短歌・俳句の作り方と参考にしたい名歌

 前回短歌や俳句の世界の話を受けて、作ってくださる方もいらっしゃって、本当に嬉しい限りです。

 そこで今回は、もう少し踏み込んだテクニック2つと、参考にしたい名歌について。

 この二つを踏まえば、より「っぽい」短歌や俳句になるかも。



【破調】

 俳句は5・7・5、短歌は5・7・5・7・7。

 基本はこの形。ですが、テクニックとして、これを崩すことがあります。それが破調です。

 破調には3つありまして、『字余り』『字足らず』そして、『句またがり』があります。

 字余りや字足らずは恐らくイメージしやすいと思います。1字多かったり、1字足りなかったりです。では、句またがりとは何か?


 これは、「1つの単語が、2句跨ってたりすること」を言います。

 と言っても分かりにくいと思いますので、例えば句またがりを検索すると、芭蕉の


「海暮れて鴨の声ほのかに白し」


 が出てきます。

 これは、「5・5・7」となっています。

 そう。句またがりとは、定型のリズムや句の音に拘らず、「17音の俳句、もしくは31音の短歌に収まってりゃOK」というもの。

 破調は、定型だと緩やかに歌う音を崩すことで、リズムや音を強めるテクニックなのです。これは現代の口語短歌に欠かせない技法となってるそう(Wikipediaより)。

 というわけで、慣れてきたら皆さんも破調にチャレンジ。強く表現したいものを破調で表してみませう。



 ちなみに短歌だと、良寛さんのこの歌があります。


「風は清し月はさやけしいざともに 踊りあかさん 老のなごりに」


 これは字余りですね。初句の「風はきよし」が6音になっています。

 しかしとても良い歌です。詠めば詠むほど、「さわやかな風と清らかで明るい月とともに、踊り明かすぞ! 冥土の土産じゃー!」という、強く楽しいおじいちゃんおばあちゃんたちの感じがしますね。きっと良寛さんは今生きていたらマツケンサンバが好きな人でしょう。





【韻を踏む】

 歌の世界において、古今東西重要視されているもの。ライムとも呼び、ラップには欠かせないものですね。詩を作る人も、この韻を踏む、というのを重視していると思います。私の場合小説でも使う。タイトル作りでも重視したい。

 改めて、「韻を踏む」というのは、違う単語だけど母音が一緒のものがひとつ以上あること、それを一定の位置に並べるテクニックですね。

 今流行りの推しの子のOP「アイドル」も、めちゃくちゃ韻を踏んでおりますので、是非聞いてみてください(アクア、瞼、マリアとか)。


 では、私の好きな歌を。

 これも良寛さんの、


「霞立つながき春の日を子供らと 手まりつきつつ今日も暮らしつ」


 です。

 上の句は「霞(かす『み』)となが『き』、春の日『を』と子供ら『と』」、

 下の句の「手まりつきつ『つ』今日も暮らし『つ』」で、韻を踏んでますね。

 しかしわかりやすく、そして良寛さんの素朴で愛溢れる人物であることが、めちゃくちゃよく分かる歌ですね。子どもを歌う歌を作る人は、素晴らしい人です。山上憶良とか。

 あとは額田王の「あかねさす紫野ゆきしめ野行き 野守は見ずや君が袖振る」ですね。情熱的かつ不倫(額田王は既に帝と結婚してる)の歌なのですが、私にはバスの案内の、「次はー、紫野ー、紫野ー。お降りの方はー、お知らせくださいー」ってアナウンスに聴こえます。すみません黙ります。

 ちなみに紫野は薬草を育ててる場所で、しめ野は「関係者以外立ち入り禁止」って意味です。つまりこいつ(大海人皇子)は、立ち入り禁止の花畑をめっちゃ踏みまくって好きな人(人妻)にブンブン手を振ってるわけです。やばいね。

 




 以上、この二つのテクニックをご紹介しました。

 なんで短歌ばっかり紹介したかって? 高校が選んだ短歌百首を覚えるテストがあったのですが、その教科書的な冊子を見ながら説明してたからです。

 高校の教科書とは素晴らしいですね。ただ、名だたる歌人に対して鑑賞コメントに、「表現にやや無理がある」だの「多少粗大」だの批評するのすげぇなと思います。誰だよこれかいた人。どっちも伊勢物語のモデルとなった愛多き歌人・在原業平に対してのコメントだよ。やべぇよ。




 あと、様々にコメントをいただいたのですが、

「短歌=百人一首」と認知している人に、残念なお知らせです。


 あれは藤原定家っつー偏屈でこだわりの強すぎる人が偉そうに有名歌人の中から最高の一つ(笑)を選んだやつなので、ぶっちゃけ初心者は詠んで楽しくないです。

 私は百人一首アンチであります。何が楽しいんじゃあんなん(コラ)。もっと素直に詠んだやつを選べよと思いました。


 個人的には万葉集など、恋だけではない方が好きです。例えば山上憶良の、


しろがねくがねも玉も何せむに まされる宝子にしかめやも」


 とか、本当に素晴らしい歌です。どんな宝も子には勝らない、という、素直のまま読んだ歌です。

 ただし高校の教科書はこの歌を選んでるくせに、「金とか銀とかを比較対象にしたせいで理屈っぽくなってる。同じ子どもの歌である『瓜食めば』の方が純粋で良かった」と言ってますが。なんやねんこれかいた人。


 あとは、短歌=百人一首だと思ってる人は、近現代の歌にも触れて欲しいです。

 例えば、「君死にたまふことなかれ」で有名な与謝野晶子は、こんな歌を残してます。


「鎌倉やほとけなれど釈迦牟尼しゃかむには 美男におはす夏木立なつこだちかな」


 いやあ、すごいですよね。宗教的存在に対して「美男」っていう度胸と、あの鎌倉の大仏を見て「美男」と言っているという、ダブルの意味で衝撃を受けます。私には鎌倉の大仏はトトロにしか見えません。

 ちなみに大胆不敵なこの歌は、あまりにも衝撃的すぎて、賛美の声も批難の声も強かったらしいです。与謝野晶子、ロック~!


 あと、音的に美しいのは、


「りんてん機、いまこそ響け、うれしくも、 東京版に、雪のふりいづ」


 です。土岐哀果という歌人が、読売新聞社に務めていた時の歌だそうな。なんか詠んでて、ポンペンパンって感じがします(どんな感じだよ)。


 あとは酒好きの歌も時代問わず多いですね。万葉集の大伴旅人とか酒しか歌ってないんじゃない? ってレベルで酒ばっか歌ってます。詳しくは「大伴旅人 酒の讃歌」で検索してください。

 近代だと若山牧水の、


「白玉の歯にしみ通る秋の夜の 酒は静かにのむべかりけり」


 は、孤独と酒がベストマッチして、染み入る人もいるのではないでしょうか。ウイスキー片手にこの歌を読んでみたいです。酒飲めんが。

 和歌の題材は恋だけではないのです。まあ、百人一首も恋じゃない歌はありますが。




 最後に現代短歌!

 こちらは、口語のものが多いです。俵万智の「サラダ記念日」は多くの人が知っていると思います。初心者の方はサラダ記念日を詠みましょう。

 それから、個人的には萩原慎一郎という夭折した歌人を紹介したいのですが、長くなるので今日はこの辺で!!


 あ、私も短歌出しました。全く参考にはならないと思うのですが、「これぐらいテキトーでいいんだ!」と思って創作活動に励んでいただけたら嬉しいです!

https://kakuyomu.jp/works/16817330657093489062

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