第55話
昨日の現場を見ていた・・・いや、いつも私が馬車に乗り込むまで見送ってくれるチェルシー達に登校するなり揶揄われた。
「ヴィーの傍にいると楽しいわ~」
「ソルト様もまだ幼いのにしっかり女でしたわね」
「昨日、あれからも彼女固まったまま動かなくてね、ソルト家の侍女が抱きかかえて帰って行ったのよ」
ジュリア、アリス、マーリン・・・そう、楽しかったのね。私は疲れていたのに・・・
「あれは顔の良い男が好きなだけだな。ついでに年上好き・・・でも趣味は悪くないな」
うんうんと分かったふうに頷くチェルシー・・・あなたにも婚約者はいないでしょう?
「今日も来るかしらね?」
やめてくれ~!
あの子なら来るだろうけどね・・・
また我が家の馬車の前でソルト様が仁王立ちしている。
今日は帰りに街に寄り道するからウチの馬車を使う予定だったけれど・・・
「ディハルト様!」
「・・・ご機嫌よう。ソルト様」
「いやですわ。カトリーナとお呼びくださいな」
「・・・そうですか。分かりましたわカトリーナ様」
もうすでにチェルシー達は笑いを耐えているわね。
「今日はリアム様はどちらに居らっしゃっるの?」
いや、顔を赤くしてモジモジするのは可愛いけれど・・・
「仕事に行っておりますが?」
「次はいつお会いできすますかしら?」
「何時とはお約束できませんわ」
「リアム様に会えないと・・・つまんない」
ポツリと呟いた小さな声は聞こえたけれど、昨日と同じ侍女さんに、目配せして馬車に乗り込むことにした。
「では失礼しますわね」
何か言ってくるかと身構えたけれど、彼女、カトリーナ様は何も言わず俯いてソルト家の馬車に乗り込んだ・・・。
まあ、それはいいんだけど・・・
「この学院の門番は仕事をしているの?
貴族とはいえ部外者が学院の敷地内に入るのを止めないのかしら?」
「ヴィー・・・学院長の名前は知っているわよね?」
ん?・・・!!
「もしかしてソルト学院長の身内?」
だからって身内を自由に学院に出入りさせるのはどうかと思うんだけど・・・。
なぜ私は今、初対面の大柄で短い赤髪にキツい赤目のワイルドな美形に壁ドンなるものをされているのか・・・。
マーリン達はおろおろしているし、チェルシーは「副隊長、離れてください!この子はリアム殿の妹ですよ!」って怒鳴っている。
このワイルドな美形が副隊長?
「へえ~あの天才の妹か~」
上から下まで舐めまわすようにニヤニヤして見下ろしてくる副隊長が気持ち悪い。
早く離れてよ!
「君可愛いね名前は?」
「・・・先程は助けていただきありがとうございました」
そうなんだよね。
カフェでお茶をして店から出たところで、ガラの悪そうな3人組の男たちにマーリンがぶつかっちゃって、絡まれていたところを助けてくれたのは有り難かったのは本当。
そこへ女性を侍らしたこの男が出てきた時は、前世の任侠映画に出てきた"若頭"を思い出したわ。
人を見た目で判断してはダメなことは知っているけれど、外見と雰囲気がそんなまさにそんな感じだったのよね。
さっきまで両手に派手な女性を侍らせて、人目もはばからずイチャイチャ歩いていた男。
それが副隊長?
チャラチャラしたこの男が?
お礼を言って、それでお終いかと思ったらイキナリ壁ドン!
今もその女性2人が私を睨んでるんだけど!
「もう行きましょう?」
「まだ子供じゃない」
そうよ!早くこの男を私から引き剥がして連れて行ってよ!
「・・・ま、いいか。リアムの妹なら調べれば名前ぐらいすぐに分かる」
調べるなよ!
そしてニヤニヤして見下ろすのはやめろ!
「また今度な!」
そのウインク必要ないから!
そう言って、また女性2人に腕を組まれ去って行った。
やっと解放された・・・
助けてもらって何だけど、二度と会いたくないわね。
「ヴィー大丈夫?」
「彼は第3騎士団のベニー副隊長だ。腕は確かなんだが女性に手が早いと聞いている。
ヴィーも気をつけるんだよ。
それにこの事はリアム殿の耳にも入れておいた方がいい」
手が早い・・・クズね。
私の一番嫌いなタイプだわ。
「うん、大丈夫。リアム兄様にも伝えるわ」
まさか、この男とすぐにまた会うことになるなんて想像もしていなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます