4章 ナナ編

第137話 勃起兄貴

 

 カララム王国学園に入学してから1年が過ぎて、今は春休み。


 ヨナンは、初めて、元トップバリュー男爵領が、正式にグラスホッパー伯爵領に変わってから、足を踏み入れる事にしたのだ。


 で、現在は、グラスホッパー伯爵領に向かうキャンピングキッチン荷馬車の中。


『ご主人様……ナナさんと会うの避けてますよね?

 僕、てっきり、ナナさんもグラスホッパー伯爵領に連れてくと思ってたんですけど?』


 窓の外を、ぼんやり眺めてると、鑑定スキルが、突拍子もなく聞いてくる。

 多分、きっと気になってたのだろう。


「お前……俺が平気な顔して、ナナと会える訳ないだろ。

 俺は、ナナが、トップバリュー男爵に犯〇れてる所を見せつけられたりしてたんだぞ!

 そして、その時、助ける事も出来ずに、ただ見てるだけしか出来なかった俺が、どんな顔して、ナナに顔向け出来るって言うんだよ!」


 そう、俺は怖いのだ。ナナを目の前にすると、あの時の事を思い出してしまうのだ。

 そして、癪罪の気持ちで耐えられなくなってしまうのである。


『あの……ご主人様……そんなこと気にしてたんですか……そもそも、今回のナナさんは、トップバリュー男爵の性〇隷になってませんから、ご主人様が贖罪しなくてもいいと思うんですが……』


 鑑定スキルが、最もな事を言ってくる。


「だとしても、俺は、ナナを見ると、トップバリュー男爵に犯〇れてる所を思い出してしまって、どうしても会う事が出来ないんだよ!本当に、自分が不甲斐なさ過ぎて、情けな過ぎて……そして……変態過ぎて……」


 ヨナンは、少しナナの事を考えただけで、ナナがトップバリュー男爵に犯〇れてた場面を思い出してしまい、思わず勃起してしまう自分自身にも、心底幻滅してしまっていたりするのだ。


『これ、完全にトラウマになってしまってますね……』


 鑑定スキルが、勝手に分析する。

 俺だって、ナナに再び会うまで、こんな風に自分がなるとは考えてなかったのだ。

 変に意識すれば、するほど、何故かレ〇プシーンが頭によぎってしまうのである。


「だから、無理なんだって! ナナと面と向かって会う事なんか!

 俺は、変態兄貴なんかになりたくないんだよ!」


 そう。ヨナンは変態兄貴になりたくないのだ。できれば、カッコ良いお兄ちゃんになりたいし。


『確かに、妹さんに会う度に勃起するお兄ちゃんとか、考えるだけでキモイですからね!』


 鑑定スキルが、酷い事を言ってくる。

 俺は、真剣に悩んでいるというのに。


「キモイ言うな! 俺は真剣に悩んでるんだぞ!」


 鑑定スキルは、無神経過ぎる。

 俺だって好きで勃起してしまう訳ではないのだ。

 でも、何故か、ナナを見ると緊張し、顔が真っ赤になってしまうし、股間のテントまで張ってしまうし。

 そもそも、股間がテント張ってる状態で、最愛の妹に会えるかよ!


『だから、ナナさんに、自分が本当のお兄ちゃんだと告白しなかったんですね!

 エリザベスさんとかにも、絶対に言わないでと、口止めしてましたし!』


「言える訳ねーだろ!妹見て、勃起する兄ちゃんなんて!

 俺は、ナナを見ても勃起しなくなって、初めて、俺が実の兄ちゃんだって、ナナに告白するつもりなんだよ!

 それまでは、極力近づかないようにするの!」


『なるほど。だから必死に、ナナさんを1年生に入学させるよう画策したんですね!

 ココノエさんの護衛目的という建前なら、同じ2年生に編入させるのが筋ですもん!

