第46話
◆
どうしよう、薊くんから目が離せない。
徐々に体を再生させる薊を前にした来紅の本音だ。こうなったのは彼女が嫉妬心に負け、薊をかるーく小突いた(来紅主観)ことが始まりである。
来紅は杖の力で薊が死ぬとは微塵も考えていなかった。理由は固有スキル由来の『HP自然回復』の特性である。
彼から、その固有スキルのHP自然回復の倍率の高さを聞いていた彼女は『
ちなみに痛みに関しては一切考慮されていない。なぜなら来紅は以前から苦痛に対してめっぽう強く、この館に来てからさらに磨きがかかったので感覚が麻痺していたのだ。
さて、そんな来紅が薊を見れない理由は、もちろん罪悪感などではない。それは───
「裸になっちゃうなんて考えてなかったよぅ」
『
とうとう再生を終えた薊は、早々に目を開き起き上がった。妖しく光る彼の瞳を見て来紅は跳び上がるほど嬉しくなる。
「あっ、目が私とお揃いだ。ちゃんと染まってくれたんだね」
工房への入室からさきほどまで薊を近くで見れていなかった来紅は瞳の変化に気づかなかったのだ。
吸血鬼化が原因であるソレを、自身が施した石化が原因だと考え、自分の色に染まったのだと解釈した。
「やっと私を見てくれた。嬉しい♪」
お揃いの瞳を向け合う。
石化前は自分を見てくれなかったので大いに不満だったが、これでチャラだ。その上、自身を抱き締めた後、ヘンゼルの凶刃から救ってくれたのだ。幸福と言う他ない。
グレーテルとメリッサは全裸の薊に驚き、一瞬動きを止めていたが、ヘンゼルのピンチと見るやグレーテルが助けに入ろうとするもメリッサが妨害。
「あっ、ずるい。薊くんに血を吸われてる」
全裸で活躍する薊を見れて御満悦だった来紅にとって、少し許せない事が起こる。
それはヘンゼルが血を吸われている事だ。しかも、自分もされた事がない首から直接の吸血。親友である自分を差し置いて、敵にやるとは酷い限りだ。
「んっ」
次は勿論、私だよね?
そう信じて薊へ首筋を突き出すが一向に、こちらへ来る気配はない。むう、直接はダメでも後で絶対に
それはそうと、彼に見られながら彼の裸をみるのは気が引けたため目を閉じたが、もう一度みたいという欲求が強くなってきた。もう抑えが効かないほどに。
そうだ、これから目を開けるのは下心などではない。いつまで経っても血を吸ってくれない親友の身に何かあったかもしれないから安全確認の為に開けるのだ。
「来紅と魔女って、どんな関係なんだ?」
「も、モンスターから助けてくれた恩人だよ」
ゆっくりと薄目を開けていくと彼から突然質問され少し驚く。一瞬、裸を楽しんでるのがバレたのかと思ったが、違うようだ。
少しドモりながら答える。
なんで今、その質問なの? という疑問は尽きないが。
「は? 恩人?」
「う、うん」
困惑する私を尻目に質問を終えた彼は、少し悩むような
それならば、と来紅は考える。
薊くんの悩みは解決したんだよね? なら次は私の番だ。
彼を自分色に染め上げたい来紅の願いなど決まっている。
早く私の血でアナタを満たして。アナタの全身が私の血で構成されるくらいに沢山飲んで♪
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