第23話 特殊魔法Lovers〜殺せ、いっそ私を殺してくれ!!!!!

邸内の使用人に荷物を運んで案内して貰った部屋は

私を溺愛していた我が公爵家の

私の部屋と比べても遜色はなく


非常に広い部屋で窓からふんだんに優しい陽の光が差す

とても素晴らしい部屋だった


手荷物と馬車につまれた小物類を

うちの公爵家から連れて来た従者にも手伝ってもらいながら

せっせと部屋にセットして貰っていた


私も初めの頃は手伝おうとしていたのだが

何せ魅惑の豊満バディが邪魔なのと

階段を登るのでさえ苦労する可憐な私は

どうやらお引越しの邪魔であったので

今はちょこんと部屋の椅子に座り、

たまにサクラさんから話しかけて来た事に答えて

多少のこだわりがある配置にして貰っていた。


しばらくすると、

キラキラと光りながら私の周りを妖精のリアルちゃんが飛び回って

話しかけて来た

お願いした公爵夫人の容態を見て来てくれたらしい


『大変よ、リーナ!』

『どうしたの?』

いつもフワッとしているリアルちゃんが

ただならぬ様子で話しかけて来たので私も焦った


『公爵夫人の様子が予想以上に酷くて今夜持たないかも知れない』

『そんなに酷い病気なの?』

『病気事態は、リーナも良く知っているインフルエンザウィルみたいなものね

だけど衰弱も酷くて、この家の医者が処方した薬草も全く効いてないの

リーナの魔法なら完治は出来ないけど容態はかなり良くなるよ』

『教えて』

『まずは創造魔法で作ったあのブースト魔法を唱えて今使える魔法を一段階上げるの

そのあと生活魔法のクリーンを夫人にかけて体内のウィルスをある程度減らして

最後にミドルヒールを唱えるだけ


余力があれば、もう一度ブースト魔法をかけて

私がリーナの家からせっせと集めた薬草が格納庫に入っているから

ポーションを作ってあげればなおいいけど』


『分かったわ、ブースト魔法をとなえ・・・

うん?ブースト魔法?

あれかあの小っ恥ずかしい魔法をいきなり唱えるのか?

・・・背に腹はかえられないよね・・・』


私は覚悟を決めた


「サクラさん、ジーク様と話しがしたいの、呼んできて貰えないかしら」

「リーナお嬢様、今あまり関わりにならない方が良いかと思うのですが・・・」

「・・・お願い」

「分かりました」

あんな可愛い娘たちに哀しい思いをさせたく無い

その後私の扱いがどうなろうと構わない


しばらくするとサクラさんに連れられたジーク様が

少し訝しげなお顔していたが

お母様が心配でそれどころでは無いはずなのに

私の前に来てくれた


「お母様がご心配なところ申し訳ありません

ですがあまり猶予がないのです。


端的に申し上げます。

私はご存知かと思いますが、聖女です。

このままだとジーク様のお母様が危険だと感じました。


私にジーク様のお母様の治療をさせて下さい。

お願いしたい事は、お母様の横に私を連れていって左手を握って下さい。

その後に私が自身への呪文一つ、

ジーク様のお母様に二つ治療魔法をかけますので許容して下さい

また私自身に魔法をかける時に呪文が不愉快かも知れませんが害はありません。


もし、それらの行為でジーク様のお母様に万一の事があったら

私を殺して頂いて結構です」


「分かりました、ご案内します」

ジーク様は私に疑問の言葉一つかけずに

私を信じて、手を取って案内してくれた。


「あの、手を握って頂くのは治療の時だけでも良いのですが」

私はこんな時なのに顔を赤めてしまった

白豚令嬢ではなくピンク豚令嬢である


「いえ、場所もご存知無いでしょうし

急いだ方が良いと思いますので、このままで」

「う、よろしくお願いします」

そのままジーク様のお母様の部屋に入ると

部屋の中にジーク様とよく似た美しい女性が

息をするのも苦しそうにベッドに横たわっていた。


横で立っているのは恐らくかかりつけのお医者様であろう。

少し怪しげな顔で私を見ている。


言いたい事も分かるし、気持も分かる

だが、今すぐに命に関わる訳ではないが

刻一刻と体力は削られて行くのだ

どうせ説明した所で分からないだろうから

私は治療にとりかかった


私がジーク様を見て頷くと

ジーク様は私を信じてお母様の横に私を近づけてくれた。


さて、覚悟を決めますか

私はまず、ジーク様に握られている手と反対に手を胸に当て、

呪文を口にした。


「Lovers」

呪文を唱えると私の体の周りには金色に発光した

私の琥珀色の瞳もお兄様以上に金色になり淡く輝いている

第一段階終了


私は次にお母様に向けて手を差し伸べた

「クリーン」

お母様は一瞬緑の光に包まれた

第二段階終了


「ミドルヒール」

次にお母様は一瞬金色の光に包まれた

最終段階終了

手応えは確実にあった


『リーナおめでとう成功よ』


リアルちゃんに教えて貰って確信を持った私は

お母様の横で心配そうに見ているお医者様っぽい人に頷いた。


その人はしばらくお母様の診察をして口を開いた


「・・・奇跡だ

完治した訳では無いですが、これで問題はありません。

後は無理しないで横になって体力を回復してください。」


部屋にいた人たちが、ホッとした雰囲気に変わった


「ありがとう」

ジーク様の優しい笑顔につられて

私も笑顔で頷いた


女神様ありがとう

私をこの世界に連れて来てくれて

何故か分からないが私は女神様に感謝した

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る