じばくばなし

澤ノブワレ

 長月 某日


見惚れていた


見惚れて、仕舞っていた


血煙舞う中、少女は宙を駆け回っていた


白銀の髪が風をはらみ、鬢に一筋の黒髪が揺れる



少女は楽しそうに


それはそれは愉しそうに


自らの使役する一対の腕をして


凶暴で、冷酷で、あまりにも美しい光景を描く



そして全てが終わった時


は姿を消していた



その影を追おうとした俺は


少女の小さな手に引き留められた


少女が言う。




「さあ、シャカイフッキのお時間であります!」




次の瞬間、体が宙に浮き、俺は散々に夜空を引きずり回された。訳も分からぬまま、朦朧とする意識は混濁を極め、やがて遠のいた。




そして次に目が覚めたとき、俺は謎の事務所に放り込まれていた。

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