第14話 〜チビっ子少年との出会い〜
俺達は本来の目的地であるクルル山脈を目指し,歩みを進める。
簡易的な地図をもらったのはいいが,どの位の時間をかかるかは分からない。
急ぐ旅でもないからその位でいいかと俺は考えていた。
「それにしてもカナデ〜歩くのは疲れんか?」
「疲れるよそりゃあ! インドア舐めんな!」
俺もクロエも文句タラタラで道中を会話していた。
「そろそろ野営するか」
「あ〜もう疲れたのじゃ!!」
野営の準備を始める。テントを張って焚き火をしていると,ライムが料理を始める。
「ライムが料理作ってくれて本当に助かる。俺達は致命的に料理が出来ない……」
「本当にライムは優秀じゃな。カナデより優秀じゃないのか?」
「え!? いや……何も言い返せないわ」
会話して和んでいる最中突然――
「だれじゃ!?!?!?」
急にクロエが立ち上がり,俺を庇うような動きをする。
「クロエ急にどうしたんだ??」
「誰かがいる!! 魔物ではないが……」
すると木の上から影が降りてきた。
「な〜んだよ! 見つかっちまったなら仕方ない! ちょっと飯を分けてくれない?」
現れたのは小さい男の子だった。何歳か分からないが,小学生位の年齢だと思う。
短髪の茶色ががった髪色と,両手を頭の後ろに組みながら話す彼の風貌と態度がやんちゃ坊主であるという事を瞬時に分からせる。
「飯って,まあ別にいいけど……」
「お! いいのか!? ラッキー!」
「カナデ良いのか?? 子供とはいえ怪しいぞ」
「それでも放っておく事は出来ないよ」
「仕方ないの〜」
ライムが作ったスープとパンを俺達は食べ始める。
「スライムが料理しているなんて初めて見たぜ! オイラはロイってんだ!」
「俺はカナデ,スライムはライムって名前だよ」
「余はクロエじゃ!!」
「それにしてもこの料理美味しいな〜。おかわりもらってもいいか??」
「いいけど……ロイはこんな所で何してたんだ??」
「オイラか!?!? オイラは――」
話を聞くと,ロイはガラダ村という所に住んでいるみたいで,大人に行っちゃ駄目だと言われている森にいつものように一人で遊びに行ってたら,知らない大人達に捕まってしまったらしい。
そして奴隷として売られそうになり,運ばれている最中の馬車の中でチャンスを伺って逃げ出したみたいだった。ただ,逃げ出したのはいいが,どこに向かえば良いのか分からず何日か
「ロイは村に戻りたいの?」
「ああ! 父ちゃんと母ちゃん心配してるだろうしな」
「……」
「そうかぁ……」
俺達はその後は普通に食事と会話を楽しんだ。
食事が終わるとロイはすぐに寝息を立てて寝ていた。空腹で一人で過ごして疲れていたんだろう。
「カナデ。ロイの事をどうするのじゃ!?」
「ん〜。村に連れて行ってやろうと思うんだけど,村の場所が分からないんじゃな」
「やっぱそうか。まあ余に任せろ」
「任せろって何か良いアイディアがあるのか?」
「明日になれば分かる。とにかく今日はもう寝るのじゃ。おやすみ」
「おやすみ」
朝になり,ライムが朝食を用意してくれ,皆で朝食を頂く。
「カナデとクロエ! それとライムありがとうな! オイラはここでお別れだよ! 料理あがとうな美味しかったぜ」
「待つのじゃロイ」
クロエがそう言い,ロイの脇の下を持つと,空へと飛んだ。
「おああああああああああ」
ロイの悲鳴が聞こえた。
「おおおおお。クロエのやつすげ〜勢いで飛んでいったけどどうするんだ?」
俺とライムはクロエの帰りを待った。
しばらくするとクロエをロイが戻ってきた。
「それでどこ行ってたんだよ」
「ロイの村を探してたんじゃ。それで場所が分かったぞ」
「本当か!? じゃあロイを送り届けるか」
「いいのか?」
「いいよいいよ。一人にはしておけないからな。それで結構遠いのか?」
