第28話 〜襲撃されるエルフの里〜
静かな夜の中で,遠くの方から鳴き声のような声が聞こる。その声がだんだんと大きくなっていくのが聞こえる。近づいてくると共に,エルフ達の声も同時に聞こえてくる。
「なんだか,外が騒がしくないか?」
「まあええじゃろ! カナデもっと酒呑まんか」
「カナデ#$%#@」
「ロイは食べ物をちゃんと飲み込んでから話せよ」
「あなた達,大人しくしていなさい」
そう言い放って,監視していたエルフがどっかへ行ってしまった。
ロイとクロエは満足なのか,大の字になってくつろいでいる。
「今なら簡単に逃げ出す事が出来るが,カナデどうするのんじゃ?
「逃げたとしても良いことないだろ? 本当に一生,世界樹の素材を手に入れる事が出来なくなってしまうだろ?」
「カナデ,オイラ腹いっぱいで動けん」
「そいつは良かったなロイ……それよりさっきからずっと騒がしいな」
俺は外が見える小さな鉄窓に背伸びをして外を覗くと,何やら空を飛んでいる大群の魔物とエルフが戦っている様子が見えた。
空を飛んでいる魔物は空から火を吹いていて,エルフの里のあちこちで火事になっている。
「なんかエルフが魔物の大群と戦っているけど大丈夫かな?」
「大丈夫じゃろ多分……しかし,凄い大量の魔物じゃな」
「クロエ寝っ転がりながらそんな事分かるのか?」
「魔力と生命力を感じる事が出来るからな。空からもだが,陸地からも魔物の大群がここに向かってきてるようじゃぞ」
「え!? それはまずいんじゃないのか?」
「もしかしたらエルフの里が大変な事になるかもしれないの」
「なんでカナデが心配してるんだよ。オイラ達を殺そうとしてるんだぞ」
「それはそうだが,もし魔物にエルフがやられるような事があったら,世界樹を手に入れるとかって話じゃなくなってくるだろ」
「エルフがいなくなった方が世界樹の素材は入手しやすいんじゃないのか?」
「俺はそんな火事場泥棒のような事はしたくない。それに世界樹で作られた楽器達の演奏はエルフにも聴いてもらいたいと俺は思ってる」
「全くカナデはお人好しじゃな。いつか損をするぞ」
「演奏家ってやつは面倒くさい生き物なんだ。損をしたとしてもそれはそれでいい」
「オイラは……オイラはそんなカナデは嫌いじゃないぞ」
「クロエ頼めるか? 助けて欲しいんだ」
「しょうがないの。分かったのじゃ」
クロエは面倒くさそうに立ち上がると,壁の前に立ち,ちょいと蹴り上げると壁がぶっ壊れた。
そしてクロエが空を飛び,魔物の方へと飛んでいく。
「クロエ大丈夫かな??」
「ロイも見ただろ? ドラゴンに簡単に勝つクロエが負ける訳ないだろ?」
「まあそうだとは思うけどよ〜。分からないじゃんか……」
俺とロイは壊れた壁から,クロエの動向を見ていた。
クロエは魔物の大群を目の前にして,両腕を交差すると,クロエの周りに氷で出来た矢のようなものが大量に現れている。
「おいおい! なんだかクロエ凄い事してるな」
興奮気味にロイが話す。
クロエが魔物の方へと手を振ると,大量の矢たちが魔物へと向かっていく。
刺さった魔物が次々と空から崩れ落ちていく。
クロエのたった一つの魔法で空からの魔物は殲滅していった。
両の手のひらをクロエが空へ向けると,今度は雨が降ってきた。
雨が降った事によって,エルフの里であちこち火の海だったのが,消化されていく。
陸地ではまだエルフと魔物の攻防が繰り広げられている。
自分の目の前に虫がいる時に,手で振り払う動作のような動きをクロエがすると,地面と魔物が一瞬にして凍った。
凍らなかった残りの魔物達は逃亡していく。
一先ず魔物との戦いは終わったようだった。
クロエが俺達の方に戻ってきた。
「カナデどうじゃ? 魔物追い返してやったのじゃ」
「流石クロエだな! ありがとう」
俺達の所にエルフ達が押し寄せてきた。
「先程,我々を助けてくれたのはあなた達ですか?」
「そうじゃ! それ以外ありえないじゃろ」
エルフ達は跪いて俺達に頭を下げている。
「感謝致します。良ければ食事と泊まる所を案内したいんですがいかがでしょうか?」
「どうする?」
「余はこの場所でも別にいいんじゃがの」
「オイラも腹いっぱいだぜ! エルフ飯には興味あるけどなぁ」
「出来たら長老に会って頂きたいなと」
「分かりました……」
俺はエルフの里の長老と会う事にした。
案内された場所に到着すると,三人のエルフが出迎えてくれた。
「魔物の襲撃からエルフの里を守って頂き誠にありがとうございます」
深々と頭を下げられた。
「長老のフーゴと申します。妻のデリアと娘のミーナです」
「カナデです。こっちはクロエとロイ,コイツはライムです」
「良かったら私の家の中に入ってゆっくりしていきませんか?」
「ではお言葉に甘えてそうさせて頂きます」
「良かったわね。牢屋から出る事が出来て」
「もしかしてオイラ達の牢屋の外にいたエルフの姉ちゃんか?」
「そうよ。よろしく」
俺達は長老に歓迎され,長老宅でくつろぐことに。
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