第13話 リヒト逃亡を選ぶ


「胸が垂れている女の子ってどう思う?」


何となく気にしていそうな気はした。


今の京姉はエリクサールで体の全てが治っている。


だから、これは元からだ。


確かに、京姉の胸は垂れている様に見えるが、これは記憶は定かでは無いが釣鐘型とか確かティアドロップと言われる前世では綺麗な胸の代表だった気がする。


「他の子の胸は解らないけど京姉の胸は凄く綺麗だよ」


「そう、嬉しいわ、私、男の人に触られるのが怖かったんだけど…リヒトくんなら大丈夫だと思う…今日から触って良いよ」


そう言うと京姉は俺の手に自分の手を添えて胸へと重ねた。


ふよふよした感触が凄く…心地よく嬉しい。


今迄は俺から何かする事が出来なかった…今日は俺からする事も全部受け入れて貰えて、今まで以上に…幸せに包まれた気がする。


◆◆◆


月明かりが京姉の白さを際立たせる…白い髪を照らして、凄く神秘的に見える。


まるでかぐや姫みたいだ…


「どうしたの…そんなに見つめて…」


「京姉…凄く綺麗だ…」


「ありがとう…」


はにかむ笑顔は俺が好きで好きで溜まらなかった京姉だ。


そのままコテンと京姉が顔を俺の胸にうずめてきた。


こんな只の日常が凄く幸せに感じる。


「それでリヒトくん、これからどうするの…」


「それは京姉に相談して決めるつもりだけど…俺だけの考えなら…旅に出ようと思っている」


「旅?」


「うん、もう実家の家も土地も手放したし、何より京姉も俺もあの村には良い思い出がないからね…遠くに行こうと思う」


「遠く?」


「聖教国を越えて帝国領、そこまでは最低進んで、其処から先は2人の安住の地を見つける…そんな感じに考えているんだけど、どうかな?」


「それはこの国を出ていくって事?」


「うん…もしカイト達勇者が負けて魔族との戦争が拡大すれば王国は戦場になる」


「それって大変なんじゃないの?」


国が亡べば大変。


この世界の人間はそう考えるけど…俺はそう思わない。


俺が居た世界では、国どおしが戦争しても関わらない国の人間は平和に普通に暮らしていた。


対岸の火事なんて気にしない。


だから、俺は王国を捨てる。


それだけで、もう魔族と関わらないで済む。


勇者が勝てば問題ない…死んでも王国が戦うだろう…


王国を倒しても次は聖教国と戦い倒さないと魔族は帝国にはたどり着かない。


幾つもの国との連戦連勝は難しい。


多分、帝国につく頃には俺達は寿命で死んでいる。


つまり、帝国から先に行けば、俺達の代はまず安全だ。


「土地を持っていたり財産がある人は大変だよね?家や畑、お店…領地を守る為に必死なんじゃないかな?だけど俺達は持ってないから関わる必要は無い、だからこそ、安全な所で二人でゆっくり出来る場所をさがしたい…駄目かな?」


「ううん、駄目じゃない…良いねそれ…うん私も賛成…よく考えたら私、旅もした事ないし…楽しそうだね賛成」


「それじゃ、そうしよう」


俺は酷い奴なのかも知れない。


カイト達はどうせ勝てない。


そう思っている。


『ちゃんと見ていた』


努力もしないで女とイチャつく勇者。


誰の言う事も聞かないワンマン勇者…優秀ならそれで構わないが、決して優秀じゃない。


勤勉でなく、努力もしない。


それに進言も出来なくただ従うだけの三職。


前世で言う所のアイドルの追っかけみたいだ。


ジョブは凄いが努力して無いからスキルが少ない。


勝てるかどうか身近に居ながら『見定めた』


余程、心を入れ替えなければ、魔王はおろか幹部にも勝てない。


何が『凱旋』だ。


あれは詭弁だ。


死ぬような未来しかない…


俺にとっては幼馴染だけど所詮は顔見しりなだけ…気になどならない。


ちゃんと警告はした。


だが、努力をしなかったのはあいつ等だ。


『あとは知らない』


「うん」


「これからは美味しいご飯を食べて、ちょっと贅沢な旅をして楽しみながら南を目指していこう…きっと楽しいよ」


「リヒトくんと一緒なら…それだけで楽しい…それに美味しい物まで加わったら…うん、最高…」


「それじゃ、今日は外食して明日には旅に出ようか」


「うん」


俺が守りたいのは京姉だけだ。

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