第4話 我々一生懸命探しました、 スタッフ一生懸命探しました
そしておばあちゃん……見つかりましたよ。
「魔王様! 魔王様がお探しのアロエという植物が見つかりました!」
セバッサンが普段よりも興奮気味に報告をしてきた事に驚きました。アロエってそんな興奮するような存在だったっけ? 確かにアロエは万能薬だけどね。
あのセバッサンが柄にもなく興奮しているし、ここはアロエの地位向上のために盛ってみよう。
【ドジっ子スキルが発動します】
「それで、セバッサン例のブツはどこに?」
キマッた! どうよこの重要機密感! イエス! プライスレス!
「やはり……それほどのモノなのですね! 見つかった場所は人族との境にある辺境の村の近くにある森の中でございます」
「行きましょう!」
おばあちゃん、アロエの地位が天元突破してます。もはやジャイアントキリングです! さっそく僕とセバッサン、そしてなぜか一万の大軍を率いて辺境の村へ出発しました。
「あ、あ、あのう、魔王軍の方々とお見受けいたします! 私はこの村の村長をしておるドンクサイと申します。この度はこんな辺境の村へ何の……」
「これはこれは村長さん! 僕は、げふんげふんっ! わ、我は魔王である!」
「ま、魔王様!」
「頭が高い! 魔王様の御前であるぞ!」
威厳は必要だとセバッサンに口が酸っぱくなるほど言われたので魔王感だしてみましたが、村人全員が平伏して震えています。なんか、ごめんなさい。
「こちらは魔王ホソダフトシ様です。本日はこの村の北にある森に魔王様が所望する植物を採取にきました。この一万の兵は今後その植物の守護の為派兵しています」
「あ、あの森に魔王様が欲するような貴重な植物なんて……」
村長さんは困惑しています。アロエの為に一万の兵が守護とか僕も聞いてませんよ? アロエの地位はもはやアーティファクトですね。
「早速ですが、この絵の植物がある場所へ案内しなさい」
「こ、これは! ア、アロイの葉!? ま、魔王様はアロイをご所望なのでございますか?」
「魔王様曰く、これは不老不死の妙薬、そして万能の回復薬との事だ」
うぇ!? 不老不死? そうなんですか? さすが異世界です! なんて言うかぁぁぁぁ! なぜか尾ひれが付いて伝わっているようです。で、でも万能薬というのは間違いではないからセーフ! という事でいいですか?
「ア、アロイにそんな効能が……いや、まさかそんなはずは……」
「なんですか? 魔王様に対し反意でも?」
「めめめめめ滅相もございません!!! あ、案内致します!」
村長さんを先頭にそろぞろと大軍で森の中へ入っていくと、程なくしてアロエの群生地が現れました。
「こ、こちらがアロイでございます……」
「「「「「「おおおおお!!!!」」」」」」
一斉に歓声があがり興奮する魔王軍と微妙な顔をした村長さんの温度差がすごかったです。
「では、魔王様」
「うん」
目の前に広がるアロエは見慣れたあのおばあちゃんのアロエでした。さっそくパキッっと葉を折ってみると、じわ~っと果汁が出てきました。
「これよこれ! は~アロエだ~」
「で、では魔王様! やはりこれは!?」
「うん、アロエだね」
「「「「「「おおおおおお!!!」」」」」」
パチパチパチパチパチ!!!!
アロエに拍手喝采! なんだかもう感極まってやばいです。
アロエの採取が終わると一万の軍勢はその場に留まり、アロエの群生地を囲むように砦が築かれました。そこまで大切にされるとは思いませんでした。これも魔王特権ですかね? 税金の無駄遣いで訴えられたらどうしましょう。
村長と僕とセバッサンと数人の護衛で村まで帰ってきました。建物は冬になるとすきま風が入りそうな貧相なものが多くて心配になったので、魔王様権限で村の補修を指示しました。セバッサンに却下されるかと思ったけど、「それは急務でございますね」と言って許可が簡単にとれたので、この村の現状はセバッサンから見ても悲惨だったんだなあと思いました。
「この村の城塞化も視野に予算を組まなければなりませんな」
「え? 城塞化? そうだよね~確かに冬になると大変だし急務だよね」
「さすが魔王様でございます。全兵力をもって当たらせましょう」
これで冬に凍え死ぬ村人も減るかな!? なんかこの世界に来て初めて魔王らしい事できた気分になりました。これもアロエのおかげですね!
えーん! えーん!
村の視察も終えて一息ついていたら目の前で小さな女の子が転んじゃいました。どうやら膝を擦りむいたようで血が滲んでいました。ここはアロエの出番です! そう擦り傷にはアロエ! それは定説ですよ。
「お嬢ちゃん、足を見せてごらん?」
「ま、魔王様! 何を!?」
「これはね? アロエと言ってね~なんでも治しちゃう魔法のお薬なんだよ~」
「魔王様いけません! 貴重なアロエをそのような下賤の者に使うなど!」
【ドジっ子スキルが発動します】
セバッサンの静止も無視してパキッと折ったアロエの果汁を女の子に塗りたくる。そういえばここは異世界だし魔法とか使えないかな? ふっ! 我としては失念しておったわ! はっはっはっ! なんてね? そんな都合よいことないよね? でも一応……詠唱なんて聞かれたら恥ずかしいし、声を出さずに……癒しをイメージして……ヒール! なんちゃって!
パアアアアアアアアアアア!!!
「え? まじ?」
女の子の傷がみるみる内に塞がり、ついでに古傷なども一気に治してしまいました。魔法使えるじゃん! 異世界最高!
「おおおおお! これがアロエの威力!」
「おい……さっきのアロイの葉だよな?」
「なんか魔王様曰く、アロイは不老不死の妙薬で、万能の回復薬らしいぞ!?」
「はっ? んなわけ……」
「すげえ、あれを貴族に売れば……」
村人達がざわざわして僕の癒しの魔法に驚いているみたいですね。一応? これでも魔王ですからね! えっへん! 女の子も驚いた顔で傷口と全身を見て涙を流してます。
「ありがとうお兄ちゃん!」
「うんうん、気を付けてね」
小さい子の笑顔は嬉しいですねえ。
「魔王様、貴重なアロエをあのように使った理由……ここの村人の反応を見てわかりました。慧眼恐れ入りました」
「ん? みんな驚いてたね! すごいでしょ(僕の魔法)」
「ええ…想像以上の効果でございました(アロエ)」
おばあちゃん、この世界に来てから初めて自分に自信が持てるようになりました。これもアロエのおかげだと思います。やっぱりアロエは万能薬ですね!
数日後、魔王城にて
「魔王様、大変でございます」
「どうしたんですか?」
「人族がアロエの存在に気付き攻め込んできました」
「は?」
えええええぇぇぇぇぇぇぇ! どういう事ぉぉぉぉぉ!!!???
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