少女
「誰よあんた?」
顔を見て強気な印象を受けたが、本当に強気な女だった。
だって、そばかすに赤毛だし。
「僕はジンだよ。君は?」
「私はジャンヌ。ここは、私たち家族の小屋なの。弁明をしたければすればいいわ。納得できないと殺すわよ。」
4歳の俺に過激な少女だ。
でもどうしよう。本当に殺されるかもしれない。
「森に捨てられて、そこから森を彷徨ったらこの小屋を見つけて、人もいなかったし、使わせてもらってたんだ。」
「誰の許可を得て?」
「この小屋は森の中にある。逆に森の中にあるものを使うのに君は誰に許可を得るの?」
「それもそうね。悪かったわ。」
「納得してくれるんだ。ジャンヌお姉ちゃんは優しいね。今日は一緒に寝ていい?」
とりあえず、甘えとこ。
「いやよ。あんた服ボロボロで臭そうだもの。」
「ごめんね。それでジャンヌお姉ちゃんは何しにこの小屋に?」
「職業を授かったから、この森で修行をするのよ。私は両親みたいな立派な猟師になるのよ。」
「そうなんだ。それでこれからも僕はこの小屋を使っていいの?」
「いいわよ。その代わりこの小屋の管理をするのよ。掃除とか。ベッドをきれいにするとか。」
「分かったよ。料理も作るよ。ジャンヌ姉ちゃんはいつまでいるの?」
「1月ぐらいよ。」
「じゃあ、一月よろしくね。」
俺は床で寝た。
ジャンヌは布団で寝た。
普通に死ぬかと思った。
こいつから色んな情報を抜き出してやろう。ジンはそう決心した。
それから1月、ジンはジャンヌの雑用が仕事になった。人との会話が久しぶりで
とても楽しかった。
ジャンヌが7日目の夜にメソメソと泣き出した。
「どうしたのジャンヌお姉ちゃん?」
「なんでもないわよ。黙りなさい。」
「そうなんだ。僕、今日は怖いから一緒に寝ちゃだめ?」
「しょうがないわね。ベッドに来なさい。」
こいつを俺の料理で落とした甲斐があった。
これからもどんどん信頼をきづいてやる。
ジンはジャンヌの押し殺した泣き声を聴きながらそう決心した。
その日からジャンヌは俺と一緒に寝た。
ポツポツの彼女の現状を話してくれた。村の狩人であった。
しかし、強い魔物に殺されたらしく、帰ってこなかったのだ。
それから、ジャンヌは両親の仇を打つべく、強くなるための修行をしているらしい。
こいつは俺と同じで天涯孤独らしい。傷を舐め合うか。
「ジャンヌお姉ちゃんは偉いよ。すごいよ。」
隙あらば、よいしょしといた。
気分を良くしたのか、日に日に饒舌になっていく。
「ジンあんたを私の弟にしてあげる。喜びなさい。」
普通に喜んどいた。俺も孤独だったし。
ジャンヌは普通に強い。主な武器は弓で魔狼をアホみたいに殺す。
狩りについて行ってると、勝手にレベルが上がる。
ジャンヌ曰く、経験値が分配されてるらしい。ドラクエだな。
ジャンヌのそばにいるだけで俺は勝手に強くなる。さらに、死の危険も少ない。
「ジンは4歳なのにすごいね。私の狩りについてこれるなんて。」
ジャンヌもすっかり俺に甘くなっている。
これが本来のこいつかもしれないが。両親を亡くして性格がひねくれたんだろうか。
「ジャンヌお姉ちゃんの方がすごいよ。魔狼を一撃で倒すなんて。」
「私は弓師の職業を得てるから、弓は得意なのよ。」
それから、魔法のことも教えてもらった。
街のこともお金のことも教えてもらった。
「ジャンヌお姉ちゃんは街に行ったことはあるの?」
「ないわよ。街までの道は危険だから、行商人を通して、両親が取引しているのを見ていただけだよ。」
「そうなんだ。じゃあ、まず街に行って、装備を整えようよ。今の装備じゃ、
ジャンヌお姉ちゃんの両親の仇は取れないよね。」
「そうね。街に行きましょう。装備がこのままじゃ心もとないわ。」
「ところで、どんな魔物なんですか?」
「でかい猿みたいな魔物らしいわ。生き残った狩人がそう言ってたわ。」
「そうなんですね。では、これからは街に向かいながら、訓練にしましょう。」
「いいわよ。とりあえずあんたは、魔狼を倒せるようになりなさい。そうじゃないとついてこれないわよ。それまで、私はスキルレベルを上げる訓練しとくわ。」
「分かったよ。」
魔狼なんて、4歳の俺に倒せというのか。スパルタすぎるだろ。
正攻法で殺せそうにないし、毒キノコの毒で殺そう。簡単に。
ーーーーー次回、魔狼
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