第9話 京子SIDE ただ一人の味方


体を重ねて解ったよ…


リヒトくんの体は傷だらけだった。


背中は綺麗なのに胸やお腹には沢山の傷跡が沢山あった。


手はゴツゴツしていてタコが出来ていた。


小さいリヒトくんに私を助ける力なんて無かった。


あそこで私を連れて逃げても子供だから、何も意味がない。


ただ一緒に死ぬ…それしか無い。


それでもきっと、嬉しかったのかも知れない。


だけど、リヒトくんはそれ以上の事をしてくれた…


勇者でもない、剣聖でもない…そんな子がS級になるのがどれ程大変だったんだろう…多分リヒトくんが私を助けるにはそれしか無かった。


だから…頑張ってくれたんだ。


戦って、戦って…多分最短で駆けつけてくれた。


よく見たら装備も傷だらけでボロボロ、服だって穴だらけ。


こんな私の為に…


それなのに…私は責めちゃった…


他の人とは違う『この世界でたった1人の味方だったのに』


私は地獄で生きてきたけど…リヒトくんは『自分から地獄に飛び込んでくれた』んだ。


本当に馬鹿だよ…


金貨30枚も有れば奴隷商に行けば、綺麗な奴隷が買えるよ…


月に銀貨3枚も騙し取られて…それがあれば美味しい物を食べられるよ…


それを全部捨てて選んだのが…私…


昔からそうだった…リヒトくんだけは何時も味方だった。


八つ当たりだよね…


私の事が好きなら、きっとあれを見ていたリヒトくんだって辛かった筈だ。


リヒトくんだって…男の子だから…きっと『そう言う事をしたい時だってあった筈だ』…私は便器みたいな扱いだから…抱く気になればリヒトくんだって抱けた筈だ…だけどリヒトくんはしなかった…


ただ一人、ちゃんと人として扱ってくれたんだ…


味方なんて誰も居ない…男も女もクズだらけ…


そう思っていたのに…


死にたくても、死ぬのが怖くて死ねなかった…


弱くてゴミみたいな私…


自分では死ねない…


だけど、いつ死んでも良い…そう思っていたのに…今は死にたくない。


リヒトくんの傍で暮らせるなら…後は要らない…


だけど、明日からどうしよう…今日は誤魔化せた。


だけど…私には…まだリヒトくんも知らない、秘密がある。


大好きだから…本当に愛しているから…知られたくないよ…

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