幼馴染がアイドルだったから自分もアイドル目指します!!
MINT
第1話 アイドルとの出会い
二年前、僕は都会の喧騒から逃れ、祖父母の住む田舎町に引っ越してきた。広々とした畑や、のどかな風景に満ちたこの町で、僕は平和な毎日を過ごすことができた。
しかし、僕にはひとつだけ問題があった。それは、友達ができなかったことだ。僕は都会での暮らしに慣れていたため、この田舎町での生活に馴染むのに苦労していたのだ。
そんなある日、僕は通りかかったCDショップで、あるアイドルグループのCDを見つけた。その美しいジャケットに心惹かれ、つい手に取ってしまった。
それが、僕の運命を変えるきっかけとなったのだ。「Rainbow Stars」というグループ名で、メンバー全員が女性だった。
リーダーを務めるのは、「野口香織」さんだ。彼女はとても魅力的な人で、彼女の笑顔を見ると元気になるような気がした。
彼女に憧れた僕は、ネット通販を利用してCDを購入した。そして、家にあるパソコンを使って曲を聴いたり、動画サイトでPVを見たりした。すると、いつの間にか彼女に恋をしていたんだ。
それから数日後のこと――。
「えっ? 握手会?」
祖母の家を訪ねていた時のことだった。リビングにいた祖父が、突然こんな話を切り出したのだ。
「そうだよ。今度、うちの町で行われる夏祭りがあるだろう。そこで、お前たち『Rainbow Stars』のメンバーたちと握手ができるイベントが開かれるんだよ!」
祖父は嬉しそうに言った。そんな彼を見て、祖母は呆れたようにため息をつく。
「あなたって人は…………本当にこういうことが好きね」
「いいじゃないか! 俺は若い女の子たちのことが好きなんだ!」
祖父は子供のように目を輝かせて言う。
祖母は苦笑いを浮かべるばかりであった。
「それで、どうなんだい? 翔太郎は、『Rainbow Stars』に会いたいかい?」
「うん、会いたい!」
僕は即答した。
憧れの女性である香織さんに会うことができるかもしれないと思ったからだ。
「よし、決まりだな! それじゃあ、明日の日曜日、みんなで町へ出かけようじゃないか!」
こうして、僕ら家族と親戚一同は、一緒に夏祭りの会場へ向かうことになった。
次の日になり、僕らは電車に乗って、地元から少し離れた町にある大きなショッピングモールへ向かった。会場となる広場に到着すると、すでに大勢の人々が列を作っていた。
「うわぁー、すごい人の数だな」
「ああ、これくらい当然さ。今日のために、俺たちがどれだけ準備してきたと思うんだ」
祖父の言葉を聞きながら、僕は辺りを見渡してみた。様々な屋台が立ち並び、多くの人々が行き交っている。まるでお祭りのような雰囲気があった。
「お兄ちゃん、早く行こうよぉ~」
妹の美羽は、待ちきれない様子で、そわそわし始めていた。
「分かったから、慌てるなって」
僕は妹を落ち着かせると、行列に並ぶことにした。しばらくして順番が回ってくる。まず最初に、メンバーとの対面が始まった。
「こんにちは。野口香織と言います。よろしくお願いします」
目の前に現れた女性は、とても可愛らしい人だった。アイドルらしく、明るい表情をしている。その可憐さに思わず見惚れてしまった。
他のメンバーたちも次々と挨拶をする。
「初めまして。佐藤愛です。これからも応援してくれれば嬉しいな」
「高橋真由美だよ。私も応援してくれると嬉しいな」
彼女たちもそれぞれ個性的な人たちだった。特に、リーダーの香織さんのことは忘れられないだろう。なぜなら、彼女は僕が一目惚れをした相手なのだ。
「あっ、あの、僕の名前は、鈴木翔太郎といいます。応援しています。頑張ってください」
緊張しながら、僕は野口香織に話しかけた。すると、彼女は優しい笑みを見せてくれた。
「ありがとうございます。こちらこそ、応援していただけるとうれしいです」
香織さんは丁寧に答えてくれる。その仕草や言葉遣いは、まさにアイドルそのものといった感じだった。
