第40話 〜到着。ボルダ帝国〜
目的地であるボルダ帝国に到着する。
「身分を証明するものを見せろ!」
帝国内に入るための門で,警備兵に検問される。
それぞれが持つ冒険者のプレートを見せる。
「ふむ! 冒険者か。分かった通っていいぞ」
何事もなくボルダ帝国内へと入る事が出来た。
「とにかくまずは宿屋を見つけましょ」
布を羽織って顔を隠すようにしているミーナが言う。
俺達も全員,顔が分からないように布を羽織っている。
街にある宿屋で部屋を取り,部屋に入ってやっとゆっくりする事が出来た。
「やっと落ち着けるわね」
「あ〜布が面倒くさいのじゃ。何でこんな事をしないといけないのじゃ!?」
「でも何か楽しいよね!!」
楽しそうにロイは言う。
「エルフの私はこの帝国内では見つかる訳にはいかないからよ」
「それで? 俺達は今後この帝国内でどうしていくんだ?」
「私の魔法を使えば位置を簡単に掴めると思ったのだけれど,同胞達の魔法の気配が掴めないのよ……」
「え!? それってつまりは場所が分からないって事?
「ええ,分からないわ」
「なんじゃ。それじゃあ助ける事が出来ないじゃろ?」
「こんな事になるなんて思わなかったわ。もしかしたら,エルフの魔法などを封じる道具や魔法が帝国には存在しているのかもしれない……。とにかく囚われている場所を地道に探すしかないわ」
「とりあえず飯食いに行こうぜ! オイラ腹減ったぞ!」
「考えても仕方ないし,外行こうか」
俺達は宿を出て,街を散策する。人々が向かっていく場所へと流れで向かうと,屋台や露天などが並んだ道に出て,人が
「オイラ食べ物の店回ってくる!」
「ロイ! 迷子になるなよ〜」
「わかってるよぉ〜」
一瞬にしてロイの姿は見えなくなった。
「それにしても凄い人じゃの」
「これが普通なのか??」
人混みを掻き分けていると――
「おォォォォォォォォォ!!!」
人々の歓声が上がる!!
「なんじゃ!?」
何が起こっているのか見ると,馬に跨った甲冑を着た人達が行進をしていた。
ミーナが突然飛び出して,馬で行進している彼らの方へ向かっていく。
「ミーナ!!!」
俺はミーナを追いかけた。ミーナは子供を抱えていた。
隠していた布がはだけてミーナの顔が
「エルフだーーーー! 捕らえろーーーー!」
ミーナは剣を構えた人に大勢囲まれる。
俺は何故か,自然に身体が動いた。
「カナデ!? しょうがないの〜」
囲まれているミーナの前に俺とクロエは立ち,構えた。
「ん? エルフの仲間か? 全員捕らえろ!」
「カナデ何でわざわざ出てきた。私だけで良かったのに!」
「ん〜よく分からないけど,身体が動いた」
「何だそれは――」
手を後ろに回されて,手枷を付けられた。
「ライム……ロイに助けを求めてくれるか?」
ライムは俺の言葉を理解してくれたのか,誰にもバレないようにその場からそっと抜け出すライム。
俺達は何処か分からない地下に続く牢屋に連れて行かれ,押し込まれた。
「いったいな!!」
「ここで大人しくしていろ」
白銀の甲冑を来た数人の男達は俺達を牢屋に閉じ込めるとすぐに地上へ戻る。重い鉄の扉が閉まると昼なのか夜なのか分からない程,牢屋がある場所は暗かった。
石畳の造りでそれ以外何もない,薄暗く,小さな鉄窓から指す地上の光だけが唯一の明かりで,簡素でただ押し込めるだけの牢屋だった。
「面倒くさい事になったの」
「なるほど,これで分かったわ! だから同胞の魔力を感じる事が出来なかったんだわ」
「分かったって……何が?」
「カナデ,余達は魔法が使えん!」
「は? どういう事?」
「分からないわ――手枷を着けられた瞬間から魔力が感じられなくなったのよ」
「え〜〜と……つまり大ピンチって事??」
「そういう事ね。今何かされたら,何も抵抗出来ないわ」
