醜穢転生~転生してもチート能力なんぞ無く、むしろ最弱のゴブリンだったんだがここから入れる保険はありますか?~

唱対夢

第一章 生ききれ

招かれざる放浪者



「きゃああああああ!!誰か、誰かぁ!ゴブリンが!」


 目を開けて開口一番、俺が聞いた言葉がこれだ。


 うるさい。

 何を騒いでいるのか。

 甲高い女の声に顔を顰めて、俺は顔を上げた。


「ひぃ!こっちを向いたわ!誰か村の駐屯兵を呼んでよ!」


 どうにも俺は見覚えのない森の中にいるようで、少し離れた場所には腰を抜かした間抜けな女がいた。

 コスプレでもしているのか、真っ赤な髪に見た事もない、ダサい服を着ている。

 なんかこう、どこぞの西洋の村で牛乳でも注いでいそうな雰囲気だ。

 しばらく女と目が合ったまま呆けていると、森の木々が揺れて誰かが走ってくる音が聞こえた。


「アァ…ア?」


 寝惚けた頭でも、女が俺を見て驚いている事はわかった。

 だから声をかけようとして、獣が唸るような音が自分の口から漏れる。

 困惑しながら目ヤニを取ろうと顔の間に手を持ってきて、その異様を理解した。


「アァァァァ!?」


 俺の手は、人間のそれではなかった。

 緑の肌に、蜥蜴のような鱗。鳥のように伸びきった爪と、四本しかない指。おまけの驚いてあげた自分の声はやはり、獣の金切声だった。


「きゃああああああ!」


 俺が威嚇をしたとでも思ったのか、女が襲われているかのような悲鳴をあげた。

 その瞬間、森の奥から風を切る音が響き渡り、一本の矢が俺の肩を貫いた。


「アッギィ!?」


 痛みもさることながら、なんだこの情けない声は。

 こんなの俺の声じゃない!


「ゴブリンを発見!一匹だ、すぐに駆除する!」


 刺さった矢から顔を上げると、二人の皮鎧を着た男が矢を弓に番えながら俺を睨んでいるのが見えた。

 意味が分からない。なんだこの状況は。このやべーコスプレ集団はなんだ?完全に傷害事件なんだが。

 だが、四の五の言っている時間はない。

 もう既に男たちは俺に弓矢を向けている。

 冗談じゃない、こんな意味不明な奴らに殺されてたまるか。


「アァァァ!!」


 眠たい体を無理やり起こし、俺は必死に背を向けて逃げ出す。

 しかし、次々に矢は放たれ、俺の横を通過していく。

 あいつら本気だ。本気で俺を殺す気だ。


「ギィ…ヒギィ!」


 矢が俺のケツを貫いた。

 いてぇ。けど、咄嗟にあげてしまったこの豚みたいな悲鳴の方が、恥ずかしくて死にそうだ。

 走りながら、自分の視界がやけに低い事に気づく。


 何となく、今自分がどういう状況なのかを察しながらも、俺は現実を受け入れまいと森を走り抜けた。




────────────

Race:ロー・ゴブリン

Name:無し

Level:1

Status:

HP(3/10) MP(1/1) SP(2/2)

Attack(1) Defense(1) Speed(3)

Critical(10) Luck(2) Skill(1)


《種族スキル》

──

《通常スキル》

──

《固有スキル》

──

《Extraスキル》

──

《称号》

──


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