第22話
◆
『病みと希望のラビリンス☆』には
このダンジョンはその名の通りランダムで出現するダンジョンであり、ストーリー進行を不可能にしない範囲という制作陣の微かな良心の下で出現する。
逆に言えば『病みラビ』制作陣に不可能とされなければボス戦直後であっても
さて、そんな凶悪ダンジョンが制作陣の良心という脆い枷から解き放たれた
そんなのは簡単である。低レベルだろうが、ストーリー開始前だろうが関係なく病みを振り撒く絶望となるのだ。今の俺達に対してそうだったように。
ちくしょう。ゲームクリアまで一度も出現しないこともザラにあったのに、どうして今の弱い時に来やがったんだ。
これでは来紅の安全が、
「いや、ココはクリア出来ない訳じゃなかった筈だ」
だから絶望するには早すぎる。
そうして、来紅が連れ去られてから数分後に透明な壁が消えて前に進めるようになった。
大丈夫、攻略の仕方については出来る限り考えた。当てにならないゲーム知識だが、それでも最低限の参考にはなる筈だ。
事実、『血封の迷宮』がそうだったのだから。
「「ねえ、お兄さん。こんなところで、どうしたの?」」
案の定、体の自由が効かなくなった俺の前に来紅にも現れた双子が現れて声を掛けてくる。
むしろ、今すぐ実行したいほどの殺意しか湧かなかった。
「「道が分からないなら、お婆さんに聞きましょう。こっちに、お家があるの」」
双子に導かれるまま俺の体は勝手に歩き始めた。
最初は薄暗い廊下のような道を歩いていたのだが、少し歩いてから突然、景色が切り替わり辺り一面森になった。
森と言っても生命溢れる深緑ではなく、深い
木の幹は黒く、葉は紫。空を飛ぶ鳥たちは腐敗して骨が見え隠れしている。
地面には無数の十字架が突き刺さり、野ざらしの
だが、この程度の禍々しさは当然だ。俺は魔女の館に向かっているのだから。
ここのダンジョン名は『お
「「見えてきた。あそこが、お婆さんのお家」」
考え事をしている間に到着したようだ。俺の
目の前のダンジョンを一言で表すならば、お菓子の館だろう。ケーキの屋根にクッキーの壁、飴細工の窓。甘い香りに食欲を刺激される。
まぁ、謎の
「「さあ、入って。私達はお茶を用意してくるから」」
双子の声に合わせて触れていない筈の扉が独りでに開く。中からは強烈な甘い臭いに混じり、腐敗臭や焦げ臭さが充満しており、とても人の住める環境ではないと断言できた。
グチャ───
一歩、踏み入れれば
館の中に紫色をした毒々しい
霧に触れた肌が痛い、目が溶けそうだ、呼吸するだけで体内が
これは、ここのダンジョンの特性で『戦闘時の1ターン&通常時の10歩毎に最大HPの10%ダメージ』を与える『魔女の毒霧』だ。現実となった今では『10秒毎に最大HPの10%ダメージ』となるだろう。
対策をしていなければ、まともに攻略出来ないにも関わらず出現は完全ランダムという開発者の悪意から産まれた特性だ。
だが、俺は固有スキル【不死の
ここで、やっと体が自由になった。早く
俺は、その一心で先へ進んだ。
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