その後、他のメンバーの方とも握手を交わし、写真撮影も済ませた。握手会が終わると、今度はサイン会が行われた。
僕は香織さんに、自分の名前入りの色紙にサインを書いてもらった。「はい、これで大丈夫ですか?」
「はいっ、ありがとうございました」
僕は感動で胸がいっぱいになった。
まさか、憧れのアイドルである香織さんから、直筆のサインをもらえるとは思わなかったのだ。
「ふぅ、やっと終わったな。次は、いよいよライブだな。翔太郎、楽しみにしていろよ。俺が必ず良い席を確保してやるからな」
「うん、期待しているよ。おじいちゃん」
「任せておきなさい!」
祖父は自信満々の態度で言う。
そして、ライブの時間がやってきた。ステージには、アイドルの皆が登場する。観客たちは歓声を上げながら、彼女たちの登場を待っていた。やがて、音楽が流れ始め、ライブが始まる――はずだった。
翔太郎は、野口香織の顔を見てどこか見覚えのあるようなと疑問に思った。
「あれっ、この人って……もしかして、香織さん!? 」
翔太郎は香織が小学校の幼馴染だということを思い出した。
その後は頭がいっぱいになりライブどころではなくなってしまった。香織は翔太郎が幼馴染だと気づいているのかいないのか……。
翔太郎たちは、香織のライブを最後まで楽しんだ後、ショッピングモールを後にした。帰りの電車に乗り込んだところで、翔太郎はようやく落ち着きを取り戻した。
それから数時間後、翔太郎は自室でベッドの上に寝転びながら、香織のことを考えていた。
――香織さん、綺麗で可愛いかったな。それに、優しかった。
翔太郎は香織のことを思い浮かべるだけで幸せな気分になる。
翔太郎は今まで異性に対して、特別な感情を抱いたことはなかった。だが、香織に対しては違った。彼女を見ると、ドキドキしてしまうし、もっと彼女のことを知りたいと思ってしまう。これがいわゆる恋愛というものなのだろうか。
――でも、どうしてだろう。香織さんが僕のことを好きになってくれるとは思えないんだよなぁ……。
翔太郎は自分の容姿について考える。背が低く、痩せていて、顔立ちも普通だと思う。客観的に見たら、イケメンとは言えないかもしれない。
――まあ、今はそんなことどうでもいいか。
翔太郎は考えることを止めた。
翔太郎は、自分がアイドルになれば、香織が自分のことを推してくれるのではないかと考えた。そこで、彼は自分のことをアピールするために、アイドルの動画をたくさん見たり、アイドルに関する本を読んだりした。
その結果、アイドルという仕事に興味を抱くようになった。
さらに、翔太郎はアイドルに関する情報を集めているうちに、アイドルにはファンとの交流イベントがあることを知った。
翔太郎は考えた。
自分がアイドルとして人気者になれれば、きっと香織さんは自分に興味を持ってくれるはずだ。そうすれば、彼女と話す機会だってあるに違いない。
こうして、翔太郎はアイドルを目指すことを決めた。
アイドルになりたいと思った理由は他にもあった。
それは、アイドル活動を通して、自分の夢を見つけることだ。
アイドルになるために、まず必要なのはオーディションである。
そのため、翔太郎は地元の芸能事務所のオーディションを受けることにした。
翔太郎は、地元の芸能プロダクションが主催するオーディション会場を訪れた。
受付で書類を提出し、待合室に入る。そこには、すでに多くの参加者が集まっていた。
翔太郎は、少し緊張しながらも、椅子に座って待つことにした。
しばらくして、一人の男性が部屋の中に入ってきた。男性はスーツ姿で、年齢は二十代後半くらいに見える。
「こんにちは、私は『Rainbow Stars』のプロデューサーをしている木村と申します。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願い致します」
翔太郎は木村と名乗る男性と挨拶を交わす。
「それでは早速ですけど、今回のオーディションで採用するメンバーを発表しようと思います。合格者は一人だけとなります」
「はい……」
