喧嘩

ジャンヌと森でホブゴブリンを探していると、言い合いをしている冒険者集団を発見する。地面にはオーク8匹の死体が転がっていた。

どちらも白熱しているせいか俺たちには気づいてなさそうだった。


「俺らが先に攻撃したんだ!!」


「いや、俺らが先だ。俺らがずっと追っていた獲物をお前らが横取りしたんだ。」


「それは、関係ねぇ!!お前らは結局攻撃してなかっただろうが!!」


「お前らが、俺たちに気づけなかったのが悪いんだろ。暗黙のルールとしてお前らが譲るべきだ。」


どちらも、4人組の冒険者たちだ。

獲物の所有権をめぐって争っているらしい。

半分にしたら良いのに。普通に考えて、8匹もオークを持って行けないだろ。


二組はさらに白熱して、ついに剣を抜いた。

どうやら、やり合うらしい。

(こいつらヤクザか。メンツのために命をかけるってことか。)

冒険者とは暴力の世界なので、弱い奴は搾取される。

なので、自分達の強さを常に誇示しなければならない。

(別の街に行けば良いだろ。アホか。)

二組ともこいつらには勝てると思ったのだろう。

人数も職業も似たような組み合わせだしな。


おそらく8人全員近接職だったのだろう。

無茶苦茶、泥試合だった。激戦の結果、片方が2人残ったがその2人もボロボロだ。

ジャンヌに目配せして、二人で矢を射る。生き残りの二人は予測外の攻撃に反応できず、こちらをみながら絶命した。


「とりあえず、さっさと装備とお金を回収して、次にオークの睾丸と耳を回収して

この場から離れましょう。」


「そうね。でも全部は持って行けないわ。」


「じゃあ、お金と高そうな装備だけを持っていきましょう。」


「それでいいわ。」


ジャンヌなら全部持てると思ったが、森の中をそんな荷物を持って進んだら、他の魔物に襲われて危険になるだけだな。

襲ってくるのは、人間かもしれないが。

無事に家まで帰ることはできた。


「もう一周しましょう。まだ間に合います。」


「そうね。まだ、昼前だしね。」


もう一周して、今度はオークの耳と睾丸、残りの装備を奪った。

今回も家に帰れた。


「この装備らはどうしましょう。サイズも合いませんし。売りに行くには量が多いし。」


「もう、街に売りにいきましょうよ。」


「それはダメです。僕たちがお金を持っていることがバレるじゃないですか。

隣街を何往復かすれば良いだけですよ。」


「何往復もするの、めんどくさいわね。」


「しょうがないですよ。堂々とできるのはもっと強くなってからです。」


「それもそうね。」


とりあえず、オークの睾丸と耳は凍らせておいた。

水魔法と風魔法の同時使用で氷魔法が使えるが、俺のレベルではちょっと寒いくらいだが、ジャンヌは水を凍らせるくらいはできる。ゆっくり時間をかけて。


「明日こそ、ホブゴブリンを倒しましょう。」


「もう良いんじゃないの。探すのは効率悪いわよ。あった時に倒せれば良いんじゃない。」


「それは、そうですが、、、。いや、そうですね。今は訓練を優先しましょう。僕たちはまだ子供ですし。」


「そうよ。体が大きくなったら、また新しい装備を買わなくちゃいけないしね。」


「じゃあ、装備は自分達で調整しましょうか。そしたら、この装備類を有効活用できますし。」


「そうね。それがいいわ。ただ臭いから、お湯で洗うけどね。」


「そうですね。安い装備に見せるために、あえて汚しますけど、匂いはとりましょう。」


「ジンが大きくなったら、荷物持ちをしてよね。」


「分かってますよ。レベルをたくさん上げて、速く大人になりますよ。」


この世界では、子供は成長が速く14歳で成人になる。

職業を授かる前のレベルが高ければ高いほど、成長が速くなるらしい。

なので、貴族たちはパワーレベリングをして、10歳を前に大人の体になるらしい。


「でもジャンヌは、あんまり大人じゃないですね。」


「私はスキルレベルは高かったけど、レベルは上がっていなかったのよ。職業を得たら一からリセットされちゃうしね。」


そう、職業を得る前にあげたレベルは職業を得た後はリセットされる。

レベルが1になるから、能力値もレベル1の能力値になる。

だから、ジャンヌはスキルレベルをあげてたのだろう。

ただ、レベルを上げると体力と魔力が増えて、より多く訓練することができ、

スキルレベルも上げやすくはなる。



「ジャンヌお姉ちゃんは何レベルだったんですか?」


「私は26レベルぐらいだったわよ。あの村の周りに強い魔物はいなかったしね。」


「そうですね。だから僕が生き残れましたし。スキルレベル上げるだけなら、あの森で十分ですよ。ところで、明日から冒険者狩りでもしますか?」


「しないわよ。相手の強さが正しく分かることなんてほとんどないし。今回みたいに残りを殺すぐらいなら参加するけど。」


「じゃあ、暗殺しますか?」


「そんなことを繰り返してたら、この街が魔物に襲われるだけよ。それに暗殺なんて相手が格下じゃないと通用しないわよ。気配察知と魔力感知があるんだし。」


「あの、5人組には通用したじゃないですか。」


「それは、あいつらが馬鹿で意識が低かったのと、酔っ払ってたから通用したのよ。ちなみに今回の相手も馬鹿だっただけよ。」


「そうなんですね。初心者狩りも効率悪そうですし、地道に強くなりましょう。」


「それが良いわよ。初心者殺すより、ホブゴブリン1匹殺した方がレベルも上がるしね。」



臨時収入が入ったので、隣町に行くのをやめた。

といううか、装備は売るんじゃなくて、利用することにした。

そして、余ったら売ることにした。隣町に。


「明日から、地道に訓練していこうか。面白みもないけどしょうがないか。」


ーーー1年後


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る