第17話
今日から私も2年に上がる。
お父様とルイス兄様は反対したけれど、アレク様のハイアー侯爵家の馬車で一緒に登下校することになった。
登校時はともかく、下校時には王都の街で買い物やカフェにアレク様と2人で寄り道ができるかもしれない。
今までだってリアム兄様が同伴だったけれど友達と放課後に街に繰り出したことだってあった。
今世ではドルチアーノ殿下の婚約者候補だったこともあり家族以外の異性との接触なんて許されなかったのよね。
ドルチアーノ殿下に私の存在を無視し続けられていたにも関わらずだ。
辞退を認められたのだから、好きにしていいよね?
制服のまま放課後デートなんて、前世では彼氏がいた時は普通にやっていたことなのにな。
「ヴィクトリアお嬢様、ハイアー様がお迎えに来られました」
「はい、ではお父様、お母様、ルイス兄様、リアム兄様行って参ります」
「ヴィー、本当に気をつけてくれよ?ヴィーにもしもの事があったら、たとえ相手が友好国の王女だろうと許せそうにないからね」
「ルイス兄様大丈夫ですよ。でも、もしもの時は兄様に助けを求めることを許してくれますか?」
「もちろんいいに決まっているだろ。何もなくてもヴィーの話しなら何時でも聞きたいからね遠慮なく話して」
そう言ってルイス兄様が頭を撫でてくれる。
うちの兄様って世界一のお兄様よね?
ギュッと抱きついて「兄様大好きです」と、「行ってきます」と告げてアレク様の待つエントランスに急いだ。
うお!眩しい・・・
学院の制服を着たアレク様は、本来なら冷たく見える端正な顔を太陽のような眩しい表情に変えて私に笑顔を向けてくれる。
「おはようヴィー。制服姿のヴィーを初めて見るけどすごく似合っているな」
いやいや、それはアレク様のほうでしょ!
「おはようございます。アレク様は制服姿も素敵ですね」
本当、イケメンって何着ても似合うよね。
こんなアレク様が編入してきたら、学院も大騒ぎになるんじゃないかしら?
いや?留学するまでは普通に貴族子息として付き合いもあっただろうし、顔見知りは多いかも?
じゃあ、そこまで騒がれないのかもしれないよね?
・・・忘れていた。
車から降りるなり、注目を集めてしまった。
すっかり忘れていたけれど、あの歓迎パーティーでアレク様が私にプロポーズしたのを結構な数の参加者に目撃されていた事を・・・
でもね?
私もアレク様もフリーなんだよ?
両家の親にも許可を取って会っているからね?
2人でいてもおかしくないんだよ?
「今日は午前で終わりだろ?ヴィーの教室まで迎えに行くから俺が行くまで待っていて」
「じゃあ、掲示板に各学年のクラス分けが張り出されているからこのまま見に行きましょうか?」
ちなみに新入生の入学式は1時間ほど後から始まる。
それまでに2年生、3年生は各クラスで明日からの予定表と、教科書を渡されるぐらいで、入学式に参加したら今日は解散になるんだよね。
(面倒臭いからマーガレット王女とは別のクラスになりますように)
一応叶うかどうか分からないけど、私をこの世界に転生させてくれた神様だろう存在に心の中で拝んでおく。
成績順で上はAクラス~下はDクラスに別れている。
それは高位貴族も下位貴族も平民も関係ないのだ。
リアム兄様が『クラス替えといってもほぼ顔ぶれが変わることもないよ。せいぜい2,3人かな』て教えてくれた。
「俺は3年A組だな。ヴィーは?」
「私もA組ですね。・・・マーガレット王女の名前はA組にはありませんでしたが・・・」
「ヴィーと王女が同じクラスにならなくてよかったよ」
私よりもアレク様はご自分の心配をした方がいいのでは?
マーガレット王女はアレク様狙いでわざわざ留学までしてくるんだよ。
ん?んん?
「アレク様!私のクラスまで迎えに来られると、マーガレット王女に見つかる確率が高くなりますよ?」
「俺は別に気にしないが・・・ヴィーが王女に目を付けられるのは困るな」
いやいや、登下校を一緒にしてたら目を付けられる前に王女の目に入るでしょうよ!
実際マーガレット王女がスカーレット王女の言っていたような女性なら、アレク様を手に入れる為に何かしら私にも言いがかりを付けてくるでしょうね。
「私がアレク様の教室に迎えに行きましょうか?」
アレク様はなんだか納得してなさそうな顔をしていたけれど、しばらくはそれで様子を見ることに決まった。
校舎の入口でアレク様とは別れて教室に入るなりジュリア、アリス、マーリンが目を輝かせて私を囲んだ。
うん、聞きたいことは分かるよ。
あのパーティーで3人とも居たものね。
他のクラスメイトも気にしていない振りしているけれど耳がダンボになっているわよ。
今日は時間に余裕もないから、明日にでも詳しく話すと私が口を開く前に、1年の時も同じクラスだった子息が勢いよく教室に入ってきた。
「おい、トライガスの王女様がこの学院に留学してきたぞ。人集りで見えなかったが、すっごい美少女らしいぞ」
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