 だけど、同じクラスになってしまうと、勃起してるの、ナナさんに見られちゃうから!』


「ああ! そうだよ! その通りだよ!俺は、いつまでも、尊敬されるお兄ちゃんでありたいんだよ!」


 もう、俺は開き直る。

 妹を見て勃起して、何が悪い!

 別にナナに欲情してる訳ではないのだ。

 ただ、ナナに会うと、ナナがトップバリュー男爵に犯〇れてる場面が、フラッシュバックして、思わず勃起してしまうのであって、その場面を思い出すたびに、トップバリュー男爵を殺してやりたいと思うし。


 というか、ナナと再会したら、益々、トップバリューをぶち殺したくなってきてたりする。


『多分、トップバリュー男爵にリベンジザマーするまで、勃起は治らないんじゃないですか?』


「ああ。サラス帝国が、もしカララム王国にちょっかい出してきたら、陛下に命令されなくても、トップバリュー男爵を見つけ出しボコボコにして、チ○コを切り落としてやる!」


『何もなくても、普通に、サラス帝国に乗りこんで、トップバリュー男爵を捕まえて、ボコボコにしちゃえばいいんじゃないですか?』


「何をするにも、大義名分が必要なんだよ!今回の時間軸では、別に、ナナは、トップバリュー男爵に性〇隷にされた訳じゃないんだからな!

 逆に、俺とグラスホッパー商会が、一方的に、アスカとトップバリュー男爵に、嫌がらせしてるだけだし!」


『言われてみれば、確かにそうですね……まあ、一度、殺し屋を差し向けられた事はありましたが、それ以降は、こっちが一方的にボコボコにしてますからね……』


「そうなんだよ。それで困ってんだよ。なんか嫌がらせでもされて、やり返すなら世間の人も納得するかもしれんけど、俺達って、アスカを退学に追い込んで、しかもAV女優に仕立てあげたんだぞ。

 しかも、トップバリュー領を奪った形になっちゃってるし……」


『う~ん……これは、ご主人様が、勃起を克服する未来は遠いですね……トップバリューのチ○コを切り落とさないと、ご主人様の勃起は治らない訳ですし……』


 鑑定スキルは、真面目に考えてくれている。

 というか、本当に、トップバリュー男爵のチ○コを切れば勃起が治るか謎だけど。

 まあ、思い込む事も大事なのである。


「遠くてもいいんだよ! 変態と思われるくらいなら!

 ナナを、目の届く所に置いてるから、何も問題無いし!

 毎日、監視カメラで見張ってるし!」


『それって、ただのストーカーじゃないですか?』


 鑑定スキルが、とても酷い事を言ってきた。

 自分も、学園中に設置してある監視カメラの映像を見てる癖に。スーザンのオ○ニーシーンも毎日監視してるのに。しかも、データーベースに保存してるし。


「お前も覗き見してるだろうがよ! それから、ストーカーじゃなくて、見守ってるって言え! ただ見守ってる訳で、襲うわけでもなんでもないんだからな!」


 俺は、しっかりと訂正する。

 妹を、ただ見守ってるだけなのに、ストーカーとか言われたら、心外なのである。


『確かに、ご主人様のナナさんの溺愛ぶりは凄いですもんね……いつでもナナさんの服を1000着用意しろ!って、あれなんですか?1年365日って、分かってます?

 しかも、春からカララム王国学園に入学するから、そもそも普段着なんか、滅多に着なくなるのに』


「それでもいいんだよ! ナナは今まで苦労して来たんだから、これからは、思う存分楽させて、贅沢させてやるんだからな!」


『あの……ココノエさんがやってた孤児院は、結構、設備が整ってたみたいですよ?

 そりゃあ、ご主人様の御屋敷みたいに至せり尽くせりじゃありませんけど、それなりな生活も出来て、楽しく生きてたみたいですし?』


「うっせーやい! 俺が知ってるナナは、トップバリュー男爵にいつも犯〇れてたナナなんだ! 俺の思い出を勝手に汚すな!」


『ご主人様の思い出の方が、物凄く汚れてるように思うんですが……』


 鑑定スキルが、最もな事を言った。

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