「そんなに遠くはないと思うぞ」
「それじゃあガラダ村に行くか」
俺達はロイを送り届ける事にした。
新たにロイという少年が道中に加わった。最初に会った時から思っていたが,元気な少年だった。口数も多く,何故だかクロエと口では良い勝負をしている。
「え!? クロエがドラゴンだって!? そんな嘘つくなよカナデ」
「ロイお主は何も分かってとらんな! 本当ならお主など一息じゃぞ」
「このちんちくりんが? 嘘だ絶対!」
「ちんちくりんじゃと!? お主こそちんちくりんじゃぞ」
「な〜に子供相手に熱くなってるんだよクロエ」
「こやつが馬鹿にしているくるのがいけないのじゃ」
「カナデ,男のくせしてそんなガリガリで魔物と出会ったらどうするんだ?」
「ガリガリって……クロエが守ってくれるさ」
「え!? 女の子に守ってもらってるの? だせ〜!!」
なんだかロイが居ることで旅が騒がしくなりそうだ。
「そろそろ野営の準備始めるか」
気付くと辺りは赤く夕方になっていた。
「今日はりんご酒を飲むかの〜」
野営の準備をし,食事を用意する。
食事の前から飲んでいたクロエがもう出来上がっていた。
「の〜カナデ〜!! 今日は弾いてくれるじゃろ?」
「分かったから絡むなよ」
俺はクロエが気に入ってくれた曲をヴァイオリンで奏でる。
「おおおおおお。なんだこれ」
「凄いじゃろロイ」
「凄い……」
「カナデもう一回もう一回」
「なんじゃ!? ロイもカナデの音楽が気に入ったのか?」
「ああ。気に入ったぜ」
そんな事を言われて,嫌な気はしない。俺は調子に乗って数曲披露した。
弾いている間に,ロイとクロエは仲良く眠っていた。
なんだかんだ相性がいいのかもしれないと俺は思った。
翌日も同じような一日を過ごした。
「あとどの位で着くんだ?」
「ロイどうなのじゃ??」
「オイラが知るわけないだろ! こんな遠くの村の外に出たなんて初めてだし」
それもそうか。
「明日またクロエ空飛んで,ちょっと確認してみて」
「分かったのじゃ」
次の日,クロエはロイと一緒にまた空を飛んで,村の位置を確認していった。
すぐに戻ってきた。
「すぐ戻ってきたから村はすぐ近くなのか?」
「それもそうなのじゃが……」
ロイはすぐに駆け出した。
俺とクロエは追いかける。
「おいおい! 急にどうしたんだよ」
「村から煙が沢山出ていたんじゃ。何か様子がおかしくてな」
ロイは凄い勢いで走っていく。
「おい……クロエ,もう無理。先にいってロイを助けてやって」
「なんじゃカナデ。わかったぞ……ライム。カナデを頼んだぞ」
「スライムに頼むって……」
ライムがバッグから出てきて,付いてこいと言わんばかりに先導してくれる。
しばらくすると,煙がいくつか出ている場所を見つける。
近づくとガラダ村へようこそという看板がある場所に着いた。
しかし,そのガラダ村の建物や家は全て壊され,燃やされている跡があった。
焦げた臭いが充満している場所を進むと村の中央にクロエとロイが居た。
そこには木が立てられていて
正直俺には刺激が強すぎた。
「おうカナデか……着いた時にはもうこうだったのじゃ」
「ロイの……ロイの家族は??」
「着いてすぐに向かったが,誰もおらんかった」
「これは魔物の仕業なのか?」
「いや! 魔物はこのような事はせん。きっと人間の仕業だと思うのじゃ」
ロイは座って
「森の奥に人間の気配がするが,どうするのじゃ? 行くか?」
「オイラは行くぜ」
ロイが力強く返事をした。
「分かったのじゃ,カナデも行くぞ」
「あ……ああ」
さっきまで馬鹿みたいに会話していた連中とは思えない程,全員無言のまま進んでいく。
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