第8話 〜魚の釣り方〜
また一日ライデンの手伝いを終えると,ローレンツ達と食卓を囲む。
「ローレンツ達に聞きたいんだが……」
今日の出来事と内容,そして俺自身が考えている事を伝えた。
「ん〜カナデの気持ちも分からなくはないがな……難しい問題だな」
「そうねぇ簡単に解決出来るようなものじゃないしね」
「ハルゲンは何かいい案はない?」
俺はハルゲンに意見を求めてみた。
「ある事はあるがの……難しいけど良いか?」
「どんな事?」
「マンドラゴラという植物があってだな,この国でもどこでも重宝されている植物があるんだが,そのマンドラゴラを見つけて栽培すればお金に困る事はなかろう。だが手に入れる事が非常に難しく,具体的な生息地も分かっておらん」
「そんなん無理じゃない!?」
「だから難しいと……だけどマンドラゴラがあればお金で困る事はなかろうて」
「マンドラゴラの生息地とかクロエ知らないのか??」
「知ってるも何も持っておるぞ!!」
「!?!?!?!?!?!?!?!?」
全員が驚いた。
「え!? なんて!?」
クロエはアイテムボックスを漁りだした。
「お〜あったあった。これじゃろ?」
「オエ〜〜〜」
クロエが出したのは頭に葉っぱがついた
「なにこの気持ち悪い植物」
「これがマンドラゴラだ」
「なんでクロエが持ってるんだよ!」
「なんでか忘れたの〜。でも昔に人間からもらったのじゃ。これがあれば助ける事が出来るのじゃろ?? ハルゲンどうなんじゃ??」
「大丈夫であろう。黒竜のクロエの魔力があれば簡単に育てる事が出来る。明日ワシも一緒に行こう」
「本当か!? ありがとう」
ハルゲンと明日教会に行くことにした。
次の日になり,教会へと足を運んだ。シスターのマリさんが出迎えてくれた。
「あれ? カナデさんとクロエさん今日はどうされたんですか? それにこちらの方は?」
「ハッハッハ! このクロエがこの教会を助けに来たのじゃ!」
「???????」
「まあとりあえずは中へ入って説明します」
「という事なんですが,どうでしょうか?」
マリさんに事の説明をした。
「そんな……私達の為にいいんでしょうか?」
「いいんです。俺が決めたことだし,別に無理してる訳でもない。クロエが持ってた,たまたま珍しい植物をここで栽培してほしいって事なんです」
「クロエが持っていたものだし,クロエがそう使いたいからいいんです! クロエそうだろ??」
「カナデの言うとおりじゃ! いいのじゃ!」
「じゃあ早速栽培しよう。ハルゲンどうすればいいんだ?」
「まあワシに任せよ! では外に行くかの」
「マリさんこの辺の庭を耕してもええかの?」
「ええ。構いませんよ」
ハルゲンは持っている杖を使って何やら呪文を唱え始めた。
すると地面が盛り上がり,土が動き出して,あっという間に地面が耕された。
「ほう! ハルゲン中々やるなお主」
「ホッホッホ。まあ少しばかりな。ここにクロエのありったけの魔力を注いではくれまいか?」
「ん? わかったぞ」
クロエは手をかざし畑の土に魔力を込め始めた。
「ハルゲン,なんで魔力を注いでるんだ?」
「マンドラゴラは,魔力が多い土地でしか生息しないみたいなんだ。それもとびっきり濃い場所でしか発見された事がない。だから栽培するには魔力が必要だと思うのだがの〜。きっと上手くはずじゃ」
クロエがありったけの魔力を込めたようだった。
畑の土が何故かキラキラと輝いているように感じる。
「後はマンドラゴラの葉っぱを植えて,毎日水をあげるだけじゃ。マンドラゴラはすぐに育つ植物だから問題も解決出来るじゃろうて」
「地面の中から声が聞こえ始めたら収穫のタイミングなんじゃ。それと収穫する時,地面から抜くときは耳栓をする事。抜かれた時の叫びを人間が近くで聞くと死ぬと言われておるからなぁ」
「気をつけます……本当にありがとうございます」
「いえいえ。お礼はクロエとカナデに言ってあげて下さい。マンドラゴラは冒険者ギルドでも薬師が運営している商店でも普通の商店でも買い取ってくれるじゃろうて。いい値段で取引してくれるからお金の心配はいらなくなるじゃろうて」
「分かりました。カナデさんもクロエさんも本当にありがとうございます」
一段落すると,子供達が現れた。
「クロエのお姉ちゃんだ! 魔法見せて〜」
「おい!! 魔法使いがいるぞ。魔法見せて見せて」
「カナデのおっちゃんまた音楽聞かせてくれよ」
俺達は子供達に捕まり,子供達の相手をすることになった。
ハルゲンとクロエは水魔法や炎魔法を使って魔法を見せていた。
俺はというと,ヴァイオリンで音楽を奏でた。
すっかり子供達のお守りをする羽目になったが,子供達が楽しそうにしているのが何より嬉しかった。
子供達と遊んでいるとあっという間に時間が過ぎていった。
夕方になる前にマリさんと子供達と挨拶を交わし,俺達は教会を後にした。
「子供達は元気じゃったの〜」
「子供は元気が一番じゃろうて」
二人共歳を重ねている為か年寄りっぽい事を言う。
「でもそうだったね! マンドラゴラが上手くいくといいな」
「余が魔力を込めたのじゃ。上手くいくじゃろ」
酒場ライデンに戻るといつにもましてお客が訪れていた。
クロエが伯爵をぶっ飛ばした後,ブライアンが奥さんと娘を店に呼び戻して,奥さんと娘が店の手伝いをしていた。それに前と同じく店員を雇って店を切り盛りしていくようだった。
ローレンツ達の手伝いもそろそろお役御免となるだろう。彼らは元々冒険者でずっと店を手伝う事は出来ない。
こんなに早くこの店が再建出来たのは元々ライデンが人気店だったからだろう。それにブライアンが作る料理は本当に最高に美味しい。
クロエも俺もすっかりこの店のファンになった。来るお客も皆そうなんだろう。
俺は演奏をして店を盛り上がるように努めた。
クロエはいつも通り呑んで酔っ払い始める。いつの間にかクロエは店の名物となりかけていた。酔っ払うと魔法を使って芸を始めるからだ。褒められるとすぐに調子に乗ってどんどん魔法で芸を始める。
俺がピアノで音楽を奏でてることもあってか,噂が広まり,沢山のお客が絶えず来るようになった。
ベロンベロンに酔っ払ったクロエを担いで屋根裏の部屋に連れて行く。
ベッドにクロエを降ろし,俺は椅子に座る。
この世界に来て最初は考える時間すらなく,慌ただしい生活だったが,少し考えると俺はなんでこの世界に来てしまったのか,それに何をしたいのか? とふと考える。
俺が出来る事なんて音楽くらいだ。冒険者なんて出来ない。更にいうとモンスターと戦うなんてもってのほかだ……
それでもさすけさんの手紙に書いてあったように音楽を世の中に広めるのか?
自分でもそれはわからない。だけど,この世界に来てからの俺の演奏は地球に居たときと比べると格段に音が変わった。それはいい音だと俺自身は思っている。
演奏家としてのレベルをさらに高める為にはこの世界をもっと知り,堪能する事で良い演奏が出来るのじゃないか? とそう俺は感じていた。
つまりはクロエと旅に出ようと俺は考えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます