閑話:中学修学旅行
閑話:中学修学旅行
中学三年九月、奈良京都への修学旅行。
クラスでも浮いて、班員ともぎこちない僕は行かずに休みたかった。
良い思い出になると思えなかったし、乙女は別のクラスだし。
行きたい理由もないけど、休む名目もない。
ならいっそ離れて歩いて一人旅気分を味わったほうがいいのかな。
それなら良い思い出に変換できそう……かな?
二泊三日の修学旅行。
一日目は奈良公園と法隆寺観光、夜は京都に宿泊。
二日目は京都で金閣寺と銀閣寺を全員観光、その後は班行動で体験学習。
三日目は朝から班行動で、夕方にホテル前集合後新幹線で学校へ。
といった感じの日程。
体験学習は二種類を出発前に予め決めて先生に報告、現地で体験になる。
僕たちの班は、数珠作り体験と京焼絵付け体験にした。
物が手元に残るのにしたかったし、ちょうど良かったかも。
三日目の自由班行動は、源氏物語縁の地を周ることになった。
班員の半分が読書好きで、半ば強引に押し切られた感じ。
何を見に行くかはお楽しみだよって言ってたけど、行動計画書はしおりになるんだよね。
それに先生からダメ出しされたら全員で話し合ってねって……ほら言われた。
そんなこんなで迎えた、修学旅行当日朝。
「忘れ物無さそう? 大丈夫?」
「うん……大丈夫……」
「お土産は生八つ橋でお願いね、お兄ちゃん」
「木刀じゃなくて……いいの……?」
「いらないよ! まだダサキーホルダーの方がマシだよ!」
「分かった……」
「気を付けてな」
「うん……行ってきます……」
家族みんなに見送られて、荷物を背負って学校へ。
二泊分に必要な大きな荷物は、全員分昨日学校から送り済だから、身軽で嬉しい。
教室で暫く待つとホームルームが始まった。
その後すぐ校庭に出て校長先生から行ってらっしゃいの挨拶。
簡単な日程を聞いて、注意事項とか禁止事項を聞く。
周りがダレてきた辺りで話が終わって、一路京都へ向かって大移動開始。
電車で東京駅、東京駅から新幹線で京都駅、ホテルにチェックインしたらバスで奈良へ。
バスガイドさんが話してくれることを最前列で聞く。
右手と言われれば右を見て、左手と言われれば左を見て。
説明が始まればガイドさんを見ながらウンウン頷いたりメモしたりした。
ふむふむ、帰ったらお母さんたちに教えなきゃ。
そうこうしている内に奈良公園に到着。
鹿がそこら辺を歩き回ってる景色がすごい不思議な感覚になる。
鹿せんべいをあげたりしながら、奈良公園内を見学開始。
東大寺・興福寺・春日大社・国立博物館、見るところはいっぱいあった。
時間いっぱいまで見学をして再びバスに集合、法隆寺に大移動。
法隆寺では少し自由に回れる時間があったから、バスガイドさんと先生と三人で
法隆寺善住院に建てられて、明治時代に今の場所に移設された歴史のあるお茶屋さん。
庭園では季節の変化が楽しめるらしいから、また別の季節に来てみたいな。
残りの見学が終わったらバスに乗ってホテルに向かう。
その間もバスガイドさんが右手左手と説明してくれたからメモメモ。
ホテルに着いたら一旦部屋に行って荷物を置いて、食堂でみんなで和食ビュッフェ。
晩ごはんの後は温泉に入ってから寝るまで自由時間、なんだけど……。
僕の外見で男湯はどうなんだ、とか体は男なんだから女湯はダメだろう、とか。
先生たちが話し合って、男の先生が付き添って僕と他生徒のトラブルを防ぐことに。
お手数おかけして申し訳ないです……。
脱衣所で先生と服を脱いでいく。
周りではクラスメイトが脱いでるけど、なんか空気がおかしい。
僕はいそいで大きいタオルで脇から下を覆って、先生と浴場に入る。
すごく広くて露天風呂もあって、サウナとか泡風呂とか電気風呂とか、楽しそう。
「小山内~なんで男湯に居るんだ? 女湯行けよ女顔」
「小山内くんは男なんですから、男湯に居るのは当たり前ですよ? 意地悪を言うのは止めなさい」
「げっ! なんで先生が居るんだよ!」
「こういう状況を防ぐために、先生方で話し合った結果です」
「ちっ……ならせめて、その女みたいなタオルの巻き方やめさせてくださーい! 女顔が女巻きとか、他のお客さんが勘違いするし迷惑でーす!」
「ふむ、一理ありますね。 恥ずかしいかもしれませんが、隠すのは最低限にしましょうか」
「は……はい……」
僕はひとまず下半身だけを隠すようにして、頭と体を洗いに移動した。
あまり見られたくないのもあるけど、みんなとの違いを直視したくないのもあった。
僕自身が傷つかないようにする為に隠してたけど、指摘されたらしょうがないか……。
「露天風呂……広い……すごい……」
「そうですね、これだけ広いのはなかなか入れないと思いますよ? よい経験です」
「はい……嬉しいです……」
さすがにお湯に浸かる時はタオルは外さないと。
いそいそと外して綺麗に畳んで岩の上に置いておく。
「おい……アレ……」
「なんだあのチンコ……」
「美少女のちんちん……いいな……」
「ちんちんとか可愛すぎるだろ、あれはモンスターだ」
「俺らはゾウさん……先生はマンモス……小山内はマ○モデウス……」
「マ○モデウス……お前天才かよしっくりきたわ」
「美少女の……あ、やばい……」
「ごくりっ……いいな……」
「おい、絶対何人か性癖ぶっ壊れたぞ、どうすんだよコレ」
なんだか周りがザワザワしてるけど、温泉の方が大事。
どれだけ良かったかお父さんに教えてあげなきゃ。
昔趣味で温泉巡りしてたみたいだし、良い土産話になると思うんだよね。
「ふあああぁぁぁ……きもち……いい……」
「いいですねー、風呂は広く湯は素晴らしく、空は高く星が綺麗、言うことなしです」
「はい……とても……素晴らしいです……はあー……」
「のぼせないようにしてくださいね? 幸せな時間を台無しにしないようにしましょう」
「はい……そうですね……」
じっくり露天風呂を堪能して、ペタペタ足音を鳴らしながら温泉を後にした。
ドライヤーで髪を乾かして、浴衣を着て、牛乳を一気に飲み干す。
先生とはロビーで別れて、一人で部屋に戻って、同室の人を待たずに早々に眠りについた。
その後、二日目三日目と京都観光を楽しんだ。
なんでか知らないけど、一日目のバスガイドさんがずっと付いて来てた。
お仕事は大丈夫か聞いたら大丈夫って言ってたけど、たぶん大丈夫じゃないよね?
でも自然と班から距離を取れたし、嫌な思いも一度もしなくて済んだから良かった。
二日目のお風呂の時はワイワイ楽しかった。
団体のお客さんが居て、小学校低学年以下の女の子が何人か男湯に入ってた。
僕が露天風呂に入るとワラワラ集まってきて、一方的にお喋りを始めて賑やかだ。
腕にしがみついて体を寄せてきたり、腰の辺りに跨ってきたり。
学校のこと、友達と遊んだこと、パパやママの自慢とか愚痴とか、色んな話を聞かされた。
何度か危ない所を擦り付けてる感じがしたけど、頷かないと怒られるから無視しておいた。
三日目は源氏物語縁の地、主に古碑を中心に回って源氏物語ミュージアムも見た。
お土産はガナッシュや落雁や金平糖、定番の生八ツ橋、僕用に新撰組の羽織。
剣に龍が巻きついた、バスガイドさんが選んだダサキーホルダーを優香用に買っておいた。
帰り際にバスガイドさんが迫ってきて、運転手さんと先生が全力で止めてた。
そんな一悶着を経て、なんだかんだと無事にお家に帰りついたのだった。
ダサキーホルダーはちゃんと渡したよ、ぷりぷり怒ってたけどね。
余談だけど、修学旅行以降男子からの意地悪が激減した。
なんでか分からないけど、悪い事じゃないし良い……のかな?
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作者:
主人公の巨根設定をどう出そうか悩んだ末、今の友達とナニの大きさで気まづくさせるよりかは、関わりを持たない過去の事にすればいいのでは? と思いついた閑話になります。
主人公のナニはゾウさんでもマンモスでもありません、マ○モデウスサイズです、よろしくお願いしますw
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