第19話:三人会議
第19話:三人会議
どんな配信がいいのかな。
色々想像しながらベッドに入ったからか、なかなか寝付けなかった。
ノートくんにも顔色が悪いって言われたから、よっぽどなのかも。
「体調悪いなら早退しろよ?」
「大丈夫……寝不足なだけ……昼休み……寝る……」
「それでもだ! キツかったらちゃんと言うように!」
「うん……ありがとう……」
宣言通りお昼ご飯を早々に食べ終えて眠りに……。
つこうと思ったらブランケットや椅子を貸してくれて、ここに横になってって。
机に突っ伏そうと思ったんだけど、至れり尽くせりになっちゃった。
「VIP待遇だな」
「逆に……落ち着かない……。 でも……みんなの優しさ……だから……」
「そうだな、ありがたいことだ」
「とりあえず……仮眠……するね……」
「おう、おやすみ」
「おやすみ……なさ……い……」
ブランケットの温かさだけじゃない。
みんなの優しさが心をポカポカさせる。
申し訳なさより嬉しさの方が強くて、直ぐに夢の世界に旅立った……。
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「寝たみたいだね~」
「よっぽど眠かったのね、ブランケット持ってて良かったわ」
「なんで持ってたの~?」
「冷え症なのよ。 図書室とか冷房強めだし夏でも持ってきてるの」
「いいんちょーグッジョブ!」
「お、委員長ありがとな。 寝不足で顔色悪かったし、本当に助かったよ」
「あれくらいお易い御用よ。 それより、なんで寝不足かは知ってるの?」
「あー、新しい事を始めようとしてるからだと思う。 色々考えて寝れなかったんだろ、たぶんな」
「それは変なことじゃないでしょうね? 学級委員として、クラスメイトが犯罪に手を染めるなんて許さないわよ?」
私は学級委員を任された
高校生になったら将来のために責任ある立場を経験したくて立候補した。
まあ、根っから真面目かと言われると、正直そうでもない。
家ではけっこうダラダラしてるし、最近はソファに横になってネット小説を読むのが好き。
だから真面目そうな雰囲気を出してはいるけど、ポーズよポーズ。
はやく帰って小山内くんの声真似を聞きながらダラダラしたいわ。
影響されてちょっとだけアニメも見始めたんだけど、ハマりそう。
「犯罪にはかんけーないしー? ライブ配信やるだけだしー?」
「……なんですって?」
「だからー、ノックで初めてライブ配信やるからー、どうやろーって考えちゃったんでしょー?」
「楽しみが増えるわけね……うふふ」
なんということでしょう。
学校や投稿だけじゃなくて、家でも生小山内くんを楽しめるだなんて!
なんでも、田ノ上くんと新宿さんも関わるんだとか。
ちょっと羨ましいけど、私はあくまで見る側に徹するわ……だってファンだから!
放課後に会議をするらしいから、あまり根を詰めすぎないようにだけ伝えた。
明日も寝不足になんてなってたら、好きな事とはいえ可哀想だし。
弱ってる姿を見て喜ぶ趣味はないし、ふんわり笑顔で過ごしてほしいものね。
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仮眠して頭もスッキリした、みんなのお陰だね。
午後の授業も滞りなく終わって迎えた放課後。
他のクラスメイトが疎らになったくらいにネコちゃんが後ろの席に座った。
「で、どうするんだ? 寝れないほど考え込んでたみたいだけど」
「うん……とりあえず……夏休み入ってすぐに……やろうかな……って……」
「内容はー?」
「リクエストは……決定かな……? あとは……ギモーブの返事……とか……?」
「ギモーブならプイッタアカウントは必要だな、やったことあるか?」
「まったく……ない……」
「ならあーしがやるよー? こーほーたんとーってやつ」
「ならプイッタとギモーブ管理、配信中の読み上げはネコちゃんさんが担当だな」
「すごい……会議っぽい……」
「何やってると思ってたんだよ……」
ノートくんはすごい。
スムーズに決まっていく。
「ネコちゃんさんは広報担当だから、プイートするだけで返信はしなくていいよ」
「りょーかい」
「DMに何か来たら全部俺に回してくれ。 当然相談はするが、コラボ依頼とかの交渉系は俺が処理を担当するからさ」
「ネコちゃんが……広報担当……ノートくんが……交渉担当……」
「当然クッキーくんは配信担当な! 担当っていうか配信者だしな!」
「そだねーwww 配信するのは正ちゃんの部屋だけどー、机とかー椅子とかー準備しないとねー」
「それは……家族に……相談する……」
「そうだな。 お金の問題もあるし、家具を増やすことになるしな」
「うん……勝手には……無理だから……ちゃんと頼る……」
それから配信時間とか色々決めて、今日は解散した。
思ったよりもトントン拍子に決まってよかった。
ノートくんは頼りになるなあ。
…………
……
「ただいまー」
「おかえり……」
「おかえりー」
家に帰ってしばらくしたらお母さんが帰ってきた。
お父さんはまだ少し仕事があるみたい。
今日は三人で晩ごはん。
「正ちゃん? ソワソワしてどうしたの?」
「え……? うん……あのさ……投稿だけじゃなくて……配信もやろうかな……って……」
「お兄ちゃんライブ配信やるの?」
「うん……ノートくんたちと……。 ……配信用の……机と椅子欲しい……なって……」
「あら、物を欲しがるなんて珍しいわね! 当然いいわよ♪ ただし条件があるわ」
「条件……」
「配信は優さんと私が居る日曜日以外は絶対にやっちゃダメ。 何かあっても会社に居たら対応できないし、不安なままじゃ仕事に手がつかないわ?」
「わかった……」
「その代わり、飲み物とかは用意してあげるから安心なさい! 家族みんなサポーターだと思って頼っていいんだからね♪」
「ありがとう……。 あと優香……」
「なに?」
「絵が欲しい……配信に必要なの……全部……」
「え? いいの?」
「うん……アイコンとか……待機画面とか……色々全部……」
「やる! 任せて!」
「ありがとう……お願いね……」
机と椅子はお母さんに任せて、土曜日までに届くようにしてくれるって。
幸いスペースはいっぱいあるから、物が増えるのは良い事だと思う。
ガランとした雰囲気がちょっとだけ気になってたから。
それからお父さんも交えて改めて約束をした。
どういう配信をするかちゃんと説明もして、最初の一回目は見学もするって。
高校生になったとはいえ僕は僕だから、安心したいのかもしれない。
二人用にマイクも増やそうってことになって、土曜日に僕が取りに行く。
ノートくんとネコちゃんも一緒に行って、食事でもしてきなさいって言ってくれた。
何から何までごめんなさい……それと心からありがとう。
次の日、二人にも同じ話をして同意してもらった。
僕だけじゃない以上必要なことだから。
土曜日、三人で秋葉原に行く。
どんな休日になるのか、今からすっごく楽しみだな。
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