第34話

私はすぐに治療が必要な外傷もない為、医師に診てもらう前に、先に冷えた体を温めるようにと私の為に準備された客室の浴室に通された。


体の芯まで冷えてしまったからだろう、湯船に浸かっても体が温まらない。

もう、骨の髄まで冷え切っている気がする。

熱いお湯を追加してもらいながら何十分も浸かって漸く体の内部まで温まった。


数人がかりで髪と体を洗ってもらい、髪を乾かせてもらってから用意されていた秋冬用のワンピースに着替えさせてもらって診察を受けた。


足首は熱をもっているし腫れてる・・・

自力で歩くのは無理かな。


「まあ安静にしていたら1週間から10日程で痛みも腫れも引きますよ。痛み止めは出しますがしばらくは学院はお休みされてはどうですか?」


う~ん、確かに私の教室は2階だし、松葉杖で通うとなるとちょっとキツイかな・・・

あの子達も何かしらの処罰はあるだろうけれど、他にもマーガレット王女の信者がいたら今度はもっと面倒なことになりそうだし休んだ方がいいのかも?


先生にお礼を言って、医務室まで連れてきてくれたルイス兄様にまたお姫様抱っこをされて診察室を出た。


「ヴィーが話せるようなら、この後詳しく話を聞かせてもらってもいいかい?」


痛み止めも飲んだし、足首も固定してもらったから大丈夫と返事をして、ルイス兄様に連れてこられたのは王太子殿下の執務室だった。


執務室に入室すると王太子殿下と痛々しく頭に包帯を巻いて少し顔色の悪いドルチアーノ殿下とリアム兄様がいた。


「ドルチアーノ殿下助けていただきありがとうございました。お怪我までさせてしまって申し訳ございません。頭の傷は大丈夫でしょうか?」


ルイス兄様にお姫様抱っこされたまま頭を下げる。

あそこで殿下が来なかったらと思うと・・・


「さっきも言ったけど大丈夫だよ」


「それよりヴィクトリア嬢、足の方は大丈夫かい?」


私のことよりドルチアーノ殿下は頭だよ?

そっちを心配してよ。


「ご心配をお掛けしました。ただの捻挫ですからお気遣いなく」


「まあ、ドルのことは心配しなくていいさ。・・・アレクシスの事は聞いている。アイツは自分が何をやっているのか分かってないようだ」


彼のことなんてどうでもいいのに・・・


「ヴィー本当に大丈夫?話しが終わったら僕が連れて帰るからね」


ソファにルイス兄様とリアム兄様の間に挟まった状態で座ったけれど、2人ともドルチアーノ殿下の怪我を気にした様子もない・・・

お礼ぐらい言ってよ!


「殿下、ヴィーを休ませたいので早く本題に入りましょう」


ルイス兄様に促されて、私は最近の違和感から今日あった事までを彼ら彼女らのセリフも交えそのままを伝えた。


もちろんほくそ笑んでいたマーガレット王女のこともチクってやったわ!


と、ここまでは私も元気だったんだよ。

でも、徐々に頭がガンガンと痛くなり、寒気もしてきて王太子殿下や兄様達の話していることもボーとして頭に入ってこなくなったんだよね。

この寒い中、頭から水を被ったんだから風邪ひいたかも~と思ったことまでは覚えているんだけどね、気付いたら自室のベットの中だった・・・








~ヴィクトリアが意識を失ってリアムと退室したあとの執務室~



「おいルイス!妹ってどこもあんなに可愛いものなのか?」


「前にも言いましたが、うちのヴィーは世界一可愛いですよ。それにうちのヴィーだからあんなに可愛いんです」


(ドルチアーノ無言)


「目を潤ませて泣きそうな顔で『兄様、ヴィー頭が痛いの』ってリアムに抱きついていたぞ」


(ドルチアーノ赤い顔で頷く)


「リアムに頭よしよしされてふにゃ~ってニッコリした顔!すげぇ可愛かった!俺も弟じゃなくて妹が欲しい!」


(ドルチアーノ無言で同意する)


「じゃあアリアナ嬢と娘を作ればいいじゃないですか。父親にとって娘は特別だと言いますからね。それにヴィーは王家には渡しません!」


(ドルチアーノ悔しそうに頷く)


「言われなくてもアリアナとはたくさん子供を作る予定だ!あれを見れば公爵やお前たちが溺愛するのも分かる」


「幼い頃は『に~たまあっこ』って小さな手を私に一生懸命に伸ばす姿がそれはもう可愛くて可愛くて」


「リアムのあんなデレた顔なんて初めて見たぞ」


(ドルチアーノまたも同意の頷き)


「ヴィーが可愛いのは事実ですが、それよりもジョシュア殿下はトライガスの王太子との話し合いは順調に進んでいますかね?」


「ああ、それなら心配ない。あの国王じゃあ話にならないからな」


「それならいいんです。・・・私はあの子を少しでも早く解放してあげたいですからね・・・」

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