第13話 "次"

「だいたいこんなところか」

やーくんこと、大和は額の汗を拭った。

「なにやりきった顔してんのよ

ほとんど私がやったんだけど!」

花はぷんすこしている。

「だっていまセクハラとかそういうの厳しいし...

気軽に女性の体に触ったりできないだろ?」

「おんぶした癖に」

「あれはちょっとパニクってたしノーカン」

「ハハ、アハハ

あーおもしろ」

あはは、なんか変なツボに入っちゃった。

大和は「おかしなものでも食ってたのか?」って顔してるけどそう思われても仕方ないなぁ。

なんかちょっと安心して気が抜けちゃったよ。

「まあお前がここまで頑張ったしな

あとは俺の仕事だな」

「うん!」

うん?まだなにかあるの?

「ああ、俺の能力でこの子を治すんだよ」

「え?そんな能力あったの!?

だったらさっきの手当はいらなかったんじゃ...」

なんで早くそれを言ってくれないかな〜。

「いや、最初から能力を使うのはリスクがな」

「リスク?」

「ああ、俺の回復能力は使うと疲労がすごいんだ

さっきまでのこの子の状態だと動くのもやっとくらいになっちまう

それにそろそろみのりも疲れて眠っちまう」

「え?」

「みのりの能力でこの子の体の抵抗力とか傷の治りを早くしてたんだ

さっきからずっとお前の隣で座ってただろ?

集中してたんだよ」

気づかなかった。

静かに座ってるな〜、空気読んでるのかなって思ってたんだけどそんな理由があったんだ。

「俺の疲労をできるだけ抑えて眠ったみのりを守れるように考えた最前の手だ」

「待ってよ!私がいるじゃない!

私を頼っ」

「信用しきれてなかった」

「...」

「でもお前の隣で能力を使ってるみのりを見て考えが変わった

疑ってて悪かった」

大和が頭を下げた。

「そうよね...

あんたの言うことは間違ってない

でも信用...してほしかったなぁ」

少し悲しそうな顔で花が言った。

「ごめ」

「まあ、"次"は気をつけてよね」

「!?」

「怪我したらまた治してくれるんでしょ?

治してくれたあとは疲労で動けないあんたとみのりちゃんを私と葵ちゃんが守るから!」

「あ...ああ!」

「じゃあ、葵ちゃんをお願い!」

「任せてくれ!」



長い沈黙が続いた。

段々と顔色が良くなる葵と疲れが見えてくる大和。

息も乱れてきている。

「はぁ...はぁ...もう少しだ...」

「頑張って...!葵ちゃん!」

「俺は!?」

「集中して」

「ちくしょぉ!!!」


大和の悲しみの叫びがデパート内にこだました。

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