第23話 バター作り体験
「篠田さん、昨日はありがとね。おかげで
高原の牧場で、
「それからね、あたし見ちゃった。あなたたち、朝早くに外出てたでしょ?」
綾乃はすっかりいつもの調子をとりもどしている。
オリエンテーション合宿二日目。
班ごとに座ったテーブルで、容器に入った生クリームをひたすらシェイクする作業中だ。
「あのね綾乃ちゃん。うちのお兄ちゃんの学校も近くで合宿してるんだけど、昨日から様子がおかしい友達がいるから見てくれって朝早くに電話があったの。もちろん、見るのは深月ちゃんなんだけどね」
容器を振りながら、夕夏が一生懸命に説明している。
「こっそり外に出たのは悪いけど、人助けだから内緒にして、お願い!」
「別に言いつけたりしないよ」
「えーなに、それじゃ夕夏のお兄さんと例の友達が来てたんだ。あたしも行きたかったなぁ」
可奈がつまらなそうな顔をする。
「それで、人助けって何だったの?」
梨沙が、射るような視線を向ける。
「お兄ちゃんのクラスの男子がね、山で遭難した人の霊に憑依されてたの。でもその霊は、昨日の夜に窓の外にいた男の子のお父さんだったんだって!」
深月の代わりに、夕夏が説明する。
「それじゃあ、昨日の子供のユーレイ、お父さんに会えたんだ?」
昨日あんなに怖がっていた綾乃が、嬉しそうな顔をする。
「うん、会えたよ」
深月は嬉しくなって、少しだけ笑った。
「うわぁ、篠っちが笑った!」
「ほんとだ!」
「篠田さんも笑えるのね」
みんなが不思議そうな顔をして深月を見る。
「やだなぁ、深月ちゃんだって嬉しい時は笑うよ」
夕夏がすかさずフォローする。
「みなさーん、そろそろ固まってきたころだと思います。容器のふたを開けて、中を見てくださーい!」
牧場のお姉さんがマイクで指示を出す。
容器の中には少しの水分と、固まったバターのような物がはりついている。
「わー、出来てるじゃん!」
可奈が嬉しそうな声を上げる。
出来上がったバターを、クラッカーにつけて食べてみる。
初めての手作りバターは、ほんのりと甘い味がした。
(第三章 恋と友情――――に続く)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます