそうな気がしたから。まりちゃんなら、僕を信じてくれると思うから。



「私、ひろ君のことが好き」

「僕も、まりちゃんのことが好きだ」


 そんな告白や、過去のことを話しながら帰り道を歩く。


 手をつなぐ幼馴染みの僕たちのシルエットが、沈みかけの夕日に伸びては消えた帰り道。



手をつなぎ 君と二人で 帰る道




上手く書けませんでした。。。

それでも読んで下さった方、ありがとうございます。



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