第18話 続・恋患い ②
その横で必死にペンを動かすジュンジは、はっと顔を上げた。
「ということは! 僕たちがあの穴へ行って、太母や捕らわれた人々に……とどめを刺した、ということになりますか?」
「ええ、まぁ……太母と捕らわれた人々はいずれ枯れ果て、土に還る運命にありました。
捕らわれて間もない人なら助けることはできたかもしれませんが、ノブオさんのおっしゃる通り、あの場所に人が近寄ることはなく、最近で呼び込まれた人はいなかった……
救える人はいなかったのです。ただ、あのまま静かにそっとしておけば、捕らわれた人々と太母は皆、幸せな夢を最後まで見続け、終われたでしょう」
サノッチは、マグカップに入れた濃いめのコーヒーを口に含んだ。
「小林さんが友人女性を揺り起こし、そして友人女性が目を覚まし管が外れて、そこから連鎖して皆が目を覚まし、太母と様々なものを共有しあっていた皆の管も外れ、一気に現実に戻された……
けれど、それは一瞬のことで全員、土くれに還ってしまったということか。力を使い果たした太母も同じく、土に還ったと……」
そう言って、ふーんと大きくため息をついたノブオは、顔を上げると天井を見つめた。
「……ジュンジさん、他に気になることはありますか?」
「あっ、ありますよ! えーと、そう! ホワイトハウスの無理心中の噂について、その真相は結局、なんだったんですか?」
ノートの次のページを開いて、ジュンジは再びペンを握る。
そこへホワイトハウスの真相とは、と記した。
「ホワイトハウスの中の残留思念のような白い残像、そして、こっくりさんによる交信からわかったことですが……
四十年以上前、皆さんがホワイトハウスと呼ぶあの家は、四十歳前後の夫婦と小学校高学年の長女、低学年の次女の四人が暮らす、当時では最新設備の整った家でした。
これはノブオさんやジュンジさんが家屋を探索し、見つけた写真からもおわかりですね。なぜ、あんな山奥に家を建てたかといえば、次女に持病があり、街の喧騒から離れた自然の多い場所を求めて、ということらしいです。
そして、一家が幸せに暮らしていたある日、長女が行方不明になります。両親が必死に探した結果、私たちが入った同じ穴で、同じように太母と遭遇し、あの時の小林さんと同様に長女を揺り起こした……
その時は、長女は太母に捕らわれて間もなかったために、上手く彼女の分だけ管が外れ、両親は彼女を連れ帰ることができました。
しかし、当時は太母の力もそうとう強く、管が外れたとはいえ、一度全てを共有した長女を、太母は操ることができたのです」
「つまり太母が、長女の意識や身体を乗っ取って、両親や妹を殺害したと……そういえば、首元を一撃で仕留めた、とあの時もサノッチは言ってたな。太母が入っていたからこそ、それができてしまったということか」
ノブオはまた自分で頷いて、栄養ドリンクの蓋をひねる。
サノッチもうんと頷いた。
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