翔太郎は真剣な表情で返事をする。
「合格するのは、私が選ぶ一名のみ。つまり、あなたは不合格ということですね」
「えっ?」
木村の言葉を聞いて、翔太郎は動揺する。
――もしかして、僕は落とされた? でも、何でだ。
理由が分からず戸惑う翔太郎に、木村が言う。
「あなたの履歴書を見ました。あなたはアイドルグループのファンだった。そして、今もアイドルを目指している。でもね、アイドルは甘くないんですよ。残念だけど、アイドルをやるには実力不足ですよ。だから、今回は諦めてください。お疲れ様でした。さようなら」
――嘘……だよな。こんなはずじゃなかったのに……。
翔太郎は目の前の現実を受け入れることができなかった。
その後、どうやって家に帰ったのか覚えていない。
気がついた時には、自室のベッドの上で仰向けになっていた。
それから数日後のこと……。
翔太郎は地元の商店街に来ていた。
この日もいつものように、本屋やCDショップを回り、雑貨店や文房具店で買い物をした。
そして、最後にスーパーで食材を買い、自宅へと向かっていた。
翔太郎は、ふと足を止める。
――あれ? あの人、どこかで見たような……。
そこには、見覚えのある女性が立っていた。
女性は、白を基調としたワンピースを着ており、背中まで伸びた黒髪が特徴的だ。
――間違いない。Rainbow Starsの野口香織さんだ。
香織の顔立ちはとても整っており、アイドルらしい清楚な雰囲気を醸し出している。
翔太郎の心臓の鼓動が激しくなる。
彼は、香織のことをアイドルとして応援していたし、彼女のことを尊敬もしていたが、実際に会って話すとなると緊張してしまう。
だが、せっかくの機会なので、勇気を出して話しかけることにした。
香織は翔太郎の存在に気付き、彼の方へ駆け寄ってきた。
翔太郎は、思わず後ずさりをする。
香織は、翔太郎の顔をじっと見つめると、にっこりと微笑み
「こんにちは。お久しぶりです。翔太郎くん。元気にしてましたか?」と言った。
翔太郎は、戸惑いながらも返事する。
「えっと……、はい。何とかやっています。香織さんの方は、どうですか?」
「私も大丈夫ですよ。翔太郎君は、アイドルになる夢を追いかけていますか?」
香織は、優しい口調で問いかけた。
翔太郎が答える前に、香織は言葉を続ける。
まるで、翔太郎の心を見透かしているかのように。
香織は、さらに質問を投げかける。
その表情からは真剣さが伝わってくる。翔太郎の胸の高鳴りはさらに激しくなった。
香織は、翔太郎の目を見て、はっきりとこう告げた。
――あなたがアイドルを目指す気持ちが本物であるならば、私は全力でサポートします。
香織の言葉を聞いた瞬間、翔太郎は、自分が田舎で暮らしている理由を思い出した。
自分はアイドルになりたいという夢を諦めていない。
むしろ、その思いは強くなっている。
だからこそ、翔太郎は自分の夢を追うために、田舎で暮らすことを決めたのだ。
翔太郎は、自分の心の中で、アイドルになるという夢を叶えたいという強い想いが再燃するのを感じた。
それと同時に、香織に対する憧れの感情も芽生えた。
翔太郎は、香織に対して自分の夢を語ろうと思い、口を開いた。
だが、それよりも先に香織が言葉を紡ぐ。
香織は、翔太郎の夢を応援すると言いながら、彼の手を握った。
翔太郎は、突然の出来事に戸惑う。
香織は、そんな彼に向かって優しく語りかけた。
翔太郎の手を握る香織の手に力がこもり、二人はしばらくの間、無言で向かい合う。
翔太郎にとって、香織と過ごした時間はほんの数秒に過ぎなかっただろう。
だが、翔太郎には、香織と過ごす時間がとても長く感じられた。
やがて、香織は彼の手を離すと、
――これからも応援していますよ。
と言って、その場から去っていった。
翔太郎は、香織の姿が見えなくなるまで、ずっと彼女を見送った。
――いつか、必ず夢を叶えてみせる。
翔太郎は、そう心に誓った。
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