「クロエもそうなのか?」
「同じじゃな! 余も魔力がなければ力が出せん。それにしてもやっかいな物を帝国の人間は作り出したのじゃ」
「黒竜クロエでも今剣で刺されたら,もしかして死ぬ?」
「もしかしてなくても死ぬぞ!」
「……ヤバいな! ロイとライムの助けを待つしかないか」
どの位時間が経ったか分からない……地上へと続く扉が開き,地上から数人の話し声が聞こえ,人が降りてくる。俺達が入っている牢の前で止まった。
先程の甲冑を着ていた人が数人と,デブで頭は禿げ上がった,着飾るものはキラキラと光り,顔のあちこちに出来た吹き出物と脂ぎった顔を覗かせ,下卑た笑顔を見せる人物が中心に立っていた。
「ドルド伯爵,こちらが捕らえたエルフと仲間になります」
「ほぇ〜。エルフは悪くないな! 後で私の屋敷に連れてこい。他の奴らはいつも通り好きにしてくれ」
「分かりました」
そう言うと全員地上へと戻って行き,また静かな空間へと戻った。
「おい! ミーナ……ヤバいんじゃないか??」
「さっきのドルド伯爵って言ったかしら? エルフの匂いが微かにしたわ。もしかしたら手がかりが掴めるかもしれない」
「でも連れて行かれたら抵抗出来ないんだろ? 何かあったら遅いんじゃないのか?」
「それが……問題なのよ」
ガチャガチャ……。キーー。
再び扉が開く音がした。
「♪〜♫〜♫〜」
鼻歌を歌いながら階段を降りてくる姿はなんとロイだった。
ご機嫌に歌いながら頭にはライムを乗せて,丸い輪っかにいくつもの鍵が付いている物を指でクルクル回しながら現れた。
俺達の牢の前に仁王立ちで立つ。
「おお! ロイじゃないか! 早く開けて欲しいのじゃ!」
「チッチッチ! ロイ様だろ!?」
やけに強気過ぎないか!? まあでもはっきり言うが,現状ではロイ様と言わざるを得ない状況である事は間違いない!
「流石ロイ様!! 救世主です!! お願いします!! 俺達を助けて下さい!!」
「しょうがないなぁ〜全く」
ロイは牢の鍵を開けてくれ,俺達の手枷も開けてくれた。
「魔力が戻ってきたわ」
「これでやっと解放されたのじゃ」
「皆オイラに感謝してくれよな!」
「そうね。ありがとうロイ! あなたのおかげで助かったわ」
「それで? これからどうするんだ?」
「クロエ,この手枷にかかってる特別な魔法を解除したり出来ない?」
「ん〜どうかの〜かなり複雑な魔法じゃからの。まあちょっとやってみるのじゃ」
クロエが手枷を目を瞑って両手で持つと,手の先が光出した――
少しすると,光が消え,目を開ける。
「これでどうじゃ!?」
そう言ってミーナに手枷を
「流石クロエね。手枷を嵌められてても,問題なく魔法が使えるようになったわ」
「そうじゃろそうじゃろ! 余は天才じゃからな!」
「じゃあ私達は,このまま捕まったフリをしていましょう」
「えっ!? どういう――」
「私もクロエも魔法が使えるなら問題ないから,私はドルド伯爵の屋敷に行って,同胞の居場所を探ってくるわ。カナデとクロエは何かされてもクロエが居ればどうにか出来るでしょ!?」
「情報を掴んだら,魔法でクロエに知らせるから私を追いかけて来てほしい!」
「なるほどの〜。分かったのじゃ」
「オイラは?? オイラはどうするんだ?」
「ロイは外で待ってて。後でクロエとカナデと合流して私の所に一緒に向かってきて」
「分かったぞ。じゃあオイラとライムは外で待ってるぞ」
俺達に嵌められていた手枷を一度外し,クロエが魔法で魔法の効果を解除し,再び手枷を嵌め直した。
ロイはもう一度全ての鍵を閉め直し,牢屋を後にする。
そして,誰かが迎えに来るのを,俺達は待った。
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