第4話 異世界転生×俺TUEEE×なんか違う

 それはそれとして。


「やあ、久しぶりだな若人よ。『俺TUEEE』という人生は楽しかったか」

「楽しかったけど色々おかしいでしょ!」


 異世界ケリュケイオンでの杖としての生涯を終えた俺は再び戦神オーディンの神殿に戻っていた。壊れた杖の姿では話しにくいからかここでの姿は転生直前の状態に戻っている。


「申し訳ございません、私たちは現代日本の専門用語に疎かったもので……」


 懐かしの聖鳥であるフギンにそう言われたが、確かにあの時オーディンがすぐに納得し過ぎていたような気はしていた。



「今回は正しく生きたつもりなんですが、天国に行けますか?」

「もちろん可能だ。ケリュケイオンは実際に存在する世界で汝は勇者の武器として世界の危機を救ったのだから、十分すぎるほどに正しく人生を終えたと言えるだろう。杖に寿命という概念はないから今回は天寿を全うしたかどうかも関係ないぞ」


 オーディンが満足そうに言うとフギンが注意事項を付け加えた。


「ただ、天国は何も苦しみがない世界ですがトラブルに相当することが何も起きないので退屈な世界ではあるのです。人間としての生涯を経験している者は不満を口にしがちで、中には再度人間に生まれ変わるために天国から出ていく者もいます」

「そうなんですか……」

「特に汝の直近の生涯は魔法とモンスターが存在する刺激的な異世界だ。これから退屈な毎日を過ごすのではかえって後悔するかも知れん」


 杖として生きている時点では天国に行きたくてケリュケイオンを救った訳ではないし、オーディンとフギンの話を聞いた限りでは天国は必ずしも幸せではないようだ。



「では、俺はどうすれば?」

「天国の住民には人間に転生するという選択肢が無条件に与えられています。ただ、単なる住民には転生する権利しかなくこれといって条件は選べません。中には転生した結果悪人になってしまい、次の審判では地獄に落ちてしまう者もいます」


 フギンの説明に驚いているとオーディンが続きを述べた。


「だが、汝はケリュケイオンでの生涯で善行を重ねているから天国に行かずにそのまま人間へと転生すれば前と同じく一つだけ望むものを与えることができる。しかも今回は地上界に戻れると分かった上で選べるのだ。何でも役に立つものを選ぶといい」

「なるほど」


 オーディンの話を聞き、俺はしばらく考えてから答えた。



「分かりました。では、次の人生では俺にチート能力を下さい」

「チート能力? 本当にそれでいいのか」

「もちろんです。今回は魔法もモンスターも存在しない世界なんですからチート能力があれば完璧です」

「そうか、では早速転生に入ろう。神の恵みで幸せな人生を送ってくれ」

「ありがとうございます!」


 オーディンが展開した魔法陣に引き込まれ、俺は再び地上界へと転生していった。


 今回こそはチート能力で、楽で充実した人生を送るのだ。

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