14.バイドルSide〜バカ王子のざまぁ〜
「……お主の言い分はよく分かった、バイドル。確かにお主にとっては此度のことは急な話で納得できない部分もあったはず。イーリスを悪く言うつもりはないが、ある程度の立場や身分は線引きをすることも王族として必要だろう」
「ーっ! さすが父上、俺のことを真に理解してくれるのは父上だけです!」
やっぱり最後には同じ男である父上だけが俺の唯一の味方になってくれる。
どうせ今回のことだって、母上とイーリスから口やかましくせっつかれて仕方なく俺の性教育に同意を示したに違いない。
男に寄生して生きるしかないのに、これだから女ってやつは……。
「だがな、そもそもの発端はすべてお主の素行の悪さにあるということを忘れるな。だからこそ儂はあえてメリーヌタを頼ったのだ。だというのにお主は己以外の者、とりわけ異性に対してあまりにも態度が過ぎる。よいか? 王は女性も含めて臣民あってのもの。まして元婚約者からも信頼を得られない愚か者に、どうしてこの国を任せられようか」
「ちっ、父上⁉」
お、おいおい、なんだか雲行きが怪しくなってきやがったぞ⁉
「メリーヌタの報告で少しはお主に改善の兆しが見られたかと期待したが、もはやその腐りきった性根と悪癖は生涯治らぬものと思うに至った! よって第一王子バイドル、今この時よりその王位継承権を剥奪し、去勢処分の後に王宮の地下牢に一生涯幽閉する! 罪人として地下牢の中で
「王位継承権剥奪に去勢処分? さらに一生幽閉まで⁉ そんな、俺という跡継ぎがいなくなったらこの国はどうなるのです父上!」
「心配せずとも代わりなら第二王子であるブランがいる。そうでなくとも貴様がやたらめったらに振り撒いた子種のせいで、今後の王室問題に混迷をきたすことは必定なのだからな!」
まずい、これはまずい、このままだと俺は本当に王子ではなくただの罪人として投獄されることになる。しかも去勢だって? 冗談じゃない!
な、なにか、なにか事態を好転させるいい手はないか――そうだ!
「ま、待ってください父上! この者はまだ俺に教育の成果を試す最終試験が残っていると言っておりました! ゆえに俺の処遇を決めるにはまだ早計でありましょう!」
頭の片隅にこのことを覚えておいて助かった、これなら少しは時間を稼げるだろう。
と、思っていたのだが。
「――もう遅いわ! メリーヌタの言う最終試験とは、貴様がそのまま教育の修了課程をなにごともなく心穏やかに迎えられるかどうかを見定めることだったのだ! だがその結果は火を見るより明らかであろう、なにせ貴様は自由の身になってすぐ
そ、そんな嘘だ、とっくに最終試験が始まり、そして終わっていただと?
なら俺の華やかな将来はどうなる。王になってそれまで以上に数多の女を侍らし、湯水のようにある金で贅の限りを尽くして死の間際まで幸せに暮らす、そんな約束された未来は――?
「衛兵、その愚か者を捕らえ、連行しろ! これ以上婦女たちにそやつの見苦しいものを目にかけさせるな!」
「は!」
父上の一声でやってきた衛兵どもが、俺を再び拘束しようとする。
やめろ触るんじゃねぇ、むさ苦しい衛兵風情が俺の体に触るんじゃねぇよ!
「っ! おい、離せ! くそお前ら、こんなことをしてタダで済むと思っているのかよ⁉ 俺はこの国の第一王子、バイドルなんだぞ!」
「おいジタバタと抵抗するな、大人しくしろ! 王命を拝聴したであろう! 貴様はもう王子ではなくただの重罪人であると!」
「くそう、去勢は嫌だ、去勢は嫌だーっ!」
「なに、ナニを大きくしている⁉ さっさと歩け、この変態が!」
「ぎゃあっ、ケツを叩くなぁ! 俺(を牢獄)にぶち込むんじゃねぇえぇ!」
手足を羽交い締めにされ、自分の意思に反して連れ去られる最中、俺は己の浅はかさと猛り狂う性欲を呪った。
しかし今更後悔したところで、誰も俺に救いの手を差し伸べてはくれない。
「――大丈夫メリーヌタ⁉ ああ死なないで!」
イーリスもまた駆け寄っていくのは俺の方ではなく、メリーヌタのところだった。
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