第12話 カウンセリング②
「そういえば、お前、リアルタイムで映像を送り込むだのなんだのって言ってたな、あのショットガンヒーローがそんなことを?」
「あぁ、妄想だと思ってたが確信ができた」
「はー、お手上げだぞそれ、洗脳とかそういう問題じゃねぇ、あいつ存在自体がそもそも俺たちの理解を超えてるじゃねぇか、対象が人間だからってそうなンとかできるとは俺は…」
後ろに視線を感じる。頭上に視線を感じる。露出した肌に寒気を吹き込まれているような感覚がする。
「あぁ、だが俺の命はそう長くねぇかもしれねぇ……俺が教育者になったのはあくまで子供を助けるためだ、死ぬ前に解決したいんだよ」
電話口からため息が聞こえる。
「相変わらず、自分より他人のことか……お前、命が長くねぇってどういうことだ?」
「奴に狙われてるらしいんだ」
「ショットガンヒーローに?それこそ妄想じゃねぇかと言いてぇが……お前のことだ、その生徒が教えたか?」
「まぁな」
肌に鳥肌が立つ。空いている左手をぐっと握りしめる。
「……お前って、何言っても無駄なんだよ…一度決めたことまげねぇのな………分かった、今からお前ん家行くわ」
「は?」
「多分だが、お前の予想通り、対象が人間だからって同じ理論使えるんだったらな、言葉の反復がキーになってくる、その生徒が普段どういう状況にいるのかとかもっと良く見なくちゃいけねぇし聞かなくちゃいけねんだわ」
「あー…分かった、そうか」
見られている。漠然となにかそう思う。腹に冷たい何かが当たっているような感覚。
「2日後にその生徒ともう1回話すんだが、そこにお前も来てくれ」
「おう、分かった、住所変わってねぇよな?断ろうが今から行くから、ビールあるか?」
「おう」
「よし、ちょっと待ってろ、22時にはつく」
今から大体6時間後か。
「分かった」
「よし、ちゃんと待っておけよ」
電話を切って充電ケーブルに刺す。
寒い。視線を感じ、天井を見る。何もない。後ろから感じる。見る。何もいない。窓から感じる。見る。何もいない。
まるで、内臓に手を入れられてるみたいな気分だ。そういえばこれが恐怖だった。俺は、狙われている。なぜ、俺が狙われるんだ?俺が何をした?
そのうち殺されるかもしれないってことだろ。あんな、リスペクトもくそもねぇ死に方で。嫌だ。それは嫌だ。なんで俺が狙われなくちゃいけんぇんだ。
両手をぐっと、ぐっと握りしめる。たかやまくんをなんとかしてやらないとならねぇ。そう、ただそうなんだ。
怖い。いや違う。たかやんまくんを助けねぇと。怖い。怖い。
違う!!
耳に自分の声が響く。力なく音が壁にしみ込まれていった。
驚いた。俺の言葉がコントロールできないぐらいになってたか。追い込まれていた?相当なもんだ。
……
「補足した」この言葉がカギとなるのか。これを通してたかやまくんの脳みそに強固な繋がりを持った。となれば、解決するための手段とはなんだ?あいつを……ショットガンヒーローを殺すしかねぇのでは。
そうだ、あいつは殺されて当然じゃないか。俺の親も殺して、何人も何人も何人も何人も何人も……あいつは殺人鬼だ!殺されないと、いや殺さないといけない!あれを生かして良いわけがない!
社会もそうだ!あんな奴を容認し、肯定してるような奴らがいるからあんな奴が出てくるんだ!社会が悪いんだよ!社会もぶっ殺さなきゃ解決しねぇ!
皆だ!俺以外、全員が悪いんだ!憎いんだ!ぶ…………
急に携帯が鳴る。
待て。なんだ今のは。
今のが俺の意思?ていうか、俺はなんで玄関の扉を開けようとしてたんだ?しかも、右手に包丁を持ってる。なんだこれは?
大きく深呼吸する。
ちょっと待て。落ち着け。俺は今何をしようとしたんだ?
後ろから視線を感じる。振り返る。何もない。何もいない筈だ。だが、俺にはすぐそこにあのナニカがいる気がしてたまらない。
包丁を洗面台に投げる。
落ち着け。落ち着け。
また、深呼吸をする。
今のが俺の意思か?本当に?なんで、急にあんな過激なことを思いついて、すべてに対して殺意を抱いたんだ?
まさか……今のが発症?
…そうだ、携帯出ないと。
「はい?」
「先生!!大丈夫ですか?」
「もしかして、今の見えてたか?」
「はい!先生が急に壁に向かって何かぶつぶつ言いだしてるところから急に見え始めて……」
あぁ…やっぱりそうか。俺は今発症しかけたんだ。
「大丈夫だ、ちょっと酔ってて心が乱れただけ、心配するな!」
あははと笑う。
なるほど、これか。俺はもしかして潜在的発症者か?いや、だがそんなものは聞いたことがないが……。
もしかして表出してなかっただけか?発症者はこうやって、時折、症状を覚えるが短時間で収まり、最終的に収まらなくなって事件に発展するのか?
いや、それなら…もう自覚者が相談して症状として確認されている筈だ。
…だが、いや、俺が今、妙な怒りと殺意を覚えて何か凶行をしようとしたのは確かだ。つまり、俺は…
頭を抱え、縮こまった。
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