しょうもない陰謀

「では、そのガイゼルさんが冒険者たちにお金を払って、オーク討伐を控えさせてるんですね。」


「そうだ。最近やってきた腕利きの男らしいんだが、そいつが今、この街の冒険者をまとめ上げてるらしい。」


「ガイゼルさんはなぜそんなことを?」


「オークをオークリーダーに進化させた後に狩って、一儲けしたいかららしいぞ。」


「でも、今、冒険者のみんなにお金を払っているんですよね。」


「お金を払っているというより、奢っているんだよ。毎日毎日。」


「もしかして、この街ではゴブリンリーダーは特別高く売れるんですか?」


「いや、そんなことはない。もちろん、オークよりは高いが、そんな大金じゃねえ。」


「ヘェ〜じゃあなんで?」


「近い内に貴族のパーティーがあって、そのパーティーにオークーリーダーの肉が大量にいるらしい。あれは、高級食だからな。」


「なるほど。僕は食べたことはありませんが、とても美味しいと聞きますし。」


「そうだぜ、オークリーダーの肉は口に入れた瞬間解けるんだ。俺も一度しか食ったことないけどな。ガッハッハっハ!」


酒場のおっさんからいくつか情報収集して、分かったことがある。

ガイゼルという腕利きの冒険者がこの街に最近やってきて、オークリーダーの養殖を始めたらしい。

そして、ガイゼルという男は貴族にも顔が効くほどの実力者で、金もたんまり持っており、この街の冒険者に毎晩飯を奢る代わりに、オークを殺させてないらしい。


「怪しいですね。」


「そうね。怪しすぎるわ。特に、オークの集団がいる位置が偏っているところが。」


そう。オークの集団の目撃情報は街の主要の道がある方の逆に偏っている。

まるで、オークが人間を襲った時に逃げてほしいかのように。


「もう一つ面白い情報があります。この街の領主はアンセムの街の領主の腹違いの弟で仲がかなり悪いそうです。」


「ますます怪しいわね。」


「もしかしたら、盗賊団討伐からこの事件が繋がっていて、アンセムの街の領主が、弟が治めるこの町に嫌がらせをしたいがためなのかもしれません」


「ジンの推理は妄想がほとんどだけど、カイゼルとやらが大金を持っているのは、

盗賊団で稼いだ金だったら、説明はつくわ。」


「おそらく、アンセムの街の領主は、カイゼルに成功報酬として、この町にオークが襲ってきた時にこの街からの略奪を許しているんだと思います。」


「なるほど。それなら、冒険者たちが大人しくカイゼルの言うことを聞いてるのも頷けるわ。冒険者たちも略奪に参加するってことよね?」


「そうですね。全部もしかしたらの話ですけど。でも疑問なのは、この作戦がオークだけでは、成功不可能ということです。」


「何か、隠し球があっるてこと?」


「でしょうね。何かしらあるんでしょうね。この街の騎士たちに対抗できる何かが。」


「そのカイゼルを殺しにいくのはダメなの?」


「上級職らしいですよ、その人。初級職一人と無職2人が勝てる相手じゃ、ありません。」


「上級職、、、。相当手強いわね。仲間はいるの?」


「仲間もいます。こいつらも相当強いらしいです。」


「この街の騎士たちはオークを倒しに行かないの?」


「行ってるらしいですよ。でも毎回赤いドラゴンに邪魔されるんですって。」


「怪しいわね。」


「そうですね。カイゼルとやらはテイマーの上級職でドラゴンは彼の魔物なんでしょうね。オークが集まっているのも頷けます。」


「それで、どうするの?」


「逃げるのが半分、作戦を邪魔したいのが半分ですね。」


「私も、魔物に家族を殺されてるから、もしその作戦が本当なら、事前に防ぎたいけど、私たちの実力じゃ無理ね。死体が増えるだけだわ。」


「そうですね。なので嫌がらせをして、逃げましょう。」


「嫌がらせ?」


「この街の領主に、矢文を打ち込みまくって、カイゼルをこの街から放逐させるんですよ。」


「うまくいくかしら?」


「いくと思いますよ。全ての矢文に銀貨1枚つけるので、流石に何か動いてくれるでしょう。後、オークどもを殲滅しましょう。」


「出来るの?ドラゴンがいるんでしょう?」


「森の中でのドラゴンなんて大した脅威じゃありませんよ。体がでかいから、僕たちを追うこともできませんよ。」


「魔力感知と気配察知を使われたら?」


「森には多種多様な生物がいます。区別するのは至難の業ですし。何より、空からだと僕たちの姿は見えませんよ。」


「それもそうね。そのドラゴンが暴れすぎると流石に騎士団もドラゴン討伐に乗り出すだろうし。」


翌日から作戦開始だ。

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