短歌

灰色A

君よ(相聞歌)

君を恋い懐かしむほど違ってく。触れるほどにほら傷んでく。


銀色のかなしみ降り積もりほこり。金色のおもい寄り集まり光。


皿を洗うだけで思い出すほどに君の隣に居たんだったな


かなしいを稀釈して飲むまだ味がする目玉から溢れ出る ああ


砂糖がゆうらり融けてゆく際に似ている君を恋人と呼ぶ


果物を切ると中には星があるそれが君だと伝えたい夜


かじったら中身が溢れるところとかシュークリームは君に似ている

『 スイーツ 』


君の名をどこに入れようクッキーの詰め合わせ缶にすき間をつくる


さりげなくお伝えする為探します「愛しています」のいいシソーラス


花束になるなと思っていたけれどこれは庭になるだろう「好き」




雪景色まだ「今年もよろしく」を言いたい奴がいる日々がゆく


花よりも早く別れはやってきてでも雪が降る日だったと覚える


今夜こそ明るくなあれスマートフォン表で置いて窓灯り待つ

 液晶は暗い部屋ではとくに窓に似る


夜はいま短くなってるはずなのにあんたを待ってるから過ぎない


あんたから手紙が欲しい明日には積もると聞いた雪と一緒に


すべてから君が零れている日あり君がすべての夜もまたあり




旅に出る夢を見ているだろうからメモにできずにしまう便箋

『 便 』


盲腸のごとき思い出薄く切り葡萄酒漬けの標本にする


目が止まり足も止まったあなたへの枕詞はコーヒーゼリー


この場所はかつて薔薇が咲いていた404NotFound


幾度も夢に見れどもどの夢も違う

渡らず風になったの


あの人は遠く遠く遠のいた緑の背中まだ走ってて


「あいしてる あの日とあなたをこれからも」お伝えください見知らぬ人に


風だけを訪問者としてがらんどうやがて場所さえ風となり吹く


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