第99話 女神ナルナー神殿

 

 世界樹のハイエルフの隠れ里で、ヨナンは想像を越える歓迎を受けた。


 ハイエルフは、ハッキリ言うと女神ナルナーの眷属で写し身であるらしい。

 そんなハイエルフが、女神ナルナーのお気に入りの称号を持つヨナンを、蔑ろにする訳にはいかないのだ。


 ついでに言うと、ハイエルフは女神ナルナーの写し身なので男は居ない。

 全員、エリスと同じ顔だったりする。

 写し身だから当然なんだけど。


 更に言うと、巷に居るエルフは、人間との混血であるらしい。

 エルフの祖であるハイエルフに男性が居ないから、これまた当然なんだけど。


 そんなハイエルフが、女神ナルナーから与えられた唯一の仕事は、レッドドラゴンと共に世界樹を護る事。

 ハッキリ言うと、それだけの為に生きてると言っても過言ではない。


 まあ、たまに、エリスみたいな変わり者が生まれて、勝手に大森林の外に出て行ってしまう。


 そんなはぐれハイエルフが、大森林の外で他種族と交配して生まれたのが、普通のエルフ。

 当たり前の事だが、大森林の外で生まれた普通のエルフには、世界樹の秘密を、一切教える事はないという事だ。


 それから、何故、大森林の植物がやたらと成長が早いかと言うと、全ては世界樹の力。


 そもそも世界樹は、世界に栄養と活力を与え、その過ぎたる力は人を生き返らせる事が出来たり、不老不死にしたりする力を持ってたりもする。

 ハッキリ言うと、栄養満点で、人も植物は育ちまくるのだ。


 そんでもって、意外と草食で、世界樹の果実を食べて生活してるレッドドラゴンも、不老不死になってしまい、しかも世界樹の果実で育った体自体にも寿命を延ばす効能が宿り、レッドドラゴンの血肉を摂取すると、寿命が延びる効果が現れたとか。


 同じく、世界樹の果実を食べてるハイエルフの血肉を食べても、同じ効果が得られるらしい。

 唾液や粘液でも、同じような効能が得られるらしいので、やたらと世界樹の隠れ里に住むハイエルフ達は、ヨナンにチュッチュッチュッしてきたり、股を開いて誘惑してくるのだ。


 まあ、チュッチュッは、なすがままにされてしまうが、お股同士の運動は止めておく。

 俺はまだ童貞だし、初めては妻になる人とすると決めてるし。


「フフフフフ。私も相当寿命が延びたわよ」


 世界樹の里に住むハイエルフを襲っては、チュッチュッしまくったリサリサは御満悦。


 まあ、リサリサは、ハーフリングで見た目がお子様なので、リサリサの性根を全く知らないハイエルフ達は、リサリサにされるがままに、チュッチュッされてしまったのであった。


 もう、相当年寄りの癖に、どんだけ長生きしたいのだ……。


 ーーー


「これで、大森林の謎は解けたな」


『ですね。まさか大森林に、世界樹とハイエルフの隠れ里が有るとは思いませんでしたよ! しかも、世界樹がこの世界に栄養を与えてるとか! 世紀の大発見ですよ!』


 知識欲に飢えている鑑定スキルが、興奮気味に話す。


「もしかして、女神ナルナーのお気に入りの俺が、この世界樹を守らないといけないのか?」


『間違いないですね! なので、女神ナルナーが、ご主人様をこの大森林に導いたんですよ!』


 鑑定スキルも、同意する。


「確かに、俺がなんの縁もなかった大森林の、しかも、世界樹から滅茶苦茶近くのグラスホッパー領に導かれるように連れてこられ、グラスホッパー家の養子になってしまうって、出来過ぎてるもんな……」


『女神ナルナーに、嵌められましたね……』


「だとしたら、ムカつくな……」


『世界樹を守るの、止めきます?』


 鑑定スキルが、神をも恐れぬ、罰当たりな事を言ってきた。


「そんな訳いかんだろ! グラスホッパー男爵領が、戦地になるのは避けないといけないだろうが!

 俺は、もう、絶対にグラスホッパー家の者達を不幸にさせないと誓ってるんだよ!

 ジミー以外は!」


『確かに、僕も、ジミー以外は助けたいです!』


 どうやら、鑑定スキルも、俺と同意見のようだ。

 俺の中でジミーの価値はゴキブリ以下だしね。


「もう、これはアレだな。ここに世界樹が存在する事を、絶対に誰にも漏らさないようにしないとな!」


『ハイ! そしてこれ以上は、絶対に大森林の開発はしちゃいけません! そして、従業員にも徹底して、大森林の奥には入っていかないようにと厳命しなくてはなりませんよ!』


「確かに、従業員が、レッドドラゴンに燃やされるのは避けなくてはいけないな……」


 従業員が、レッドドラゴンに丸焼きなどにされたら目も当てられない。

 世界の平和を考えると、燃やされた従業員の方が悪になりそうなので、労災下りるか分かんないしね。


 そんな訳で、世界と、グラスホッパー家と、世界樹を守る為に、大要塞を建てる事にした。


 まず、エリスによって結界が張られてる内側に、アマダンタイトミスリル合金で高さ20メートルほどの城壁を建てる。

 まあ、これで、横からの魔法攻撃や物理攻撃は、大体防げるだろう。


 多分、この城壁を破壊出来るのは、俺が持つ聖剣ムラサメだけで、尚且つ、大工スキルを持つ俺が使わないと、破壊出来ないと思う。


 でもって、上空からの攻撃を防ぐ事も考えなくてはならない。

 世界樹は、樹木なので光合成しないといけないから、必然的に、太陽光を浴びる為に上空を開けとかなければならないのだ。


 まあ、これは、エリスの結界を増幅する魔道具を設置する事にとどめた。

 世界樹を屋根で覆って、枯らさせたら本末転倒だしね。


 箱物を完成させたら、後は、中の作り込み。

 やはり、世界樹の大要塞なので、神秘的な荘厳な空間にしなければならない。


 至る所に、女神ナルナーの裸像とか、無意味な噴水とか、はたまた女神ナルナーを祀る神殿とか、いたせり尽くせり。ヨナンが本気で夏休みの全ての時間を費やして完成させたので、本当にトンデモない出来栄えとなってしまった。


 まあ、ここまでくると世界樹の大要塞じゃなくて、女神ナルナーの神社?神宮?

 もはや、世界樹が関係なくなってる気がする……。


 兎に角、女神ナルナーの裸像だらけの、人が簡単に近寄り難い雰囲気を漂わす大要塞?大社?が出来上がったのは、間違いない話だった。

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